パルス幅1ps~1000psを選択する、精密微細加工用レーザ
レーザによる精密微細加工を実現するためには、波長およびパルス幅が重要である。従来のナノ秒パルスレーザとフェムト秒超短パルスレーザの中間領域であるピコ秒パルス(1ps ~ 1000ps )は、レーザ光源においても加工においても優れたパフォーマンスを実現する。
熱影響の少ないミクロンオーダの加工(レーザ精密微細加工)を実現するために、従来はエキシマレーザなど紫外波長のナノ秒レーザが利用されてきた。その後、高繰り返しが可能な半導体レーザ( LD)励起Qスイッチ固体レーザ、およびその高調波レーザへと置き換えられる様になり、主な加工現象であるアブレーション加工に広く適用されている。そして近年は究極の非熱加工を追及し、チタンサファイヤ(Ti-S)フェムト秒レーザが精密微細加工の研究に利用されている。Ti-Sレーザは数mJ のフェムト秒パルス光が得られるが、励起光源として第2高調波固体パルスレーザを必要とし、レーザの構成が大掛かりになってしまう。また、数十kHz以上の繰返しも困難になっている。
加工の高速化、小型、高安定など産業用レーザに要求される超短パルスレーザを実現する方向として、近年はイッテルビウム(Yb )系やネオジム( Nd)系超短パルスレーザが注目されている。これらのレーザ媒質はTi-S 結晶と比べて2 ~ 3 桁長い蛍光寿命をもつため、小型なCW‐LDを励起光源に使用することができる。モード同期によって作られた数十MHz の超短パルスレーザ光を種光として、再生増幅共振器、またはMOPA 構造増幅器により、精密微細加工に必要なエネルギである数十μJ以上の超短パルスレーザ光を生成している。また周波数は増幅器内部のスイッチングにより決定されるため、数十kHz 以上の高繰り返しが達成できる。このため、平均出力も数W~数十Wを得ることができる。ただし、レーザの規模・性能は平均出力が支配的であるため、繰り返し周波数を増加させるとパルスエネルギは低下する。このため、加工目的に応じたエネルギまたは平均出力のレーザ選択、最適化が重要と考える。
超短パルスレーザMOIL-ps
一般的にYb 系、Nd 系超短パルスレーザは、Ti‐S レーザと比較してスペクトル帯域が狭く、100fs 以下の光パルスを発生させることは困難である。最短パルス幅はYb系レーザで数百fs、Nd 系レーザでは10ps である。精密微細加工において必要なパルス幅は必ずしもfs領域でなくても良く、10psにおいても十分な超短パルスレーザ加工として適用しているケースが多い。ただし、超短パルスレーザ加工はその強力なピークパワー(パルスエネルギ/パルス幅)を利用し、透明材料の内部加工などに適用する場合、10ps と1ps以下とでは加工が大きく変化する場合も多く存在し、加工のパラメータとして、ピーク強度(単位面積あたりのピークパワー)を認識することが重要である。
超短パルスレーザ加工においても高調波発生による短波長レーザ光を積極的に利用すべきである。特に銅などの金属加工、ガラスなどの透明材料加工に最適な結果が得られる。高調波を発生させる場合、その変換効率はピーク強度に従うため、より短パルス化されたレーザの方が小さな規模で高エネルギの高調波が得られる。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/7162dfa94593cfd98e022ac1cb48753e.pdf