超短光パルスの計測には、様々な光源の特性を考慮する必要がある。伝搬媒質による分散をはじめ、時間幅、帯域、スペクトル幅、可干渉性、偏光特性、瞬時あるいは積算強度、繰り返し周期などによって、計測方法を適宜選択することは重要である。超短光パルスのような超高速現象は、光検出器で捉えてオシロスコープで波形を直接観測することができない。このため、観測可能な別の現象を捉えることで、間接的に測定を行う必要がある。ここでは、光パルス波形が変化する要因として、媒質が群屈折率を持つ場合における分散の影響について述べる。その後、波形計測法を大きく4つに分けて紹介する。具体的には、(1)フォトディテクターや光電子増倍管といった光検出器で直接測定する方法、(2)自己相関計やFROG、SPIDER、光子計数法などの自己相関波形を測定する方法、(3)ホモダインによる干渉波形を測定する方法、(4)ストリークカメラを用いた方法、を述べる。

1. 超短光パルスの伝搬とパルス幅広がり

スペクトル幅の広い光パルスが物質中を伝播するとき、屈折率の波長依存性によって光パルスの波形が変化する。これは、光パルスに含まれる各周波数成分の伝搬時間が異なることにより、各周波数成分が光パルスの重心からずれていくことによる。フェムト秒パルスなどのスペクトル幅が広い光パルス程、群速度分散(GVD)の影響を強く受ける。例えば中心波長800 nmの10 fsの光パルスは100 nmものスペクトル幅を有する。このような光パルスでは、大気中を10 m伝搬させるだけでもパルス幅が80 fsとなる。超短光パルスの計測時においても、分散の影響をよく考慮する必要があり、計測装置の光学系の設計にも気をつける必要がある。

超短光パルスの伝搬の解析には、群屈折率の分散を考慮することが有効である。以下に群屈折率ngを示す。
pulse_eq1
ここでn0λは物質の屈折率および真空中での波長を示す。物質の屈折率n0はセルマイヤー方程式や、以下のドルーデ・モデル近似されたものを用いる。
pulse_eq2
Aとλ0は、材料の屈折率を式(2)を用いて近似させたときのフィッティングによって求まる。式(3)は紫外線領域にのみ吸収を示す透明媒質において、1 μm以下の波長領域で良い一致を示す。光パルスの時間幅広がりは、式(1)と式(2)を用いて得られる屈折率とGVDを用いて計算できる。時間幅tinのガウシアンパルスが分散媒質内を伝搬する場合を考えると、その出力光のパルス幅toutは、以下の式で与えられる。
pulse_eq3
ここで、Lは分散媒質内を光パルスが伝搬する距離である。Bは以下の近似式で与えられる係数である。
pulse_eq4
また、いくつかの材料のBの値を表1にまとめる。

表1 各種伝搬媒質のBの値と波長の関係[1]

伝搬媒質
BK7 石英 KDP 空気 LiNbO3 アセトン
波長 [nm] 300 5.13042 4.12711 5.15520 3.77653 0.00195 88.13850 4.64847
410 3.26164 2.65289 3.27028 2.36250 0.00129 37.50860 2.85696
530 2.36833 1.93566 2.37234 1.70341 0.00095 23.15230 2.04417
620 1.97433 1.61670 1.97693 1.41611 0.00080 18.14490 1.69431
800 1.48930 1.22200 1.49066 1.06507 0.00060 12.82720 1.27024
1060 1.10460 0.90754 1.10534 0.78847 0.00045 9.13225 0.93844

2. 超短光パルスの計測

超短光パルスの計測法としては、i) 高速な光電変換素子を用いたもの、ii) 光パルスの自己相関、相互相関波形を計測するもの、iii) 干渉を用いたもの、iv) ストリーク・カメラを用いたものが知られている。以下にそれぞれの計測法について簡単に述べる。また、表2に各手法の特徴をまとめる。

表2 各種超短光パルス測定手法の特徴[1]

方法 波長域 [nm] 時間応答 繰り返し 価格帯 [万円]
光電変換 バイプラナ光電管 115 – 1100 60 ps 単一 ~ GHz ~ 30
光電子増倍管 115 – 1700 150 ps 単一 ~ GHz 1 ~ 140
PIN-PD 350 – 1600 250 ps 単一 ~ GHz 0.2 ~ 5
APD 350 – 1600 300 ps 単一 ~ GHz 0.5 ~ 10
相関計測 自己相関法 紫外 – 赤外 数fs ~数100 MHz ~300
FROG 紫外 – 赤外 数fs ~数100 MHz ~700
アップ・コンバージョン 可視 – 遠赤外 数fs ~数100 MHz ~500
時間相関単一光子計数法 115 – 1600 20 ps ~200 kHz ~300
干渉計測 ホモダイン法 任意 数fs ~数100 MHz ~300
ストリーク・カメラ X線 – 1600 200 fs 単一 ~ GHz 2100

2.1. 高速な光電変換素子を用いた方法

光パルスの波形を測定する最も単純な方法は、高速に光電変換が可能な光検出器とサンプリングオシロスコープを用いて直接測定することである。光検出素子には、真空管内に光電変換素子を備えた光電管、半導体素子などがある。測定方法の概念図を図1に示す。光源からの光パルスを高速な光電変換素子に導き、光電変換された電気信号をオシロスコープで捉える。この測定系の時間分解能は、高速光電変換素子のインパルス応答特性や、オシロスコープのサンプリングパルス幅、あるいはサンプリングのクロック安定性や同期系のトリガー・ジッターなど様々な要因によって決まるが、多くは高速光電変換素子の時間応答特性で決定される。この方法では、時間分解能は数百 psであるため、ns程度の光パルスの波形測定が行える。

pulse_図1

図1 光電変換素子を用いた方法

2.1.1. 光電管

光電管には、光電変換材料や電子-電気信号変換・増倍機構の違いから色々な種類がある。
可視域で用いられる光電管は、アルカリ金属の複合材であるS1、S20あるいはS25(米国の光電面感度の規格)などと呼ばれる光電変換面を用いており、その時間応答は電子に変換されたあとの処理系によって決まる。遠赤外線用光電管では、半導体(GaAsやInGaAs)を光電変換面に用いており、1.7 μmまでの感度がS1光源電面に比べて非常に高いため、多少応答時間が遅いものの、遠赤外線領域での時間分解計測に用いられる。紫外領域では高い光電変換効率を持つダイヤモンドを光電面として用いた光電管が用いられる。
光電変換された後の電子に対して、電子的な増倍機構を有しないものは、バイプラナ光電管と呼ばれる。ダイノードやマイクロチャンネルプレート (MCP)と呼ばれる電子増倍機構を持つものは、電子増倍管(フォトマルやPMTと呼ばれる)が用いられる。時間分解能は数百ps程である。後者では、電極間に高電圧を印加し、ガラス管内部に入射した光電子を多段に渡って二次電子増倍することで、電子信号を増幅する。このため、微小な光の検出に用いられる。

2.1.2. フォトダイオード

光電変換素子に半導体を用いたものは、一般的にフォトダイオード (PD: photo diode)と呼ばれる。半導体PDは、高い光電子変換効率を有する。また、定電圧動作が可能であり、小型、安価でもあることから、光電子増倍管に比べて取り扱いが容易である。半導体の材料は検出波長によって異なるものを用いる。紫外領域から近赤外領域では、SiやInGaAsなどが用いられる。また、1.8 μmまで感度を有するGeや、17 μmまで感度を有する液体窒素で77 Kまで冷やしたHgCdTeが用いられている。
半導体PDは構造によってMSM構造、PIN構造に分けられ、更にアバランシェ動作を行う素子などに分類される。p型半導体とn型半導体を接合したPIN構造を取るものが一般的であり、光が照射された際に接合面で生じる電子-ホールの生成を介して、光信号を電流として取り出す。アバランシェ動作をするPD (APD: avalanche photo diode)では、半導体内部に200 V程度の高い電圧を印加することで、光により生成された電子流によって電子雪崩を起こさせて二次電子増倍を行う。電子増倍のゲインを有しながらも、300 ps以下の時間応答が得られる。

2.1.3. その他

光電子増倍管と半導体APDの両者のメリットを取り入れた検出器も開発されており、104以上の電子の増倍ゲインが得られる。応答速度はnsオーダーであるものの、単一光電子検出が可能であり、電子増倍ゆらぎが少ないという特長を持つ。このため、2つ以上入射した光電子を弁別検出でき、微弱な高速現象の検出に適している。

3.2. 相関波形を計測する方法

3.2.1. 自己相関法

参照

3.2.2. 周波数分解光学ゲート法 (FROG)

参照

3.2.3. スペクトル位相干渉法 (SPIDER)

参照

2.2.4. アップ・コンバージョン法

この方法では、測定したい光パルスと参照用の光パルスの和周波を発生させて相互相関信号を検出する。参照用光パルスの帯域をうまく選択することで、本来、検出器が感度を持たないような長波長帯域においても、感度良く光パルスの波形や超短時間現象を観測することができる。計測には、測定したい長波長の光と、参照用の短波長の光パルス(e.g. 800 nmなど)を同時に非線形光学結晶に集光して和周波を発生させる。参照光の遅延を変化させて、その時の和周波を計測することで、長波長の光パルスの形状測定を行う。実際の測定では、和周波発生に適切な非線形光学結晶を選び、位相整合条件が満たされるよう結晶軸、入射角度、偏光、結晶温度を適切に設定することが重要である。
光サンプリング法も参照

2.2.5. 時間相関単一光子計数法

本法は、非常に微弱な光源からの光パルスの波形を高いダイナミックレンジで計測することができる。図2に測定系の概略図を示す。この図では、パルス光によって誘起された光学現象の時間応答を測定している。本測定系では、単一光子検出型の光電子増倍管と、TACと呼ばれる時間-波高変換回路を用いる。TACは、2つの電気信号の到着時間間隔を電圧波高に変換する装置である。光源からの光パルスは2つに分けられ、一方は光検出によってTACのSTART信号を生成する。もう一方は、何らかの光学現象を発生させるために用いられる。発生した光学現象はNDフィルターによって単一光子レベルまで光量が落とされ、検出される。この時、単一光子が検出された場合の電気信号と、回路の熱雑音や2つ以上の光子が入射した場合の電気信号とを区別するため、波高弁別器が用いられる。単一光子から生成された電気信号はTACのSTOP信号として用いられる。START信号のタイミングを遅延回路で変化させて計測することで、光源からの光子の発生確率に対応した波高分布、すなわち光波形が計測される。

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図2 時間相関単一光子計数法

2.3. 干渉を用いた方法

位相が安定した光を干渉計に導入すると、安定した干渉縞が得られ、そこから入射光の特性を知ることができる。光パルスを、遅延量が可変な干渉計に導入し、得られる干渉縞と遅延量の関係から、光パルスのコヒーレントな時間幅を求めることができる。この方法では、光源や伝搬過程における群速度分散の影響を得ることはできず、あくまで光パルスのスペクトル幅に対応したコヒーレントな時間幅の測定が行われることに注意する。
図3に光干渉を用いて時間幅を測定するための時間分解バランス・ホモダイン法の測定系概略図を示す。光パルスはマッハ・ツェンダー型 (Mach-Zehnder)の干渉計に導入され、出力光がそれぞれ光検出器で検出される。マッハ・ツェンダー干渉計は2つの光出力を持ち、それぞれの出力からは相補的な干渉パターンが得られる。光検出器から得られる電気信号は作動増幅され、干渉成分のみが取り出されてオシロスコープで解析される。バランス検出により、光源の強度揺らぎの影響も同時に取り除くことができる(コモン・モード抑圧)。遅延量を変えて干渉パターンを測定することで、コヒーレントな時間幅が測定される。
遅延を交流変調するACバランス・ホモダイン法や、光路にチョッパーを挿入してロックイン検出行うことで感度を改善する方法などがある。

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図3 時間分解バランス・ホモダイン法

2.4. ストリーク・カメラを用いた方法

ストリーク・カメラは、200 fs程度の時間分解能を有し、時間軸以外の情報を単一光子レベルまで解析できる計測装置である。光源のダイナミクスの直接観測などに効果を発揮する。図4にストリーク・カメラを用いた測定系の概略図を示す。光パルスを、光電面を介して同じ強度波形を有する光電子像に変換する。光電子は電圧加速され、一対の平行平板に導入される。この際光源の発光タイミングと同期をとったランプ状の掃引電圧を平行平板に印加すると、電圧に応じて光電子が上方から下方へ順次偏向される。すなわち、光電子の時間波形が上下方向の空間強度分布に変換される。光電子像はMCPによって二次電子増倍されてから出力蛍光面に加速衝突し、蛍光像に変換される。蛍光像は高感度CCDカメラなどで読み出され、コンピュータによって解析される。超高速な時間情報が二次元空間情報に変換されているため、読み出し装置の応答速度は遅くても十分である。掃引方向に垂直な方向に、波長情報や顕微鏡により拡大された像の空間情報を配置することで、時間情報以外の情報を同時に取得することができるのが特長である。

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図4 ストリーク・カメラ測定系概略図

光電子増の掃引方法には、極短時間のスイッチ時間で直線的に印加電圧を変化させる単掃引方式と、光パルスの繰り返しに同期した高電圧の正弦波を印加するシンクロスキャン方式がある。単掃引方式では、200 fs以下の高速な時間分解能が得られるが、掃引の最大繰り返し週数は数百Hz程度に制限される。シンクロスキャン方式では、単掃引方式に比べて時間分解能は劣るが、数十~百MHz程度の繰り返し掃引が可能である。また、シンクロスキャン方式では、掃引情報がメモリに重畳されるため、信号対雑音比を高くできる。ストリーク管自体の時間分解能は500 fs以下であるが、測定系全体のジッターによって最終的な時間分解能は制限される。測定しようとする光パルスの繰り返し周波数と、必要とする時間分解能、観測時間幅などによって方式を適宜選択する。
他にもストリーク・カメラと光電子増倍管を組み合わせて、高いダイナミックレンジを得るサンプリング型光オシロスコープなども開発されている。この方法では、従来の電気のサンプリングオシロスコープでは困難であった測定波形の振動の由来が、電気信号によるものか光の緩和振動によるものかを見分けることなどができる。

参考文献

松本弘一 編「光測定器ガイド 全面改訂版」オプトロニクス社(2004)

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