レーザ光源市場で勝ち続けるための戦略

スペクトラ・フィジックスは、2004年からニューポートのレーザ部門としてビジネスを展開している。今年2月に発表されたハイブリッドファイバレーザ「Quasar」は、現状のレーザ技術の極致と言ってもいいだろう。スペクトラ・フィジックスの日本法人代表取締役、遠矢明伸氏に、ここに至るまでの同社の歴史と合わせて、市場で勝ち続けるための戦略について聞いた。

スペクトラ・フィジックス株式会社  代表取締役 遠矢明伸氏

スペクトラ・フィジックス株式会社 
代表取締役 遠矢明伸氏

カスタマーサポートから出発

スペクトラ・フィジックス日本法人の設立は1981年。遠矢氏によると、設立から約7年は、販売を商社が担当し、スペクトラ・フィジックスは技術サービスを主とする会社だった。アプリケーションごとに、最大で8 事業部があり、管理部門とエンジニアスタッフだけで構成されていた。遠矢氏は、「わたしのミッションは、各部門が直販に切り替えても良いかどうかを見極め、順次直販に切り替えていくことだった」と言う。 スペクトラ・フィジックス創業者のポリシーは、「売るだけ売って撤退する海外メーカーのパターンは避けたい。それでは成功しない」。 
このポリシーに沿って日本法人、スペクトラ・フィジックスは、日本市場で成功した。「1981 ~ 87 年くらいまではサービス部隊の会社だった。その間に顧客の信頼を得た。その伝統が現在もあり、SPサポートは評価された」。 
では、直販への切り替えはどのように行われたか。「商社に中間マージンを取られるとエンド製品のマージンが厳しくなるような製品、つまり市場での価格競争が厳しい分野、あるいは技術的な直接のやりとりが必要とされる製品群はサプライヤーと直接やりとりしたいという要求がある。こうした分野から直販に切り替えた」。 
1980 年代は、為替レートが1 ドル=250 円レベルで推移した時代。固定相場制の時代、1ドル=360円からすれば円高になっている。国内の製造業は、国内市場だけでなく、海外市場でビジネスを展開する必要があった。製造装置、つまり設備投資コストは最終製品の価格に反映される。中間マージンをなくしてサプライヤーから直接調達したいというのは当然の要求と言って良い。 現在、スペクトラ・フィジックスは、理科学研究、マイクロ・エレクトロニクス、医療・生命科学、工業用製造とサービス分野にフォーカスしている。同社が「将来的に陳腐化する」と睨んだ技術分野は売却して、現在の体制にスリム化、純化した。 直販体制を確立してからのスペクトラ・フィジックスは、2ケタ成長でビジネスを拡大し、2000 年から2008 年リーマンショック前まで、同社の歴史で最高業績を維持した。

市場で勝ち続ける戦略

スペクトラ・フィジックスのターゲット市場は、大きく分けて理科学研究と産業分野。「スペクトラ・フィジックスは、歴史的に理科学分野に強い」と言うのが遠矢氏の説明だが、産業分野でも市場リーダーになるために何が必要とされているのだろうか。 
「特に産業用の世界では、先行的に製品投入することが重要だ。先に出してデザインウインをとる。研究用途は、翌年は違うシステムにすることは可能だが、産業用は採用が決まったシステムで全てのラインを組むので、デザインは簡単には変えられない。新製品を出して、その製品が優位性を保つ期間が1年~1年半。その間に市場を席巻していくことが重要だ。すると、3年~5年はその製品が売れ続けることになる」。 一般的に言って、この3 年~5 年が製品のライフということになる。要論すれば、競合に1 年先行する新製品の市場投入がなければデザインウインをとれず、デザインウインをとれなければ、その製品は3年~5年のライフを得られないことになる。 
では、デザインウインをとるためにスペクトラ・フィジックスは何をしているか。「昔は、こんなレーザができたから使ってみてくださいと言って、それで成り立っていた。今は違う。同じ切断、トリミングでも材料によって、アプリケーションによって全く違う。まずマーケットの要求を見極める。どんなレーザを開発するかは、その後の話だ」。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/09/a1c0d03c10deb83fee08ab2a47bf7d57.pdf