微細加工の高スループット化を実現するフルデジタルガルバノシステム

ジーエスアイ・グループ・ジャパン株式会社 シニアアプリケーションエンジニア 山下 仁

スマートフォンをはじめとする各種電子機器において高性能デバイスの需要は増加している。高機能デバイスには高精度で微細なレーザ加工プロセスが必要であり、需要の増加に伴いレーザ加工のスループットを高めることが求められている。一般に高密度微細加工に必要なターゲット上のビームスポットサイズがより極小であることが求められ、小さいスポットサイズを得るためにはより大きいビーム口径をガルバノミラーに入射する。特に赤外波長レーザ加工あるいはハイパワーレーザ加工のアプリケーションでは大口径ミラーを使用するケースが多い。レーザ加工プロセスに必要な時間は主にレーザ照射時間により決定される。ガルバノシステムに要求される高速化とはレーザ照射前後の位置決め移動時間あるいはサーボ整定時間の短縮である。例えばレーザドリルアプリケーションでは指令位置に移動し指令位置範囲に整定したら瞬時にレーザを照射し次の位置へ移動する。レーザの照射時間は加工プロセスに必須な時間であり、照射時間以外は不要な時間として10μsecオーダの削減が求められる。このような市場要求を背景に米国ケンブリッジテクノロジー社は中・大口径ミラーアプリケーションの高精度加工と高速度走査を同時に実現するフルデジタルガルバノスキャナシステムLight ning II(以下LII)の販売を開始した(図1)。LIIサーボシステムはφ25mmビーム口径ミラーの2mRad 機械角度(±20μRad 整定幅)ステップ走査で300μsec以下の整定時間を実現、第1世代のLightn ing (I LI)サーボシステムと比べ約200μsec以上の整定時間削減を達成した。

図1 Lightning II フルデジタルガルバノシ ステム

図1 Lightning II フルデジタルガルバノシステム

制御インターフェース

フルデジタルガルバノシステムとは位置検出器に光学エンコーダを搭載したガルバノモータをデジタルサーボドライバで駆動するシステムを指し、アナログ位置検出器を搭載したモータをアナログサーボで制御するシステムと区別されている。その操作性、制御インターフェース、サイズ、コストなど特長が異なりそれぞれのアプリケーションの要求に応じて使い分けされている。LIIは24 bit指令分解能USB/GSBと24→16bit 指令分解能変換アダプタ基板を使用したXY2100インターフェースを持つ。USBを使用する場合、専用SCANPACKソフトウェア(API)の上位に書かれたユーザアプリケーションプログラムから直接制御を行う。伝統的なガルバノコントローラは16bit指令分解能が広く使用されているがLII では16bitのさらに256倍の指令分解能で制御することが可能となった。LII基板はサーボドライバ機能とモーションコントローラ機能を併せ持ち、パソコンからUSB経由で加工データを送信、FIFOバッファメモリを介してガルバノミラー制御とガルバノミラー位置・速度・インポジションに同期したレーザ変調制御信号(TTL)を出力する(図2)。レーザ変調制御信号はレーザON/OFF同期用ゲート信号とソフトウェアで指定したレーザ周波数とパルス幅で出力するパルス信号の両者を出力し、CW及びパルスレーザのインターフェースに対応している。ユーザはこれらの信号をレーザ変調ドライバ、Qスイッチ、AO モジュレータなどレーザ変調器のトリガ信号として使用することができる。FIFO バッファメモリのデータ通信はレーザ加工を中断させずにデータ充填を自動的に行うマルチタスクであり、これら一連の制御フローは全てSCAN PACK ソフトウェアで自動的に行われる。例えば、3次元立体加工アプリケーションのように数10 万~数1000 万点以上の加工ベクトル数・ポイント数を2日間に渡り連続加工させる膨大なデータ量でも一度加工命令を実行するだけでガルバノ走査を休止させること無く全ての加工を完了させる。

図2 USB経由SCANPACKソフトウェアインターフェース図

図2 USB経由SCANPACKソフトウェアインターフェース図

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/e9637918cab44203db19f5540b6c9672.pdf