産業用レーザ市場2012年中間地点 レビューと予測

デイビッド・A・ベルフォルテ

本誌が産業用レーザとシステムの44社の上場企業に対して本年5月の地点で調査を行った。その結果は本年下半期に向けて、適度な水準とみなされる一桁成長が期待できるという予測だった。

振り返ると誰が、2011年初めにその年の産業用レーザの収益が過去最高を記録すると予想したであろうか。2010年の売上が2011年2月に上方修正された後でさえ私は予想しなかった。レーザシステムの売上が4%修正された時も同じであった。 
我々は多くの経済アナリストが言っていた景気の二番底への不安があった。我々は、継続する米国の高い失業率、ユーロ圏での経済的苦難と中国でのインフレに関する政府の統制など、メディアから発信される数々の情報により不安が拡大した。もしそれが十分でなければ日本の我々の友達や同僚を襲った巨大地震と津波があった。それらは日本の広範なエネルギーの供給地域を襲い、数カ月もエネルギーが不十分な期間が続いた。 
この時点でアナリスト達はこのような多くの不安要素のせいで来るであろう二番底の責任をどう回避するか必死になっていた。しかし、それは起こらなかった。二番底の危険性はたびたび近づき、ウォール街で働く我々の友人は今年後半のユーロ圏経済大不況に毎日さらされて、アスピリン(鎮痛剤)のビンを空にし、潰瘍を悪化させながらもなんとかもがいて超えた。 
これらすべてを通して、産業用レーザ業界の4半期ニュースは引き続き良いものであった。そして時が進むごとに、良くなり、第3四半期の最後には2011年成功者になることをみんなが確信した。アナリストを無視したが結果として大きな賭に勝った者は成功談を残して転職をした。 
混沌とした経済の中で強く成長している産業領域で何が起こっているのか我々は継続的に問いかけられた。我々や数人のエコノミストたちは食品や家庭用品の消費により経済が動く通常の状況とは違い、不可欠で無いものを購入する状況があることに気がついた。消費者が前の2年の辛い状況にうんざりしてまるで病気の様に「不況を乗り越えて、みんなで新しい車を買おう」と言っていた。それを行った2012年の北米の新車販売は景気後退前の年と同様に記録的な年となった。その理由は小型SUV及び小型トラックの販売が復活したからであった。 
我々の分析ではレーザマーケットは非常に好調な年であったし、いくつかの業界- 例えば半導体や医療機器- は不況を乗り越えより強くより利益をあげられるようになりさらに将来の成長の準備を行った。また、エネルギー業界(従来のものおよび代替え)も拡大し、生産設備に投資している。陸上及び航空運送業界は、好景気である。航空会社は、飛行機やエンジンの購入を抑え、自動車業界は、小型化した自動車に投資し、売上が向上している。そして金属組み立て製品、航空宇宙産業、精密電気機器業界のような多数の中小規模の会社で構成されている堅強な業界は、生産設備のための融資を見つけた。

概要

表は産業用レーザ収益における当たり年に設定されており、営業部の電話がぱったり止み最悪の年と言われる2008年が含まれていない。表1 に示される様に、産業用レーザ業界はその間に2回も二桁成長を遂げた年があった。2011年にはレーザシステムは70 億ドルを超え、史上最高の71億ドルに迫った。レーザの売上は、2008年までの記録を12% 更新する20 億ドルまで急上昇した。 
会計報告書によると2011年の上位36社は全て上向きであり、その多くは売上及び利益の記録を更新した。あらゆる産業向け展示会は入場者数の最高記録を更新し、入場者の多くが購買意欲が高く営業マンを自信づけた。その年の最後の月が近づくと大手取引先の注文書がいっぱい集まり、2012年最初の四半期の製造予定もいっぱいになった。 
表1(レーザ及びレーザシステム売上高のまとめ)は、2009 年の不景気からのV 字回復と2011 年のさらなる上昇、2012年の控えめな成長の予測を示している。図1では悪名高い “釣り針” カーブが典型的な形状で描かれている。悲惨な不況を含む過去25年間の産業レーザのためのCAGR(年平均成長率)ではより標準的な12.52%となった。 
重要な点は、2010年のレーザ・システムの売上が2008 年を上回り、レーザの売上が記録となった2008 年とほぼ一致、2011年にそれを12%上回ったことである。これは2009 年に感じた不況からの苦痛が消えたと言える。表2 における全世界のレーザの売上を見ると、CO2レーザ、ファイバレーザ、その他(半導体/エキシマ)のレーザが二桁の伸びを見せている。ファイバレーザは比較的新しいマーケットである板金切断用の売上に牽引され48%の非常に強い成長を見せた。ランプ励起/ ダイオード励起固体レーザが使われているマーキング及び微細加工アプリケーションにファイバレーザが普及したため固体レーザは不況前の低成長を続けている。ファイバレーザマーキングシステムの価格低下による販売数増加はメーカーの勢いとなり、長期間、固体レーザの主要マーケットである微細加工分野にも一石を投じようとしている。トルンプ(SPI)、ロフィン(Nufern/Lasag)、コヒレント、及びニューポート/スペクトラ・フィジックス(Hi gh Q)はこのマーケットに関する主要企業である。(本記事執筆時点で後の2 社はファイバレーザをラインナップしていないため売上構造の変化があったかもしれない。) 
低出力CO2レーザの売上はアジア(中国)を中心に成長を続けているが、競合とエンド・ユーザーからの価格交渉により薄利多売の商品へとその方向をへ変え、数千台出荷してもわずかな利益しか得られない状況となった。高出力CO2 レーザの売上は、意外にも14%増加した。板金切断システムのバイヤーであるジョブショップが厳しい状況でもあるが融資を得たためである。板金マーケットが成長著しい高出力ファイバ・レーザにより浸食されているが、長期にわたり定着したCO2 システムが13% の伸びを見せた。 
毎年開催される展示会「Fabtech」での目下の話題はファイバレーザのマーケットシェアがどれくらい取れているかということである。10 社以上あるCO2 システム製造会社の中で一社のみがファイバレーザのシステムを提供していなかったので、市場シェアの質問に対する簡単な回答を得るのは難しかった。現在の普及率は約15 ~ 17 % と予想され来期は25% 程度が期待されている。従ってマーケット全体の成長はファイバレーザシステムが高密度プラズママーケットの代替えの様な新しい未開のマーケットを発見する時ほどには影響されていない。 
2011 年の世界のファイバレーザの収益が48% 成長していることが表2 で示されている様に、ファイバレーザの収益と業界大手IPG フォトニクス社の業績は、投資業界に大いに興味を持たれている。産業向け展示会や米国レーザ学会のICALEO の様な多くの会議でのホットな話題はファイバレーザ加工であり、特に高出力ファイバレーザを使用したアプリケーションにある。少なくとも欧州と北米での二つの大きな製造関連の展示会では、ファイバレーザを使用した切断機の展示に多くの注目が集まり熱心な潜在顧客が出展社を喜ばせていた。 
金属切断マーケットでのファイバレーザの成功を感じることはないが、製品デモの後、製品に興味を持ち居残った潜在顧客が「CO2 レーザではできなくてファイバレーザができることに何があるかは分からないがファイバレーザに注目している。」と話してるのを聞いて驚いていた。軽食の列に並んでいるときファイバレーザが会話のトピックになっているのをよく耳にもした。つまり、話題があるとメーカーは業界の興味の波に乗り、潜在顧客は彼らの製品に引き寄せられる。 
一方でマーキングや精密加工用途の低出力ファイバレーザは、固体レーザやCO2 レーザの市場シェアを奪い続けている。これらの技術の年間売上を合わせ見るとここ数年市場は成長していることがわかる。一つの結論としてファイバレーザはそのマーケットをより拡大するために新しいマーケットを見つけないといけないということである。メーカー及び大手研究機関によると業界が要求している新しいマーケットがある見込みを示している。 
産業での使用において高出力ダイレクト半導体レーザを受け入れたことにおける顕著な成長は、研究室から産業への技術移行の成功例になった。自動車業界でのレーザブレージング(ろう付け)は優れたアプリケーションであり、半導体レーザの売上を目に見える数値にまで押し上げた。そしてレーザライン社のようなシステムインテグレータの評判があがった。同社のいくつかの重要な実績はあまり利用されていなかったレーザ技術の利点を示したことだ。半導体レーザメーカーは量産製造ラインのために集光ビーム品質を向上させた光学系を内蔵した『完璧なレーザ』を供給し強い成長性を約束した。 
表3 ではレーザ種類ごとのシステムの収益の成長を示しており、2011年に関してはレーザの成長率も併記している。ここでも2011 年に高出力ファイバレーザの成長( 38% )が大きな成長の要因であることがわかる。しかしながらCO2 レーザは50 億ドル成長し、ファイバレーザは高出力を主に4 億ドル成長した。合わせて約10 億ドルの成長はシステムの収益成長の16% の大きな要因となっている。 
2011 年を通してアナリストを悩ませた質問は、「良いニュースより悪いニュースが多い国際的な製造マーケットにおいてどのようにして産業レーザマーケットがそのような目をみはる業績をあげたのか? 」ということであった。本誌は3つの大陸で、宇宙航空産業、エネルギー産業(通常及び代替)、電気産業、組立金属製造産業及び輸送産業に起こった経済的不安をよせつけない6つの大きなマーケットを認識した。これらの産業マーケットでは住宅産業不況からくる需要が望めない家電製品マーケットを超える需要が発生した。中国の銀行の迅速な行動によりインフレを抑制するための国家の努力が覆されこれにより中国では生産設備投資が急激に減り中国が製品の主要顧客だった欧州の会社の仕事が減少した。 
本誌は他の製造業が不振だった年に24 以上のレーザアプリケーションがマーケットの強さを示したことを簡単に認識できた。それは、タービン部品の穴あけ、バッテリーの溶接、太陽電池の加工、スマートフォン用ガラスの切断、自動車ルーフのブレージング(ろうづけ)などなど。最終的に産業用レーザマーケットを表現する “ニッチ” や “多様性”のやや軽蔑的な言葉はW 型世界不況を生き抜いた称賛の言葉になった。

図1 産業用レーザの売上高推移。

図1 産業用レーザの売上高推移。

表1 産業レーザ売上高概要( 100 万ドル)。

表1 産業レーザ売上高概要( 100 万ドル)。

表2 産業用レーザの世界売上高( 100 万ドル)。

表2 産業用レーザの世界売上高( 100 万ドル)。

表3 産業用レーザ装置の世界売上高( 100 万ドル)。

表3 産業用レーザ装置の世界売上高( 100 万ドル)。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/09/cover-story_ILSJ12091.pdf