1. 拡大光学系

拡大光学系は、試料を拡大観察するための光学系である。単式顕微鏡と複式顕微鏡があり、前者では対物レンズによる実像をCCDカメラにより直接観察する。後者では、対物レンズで拡大された試料の実像を、接眼レンズで更に拡大して観察を行う。図1に複式顕微鏡の原理図を示す。拡大倍率は、対物レンズと接眼レンズの倍率の積となる。

光顕図1

図1 複式顕微鏡の拡大光学系原理

1.1. 対物レンズ

顕微鏡において、対物レンズは最も重要な光学要素である。倍率は一般的に×4~×100から、高倍率のものでは×250倍まである。画角が小さいため、中心部で発生する収差と像面湾曲の補正が重要となる。また、顕微鏡の分解能は対物レンズの開口数(NA: numerical aperture)によって決まる。

1.1.1. 軸上色収差と像面湾曲

球面収差は非常に小さいレベルまで補正されており、残る軸上色収差の補正が重要となる。その補正程度によって等級に分けられており、赤(653.6 nm)と青(486.1 nm)の2色について補正されているものを「アクロマート」、紫(435.8 nm)まで補正されているものを「アポクロマート」と言う。また、その中間に位置するものを「セミアポクロマート」と言う。
近年、写真撮影や動画撮影など像の中心部だけでなく、周辺部において鮮明な像の取得をしたいという要請がある。周辺部まで湾曲が補正され、鮮明な像が得られる対物レンズを「プランレンズ」と言う。

1.1.2. 分解能

顕微鏡にとって最も重要な性能の1つが分解能である。分解能とは2つ物体を見分けることができる最小距離のことを言う。レンズの収差は十分に抑えられているため、回折現象によって制限される。この時の分解能は「回折限界」と呼ばれ、以下の式で表される。
光顕eq1
ϵ0は回折限界の時の分解能を、λは光の波長、NAは対物レンズの開口数である。光の波長が決まっている場合は、NAが最小分解能を決める。NAは以下の式で求められる。
光顕eq2
ここで、nは対物レンズと試料の間の媒質の屈折率、θは試料へ集光する光の最大角度を表す(図2)。屈折率の大きな媒質をレンズと試料の間に満たすことでNAを大きく取ることができる。水(n=1.33)やオイル(n=1.52)などが用いられる。

光顕図2

図2 対物レンズのNA

1.2. 接眼レンズ

接眼レンズの仕組みは基本的にルーペと同じで、×10から×20程度の倍率のレンズが提供されている。接眼レンズの視野は、視野絞りの直径で決まる。視野絞りの直径をmmで表したものは「視野数」と呼ばれる。実際の視野は視野数を対物レンズの倍率で割ったものとなる。

2. 照明光学系

ハロゲンランプなどを用いて、十分な光量の光でムラなく均一に試料を照明するための光学系である。

2.1. 照明方式

照明方式には透過照明と反射照明の2つがある。透過照明では、試料に光を当てたときの透過光を観察する。主に医療や生物学などで用いられる。反射照明では、試料に光を当てた際の反射光を観察する。特に試料の上面から照明する方式を落射照明という。生体の蛍光観察や、半導体や金属面などの観察に用いられる。

3.2. 照明光学系

照明光学系の構成は、クリティカル照明とケーラー照明の2つがある(図3)。前者では、光源の像を試料上に形成する。明るい光学系が実現できるが、光源の形状がそのまま試料上に投影されるため、明るさにムラを生じさせる原因となる。このため、顕微鏡用途では殆ど用いられない。後者は、光源の像を開口絞り上に形成し、コンデンサーレンズを介して試料にあてる。光軸に平行な光で試料が照明されるため、均一な照明を実現できる。開口絞りの口径を変えると、対物レンズに入射する光の直径が変化する。これはすなわちNAの変化に相当する。このため、絞りを調整することで、明るさと分解能を同時に調整できる。また、視野絞りの大きさを変えることで、試料への光の照射範囲を調節できる。光量が多いとフレアなどが顕著に現れるため、余分な光はカットして用いることが望ましい。

光顕図3

図3 照明光学系 (a)クリティカル照明 (b)ケーラー照明

参考文献

福田京平 著「光学機器が一番わかる」技術評論社(2010)