微細加工に革命をもたらす新世代のUVレーザと超短パルスレーザ

豊田 宏之

Spectra-Physicsは1961年創業の世界初の商用レーザ機器メーカーで、創業以来数多くの世界初となる製品を発表し業界をリードしてきた。当初半導体レーザが実用化されるまではガスレーザや色素レーザが主役を務めており、主に研究開発用途に使用されていたが、1986年に同社が世界初のファイバカップリングLD 励起固体レーザを発表したことで、レーザはLD励起固体レーザの時代へと変わっていった。その後、非線形光学素子を用いた波長変換技術により355nmや266nmのUVレーザが製品化され、UVレーザが本格的に産業用途の微細加工に使用されるようになる。Spectra-Physicsは世界初のLD励起355nm固体レーザを製品化して以来、既に1万台以上のUVレーザを出荷しており、現在もUV 微細加工に革命をもたらす新世代のUVレーザを世に送り出している。また2011年にオーストリアのHigh QLaserを傘下に加え、双方の技術を融合した再生増幅超短パルスレーザを発表した。

高出力ハイブリッドファイバレーザQuasar

Quasar(図1)はファイバレーザと固体レーザの技術を融合させたハイブリッドファイバレーザ(図2)で、355nmにて200kHzで平均出力60Wパルスエネルギー300μJを出力する。プログラミングによりパルスを形成するTimeShift機能を搭載し(図3)、0 ~ 3.5MHz の繰返しにて100nsec から2nsec までパルス幅を可変、パルススプリット、バーストモード等の多彩なパルス動作にて、これまでのQスイッチレーザの限界を超えた加工を可能としている。 
従来のQスイッチタイプのLD励起固体レーザでは、パルス幅は共振器の構造と繰返し周波数に依存し最適な加工条件を得ることが難しく、加工性や加工スピードを犠牲にしていた。Time-Shift機能は任意の繰返しで任意のパルス幅を設定可能なため、加工性や加工スピードを犠牲にすることなく、最適な加工条件を得ることができる。またTimeShift機能でパルスをスプリット(分割)することにより、従来のQスイッチ固体レーザでは達成できなかった加工スピードを得られる。 
図4はパルス幅25nsecの単パルスと、TimeShift機能を用いてパルス幅5nsecのサブパルスで5分割したスプリットパルスをそれぞれ200kHzで照射し250mm/secの加工速度でフルエンスを変化させた場合の加工深さの比較である。結果TimeShift機能を用いて5分割したスプリットパルスは25nsecの単パルスと比較して、90J/cm2 のフルエンスで77% 加工深度が増すことが検証されている。

図1 Quasar

図1 Quasar

図2 Quasar 基本構成

図2 Quasar 基本構成

図3 TimeShift機能に り形成されたパルス例

図3 TimeShift機能により形成されたパルス例

図4 単パルスとスプリットパルスの加工深度比較

図4 単パルスとスプリットパルスの加工深度比較

究極の低価格ハイパフォーマンスUVレーザ

Talon(図5)は、Spectra-Physics が提唱する『It’s in the Box』コンセプトに基づき設計された電源一体型Q スイッチ固体レーザで、355nmにて50kHzで平均出力15Wパルスエネルギー300μJを出力する。『It’s in the Box』は、電源とレーザヘッドを一体化して一つのBoxに収め小型軽量化する設計思想であり、従来定期交換部品とみなされていた励起用LDの長寿命化により実現した。更に波長変換非線形光学素子をレーザ共振器内に配置して低コスト化と高効率化を図ることで、驚くことにワット当り同社比46%以上の低コスト化を実現しており、今までUVレーザの導入を見送っていた加工用途にも容易に導入が可能となった。

図5 Talon

図5 Talon

(もっと読む場合は出典元PDFへ)
出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/10/ILSJ-1409-20-22.pdf