ファイバレーザが2013年を牽引 そして2014年の予測

デビッド・A・ベルフォルテ

世界製造業の緩やかな成長が産業用レーザ売上の基調に

ファイバレーザ業界をリードする米IPG フォトニクス社(IPG Photonics)が量産を受注/出荷したこともあり、2013年は上昇機運の中の幕開けとなった。同社が同年上半期に好調な業績を上げ、加えて市場の他部門の主要企業も業績を改善したことから、それまでの予測よりも力強い成長が期待できるのかと、投資アナリストがあわてて業界専門家に問い合わせる事態となった。長年にわたって業界を観測し続け、これまでにも景気循環の上下変動を経験したことからより冷静な目を持つ専門家の多くは、スポーツの試合と同じように、試合終了のホイッスルが鳴るまで決して勝負は決まらないと警告した。そして案の定、真夏になって主要市場部門(「中国」と読んでほしい)の景気減速によって受注が減速し、ファイバレーザ販売は好調だったものの、景気に自己修正力が働き、結局2013年はほぼ専門家らの予測どおり、全体で約4% 増という結果に終わった。本誌は2013年1月に2%増と予測し、好調なファイバレーザ販売を受けて年度半ばにこれを6% に修正したが、悪くない読みだったと思う。 
長年にわたってこの年次レポートに目を通している読者は、2014 年の小さくはない変更点に気付くことになると思うので、ここで触れておく。この変更点については、本号11 ページの別掲記事「市場データ収集および処理に関する変更点」で説明している。本誌の関連会社で米ペンウェル社(PennWell)傘下の米ストラテジーズ・アンリミテッド社(Strategies Unlimited)のシニアアナリストを務めるアレン・ノジー氏(Allen Nogee)が、アナリストとしての専門知識を本レポートに貢献してくれている。それに伴い、本レポートの市場カテゴリを、国際的な産業用レーザ市場報告書に合わせて再編成した。

世界市場

2013年は、産業用レーザの世界の製造市場においては強弱入り混じった年だった。米国は、輸出販売が好調で強い地位を維持した。欧州は、輸出で主導するドイツの成長に支えられて、何とかほぼ横ばいを保った。アジア市場は、ASEAN 諸国が勇気づけられる成長を見せたことが、予期せぬ減速に見舞われた中国と成長が見られなかった日本の弱さの相殺に貢献した。またBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国は世界販売を活気づけることができず、以上すべてを総合して、レーザ売上高は表1 に示すように可もなく不可もない結果に落ち着いた。 
この結果には普通に考えれば落胆させられるところだが、2013年1月号の記事(http://www.industrial-lasers.com/articles/print/volume-28/issue-1/features/2012-annual-economicreview-and-forecast.html)に記したように、「(前略)レーザメーカー各社は(中略)製造業にとって明暗入り混じる1年となり、横ばいから5%以下の低い成長となることを予測していた」。驚いたことに、2013 年前半はファイバレーザや超高速パルスレーザに牽引されて好調だったにもかかわらず、レーザ売上高は結局、われわれが年度半ばに出した修正予測とほぼ同水準に終わった。ここで表1 について、広く採用されている市場形式に合わせて本レポートのカテゴリを改定したことに言及しておく。以降の表には、主要市場部門の詳細が示されている。 
レーザ販売は2013年、売上高増加継続の鍵を握るとして本誌が特定していた7つの市場部門で増加した。程度の差はあれ、局所的な景気後退からの回復力があると見られる市場や、長期的な成長が見込めると判断されるプロセスを保有している市場である。これらの市場部門とは、運輸(1日あたりの新車製造台数は16万5000台)、エネルギー(2013年の世界の風力発電量は35.5 GW 超)、医療機器(ステントの世界年間市場規模は50 億ドル以上)、農業(農業用装置の世界需要は2016 年まで年間6.8% で増加する見込み)、航空宇宙(航空会社は今後20 年間で3万6000機を超える航空機を購入する予定)、通信(レーザアニールは、高精細画質の実現に使用されるフラットパネルディスプレイに最適な製造プロセス)、金属製品工業(年間売上高が2 兆ドル近くにものぼる製造業界)である。 
これらの市場はすべて、年間製造計画に基づく需要があり、産業用レーザによる材料加工処理を必要とする。表1に示すように、これらの処理は、産業用レーザ市場を構成する1 つまたは複数の売上高カテゴリ(マーキング、微細加工、マクロ加工)に対応する。 
2013年の売上高増加率は約3.6%で、横ばいか低成長の1年になるという業界とアナリストの予測どおりだった。増加率で見ると、最も増加したのはマーキングで約7% 増だった。政府が義務付ける規制要件の強化が影響していることは間違いない。マクロ加工は、緩やかな成長にとどまった。2013 年上半期の中国における設備投資支出の減速を主な理由に、市場が年間を通して不安定に推移したことが起因した。2014年の見通しとしては、年度半ばまでには市場が平常を取り戻し、世界売上高は合計で4.6%増と、緩やかに成長すると予測される。

表1 産業用レーザの材料加工分野売上高 (単位:100万米ドル)

表1 産業用レーザの材料加工分野売上高 (単位:100万米ドル)

マーキング

マーキング(エングレービングを含む)は2013年、レーザ総売上高の約14%を占めた。表2に示すように、圧倒的に大きな割合を占めるのはファイバレーザである。ファイバレーザは年間13%の割合で増加しており、2013 年のこの分野の売上高の66%を占めた。マーキング分野の2013年売上高は前年比で6.7%増加した。2014年には7.4%と、他のどの分野よりも大きく成長すると予測されている。トレーサビリティを目的とする永久マークに関する新しい規制を、政府や企業が設け始めているためである。例えば米政府は、請負業者が製造したすべての部品に2 次元バーコードをマーキングすることを義務付けている。 
マーキング分野において、ファイバレーザの売上高が増加した一方で、CO2レーザ(-3%)と固体レーザ(-5%)はシェアを落とした。225 社を超えるシステムインテグレータのほとんどが、システムの動力源としてファイバを選択したためである。

表2 マーキング/ エングレービング用レーザ (単位:100万米ドル)

表2 マーキング/ エングレービング用レーザ (単位:100万米ドル)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/10/ILSJ-1409-8-11.pdf