高信頼性・高出力フェムト秒レーザ

髙橋 伴明

フェムト秒、ピコ秒レーザによる加工は古くから注目されていたが、実際の製造装置など第一線の産業環境での使用は、その信頼性や加工速度の点から限定的であった。ここに紹介するHigh Q Laser は、1999年オーストリアに設立した超短パルスレーザ専業メーカーである。半導体レーザによるレーザ媒体への直接励起や、SESAM(過飽和吸収ミラー)技術、“Zero Sensitivity”、“Self-cleaning”Opticsといった独自の光学設計を駆使し、信頼性の高いレーザ装置を製造している。2011年には米国のフォトニクス総合メーカーNewportCorporation のレーザ部門Spectra-Physicsの傘下に入った。それにより双方の持つ技術を融合することで、さらに信頼性が高く市場要求に即した製品を投入している。特に産業用途への納入実績は増加しており、材料加工をはじめとして、医療分野へ応用が期待されている。

Spirit™超短パルス再生増幅レーザ

One Box型コンパクト高出力・高繰返し超短パルスレーザSpirit™は、Ybドープした結晶をレーザ媒体として、チャープパルスを再生増幅させるCPA 構造となっている(図1)。パルス幅は400fsec 以下で、パルスの繰返しに柔軟性があり最大で1MHz での動作が可能である。Yb系レーザ媒体を半導体レーザで直接励起し、SESAM の使用により安定したパッシブモードロック発振が可能となり、共振器内部でのパルスストレッチによるシンプルな再生増幅が可能となっている。こうした構造によりシステム全体が大変コンパクトになり、使いやすさと信頼性が増している。 
Spirit ™は現在1040nm の波長でパルス幅13psecのピコ秒と、400fsec以下のパルス幅を持つフェムト秒バージョンを有する。フェムト秒バージョンの出力は4W と8W があり、それぞれ得られる最大のエネルギーは100kHz において40μJ と200kHz において40μJである。さらにフェムト秒バージョンにはSHGの設置が可能で変換効率は約50%となっている。表1にそれぞれの仕様を示す。 
その他の特徴として、ビームプロファイルがM2<1.2と極めて優れていること、長時間の出力安定性が100 時間で <1%RMSであり産業用途には欠かせないパフォーマンスを備えていることが挙げられる(図2)。また機能面においては、モジュレーターが内蔵されユーザーによるパルストレインの制御が容易となり(図3)、加工などの対象物に応じたパルス制御が可能となっている。

図1 Spirit ™ 外形図

図1 Spirit ™ 外形図

表1 Spirit ™ 仕様

表1 Spirit ™ 仕様

図2 ビームプロファイル例 M2<1.2

図2 ビームプロファイル例 M2<1.2

図3 パルストレイン制御例

図3 パルストレイン制御例

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2013/09/d6eed32f5167fae1f190a2e00a385881.pdf