高出力半導体レーザを使用したクラッディング

キース・パーカー

クラッディング(肉盛り加工)は、金属部品表面の特性(耐摩耗性、耐浸食性、耐熱性)改善や摩耗してしまった部品の表面リフレッシュのために多くの分野で使用されているプロセスである。高出力半導体レーザアレイを使用した新しいクラッディング技術が開発された。この技術は、従来の技術より低コストでオペレーション可能であり、同時に良い結果をもたらす。また他のレーザ技術より簡単に導入できる。本記事では高出力半導体レーザ技術とそのクラッディングへの応用を紹介する。

クラッディング背景

クラッディングは、母材とは違った性格・性能を持つ新しい表面レイヤーを作成するために使用される。従来のクラッディングは一般的にアーク溶接と溶射法の二つのカテゴリーに分けられる。使用される材質、クラッド・レイヤーの品質、スループット速度、プロセス互換性、コストといった様々な実際的な問題に、それぞれ特有の性能を持つ。 
アーク溶接技術(ガス・タングステン・アーク溶接とプラズマ・アーク溶接)では、母材の表面を融解させるため電気アークが使用される。通常シールド・ガス中で作業され、その後ワイヤー形状もしくはパウダー形状のクラッド素材が導入される。クラッド素材はアークにより融解され、クラッド・レイヤーを形成する。溶接による強度・衝撃特性・気孔率に優れる強固な金属結合が可能である。本方法では材料付着率も高くスループットも速い。また投資コストも比較的安く抑えられる。アーク溶接クラッディング法の主な欠点は、基板材料に非常に高い熱を与えることであり、高熱による金属歪が生じるためクラッディング後にそのケアを行うプロセスが必要となることも多々ある。 
溶射法においては、クラッド素材が炎もしくは電気により融解され、ワークにスプレーされる。本工程は、比較的低温で行われ、部品に生じる歪を最小に抑えられるが、クラッド・レイヤーと基板部の結合が、金属結合ではなく機械的結合であることが溶射法の大きな欠点となっている。これはクラッド・レイヤーの溶着力を弱め、結果として耐摩耗性が低くなる。

高出力半導体レーザ技術

シングル・モノリシック半導体基板上に多くのレーザ・エミッタが実装されており、総出力は100W にも達する。これらのバーを、水平及び垂直に並べ、数キロワットの出力を持つダイレクト高出力半導体レーザシステムを構築する。光学系は、個々のレーザ・バーから出射したビームをまとめるために使用される。 
現行の高出力半導体レーザ・システムは、クラッディングに適した出力とビーム特性を持っており、導入時に様々なタイプから選択できる。例えば、Coherent社製HighLight Dシリーズは、2.8kW から8kW(波長は全て975nm)出力のレーザをラインアップし、高いスループットでのクラッディングが可能となる。同レーザは、長さ3mmから24mm、幅3mm から12mm のラインビームを出力可能である。クラッドされるエリアは典型的にビームよりも大きいので、オートメーションによりビームを移動させ高速で処理する。

半導体レーザ・クラッディングの利点

従来の方法に比較し、半導体レーザ・クラッディングは特徴的な利点を持つ。アーク溶接技術と比較すると、熱による歪発生が低く抑えられる。基板素材へのクラッド素材の希釈性が低減され(~ 4%)、気孔率が低下(<1%)し、 表面の均一性が高い。これらの特徴に より、クラッディング後に必要とされ る工程が顕著に省略可能となり、それ に伴う時間及びコストを大きく削減す ることが可能となる。半導体レーザの 急速な冷却率により、微細な粒状構造 を作ることができ、より高い耐浸食性 を実現できる。さらに、これらの利点 はどのような出力レベルでも、さらに は材料付着率でも享受できる。反対に、 ほとんどのアーク溶接プロセスでは、 出力と材料付着率を上げるとクラッド の質が低下する。さらに半導体レーザ のラインビーム形状によってクラッド 幅及び厚さを高度に制御しながら大面 積を高速で処理することができる。  
半導体レーザと溶射技術は、不必要 に高い熱を該当箇所に入れる必要が無 く、希釈を最小限にする。しかし、溶 射法とは異なり、半導体レーザ技術で は、クラッディングと母材とを金属結 合するため、より強固に結合し、耐摩 耗性も向上する。さらに半導体レーザ での金属結合により結合したクラッド は、機械的コーティング(機械的結合) によく見られるひび割れや層間剥離の 発生も最小限に抑える。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/09/TechReport1-ILSJ1209.pdf