光学顕微鏡による生体組織観察では、一般的に無色透明である生体試料をより良く見えるようにするために、様々な観察手法が用いられている。ここでは一般的に用いられている観察手法として、「明視野観察法」「暗視野観察法」「位相差観察法」「微分干渉観察法」「偏光観察法」を取り上げ、各観察法の原理と特長を説明する。

明視野観察

最も一般的な手法として知られている。標本を透過または反射した光を観察するため、明るい視野が得られる。生体試料は一般的に無色透明なものが多く、コントラストが弱くなる。このような試料では、染色を行ってから観察する。

暗視野観察

標本を斜め方向から照明し、その回折光や散乱光を観察する手法である。図1に示すような円環状のスリットを通してコンデンサーレンズで標本を照明する。このとき、照明光は対物レンズに取り込まれず、回折光や散乱光のみが取り込まれる。これらの光は標本の構造を反映しており、明視野観察とは明暗の反転した高いコントラストを持つ像が得られる。また、明視野観察に比べて高い分解能を得ることができる。

観察手法図1

図1 暗視野観察法

位相差観察法

標本の透過光と回折光の干渉を利用することで、無色透明の標本を暗視野観察よりも高いコントラストで観察できる。図2に光学系を示す。暗視野観察法と同様に、円環状のスリットを介して、標本を斜め照明する。対物レンズの後ろには、円環状の位相板が配置される。標本の有無や標本内の屈折率分布によって、透過光と回折光には位相遅延が生じる。この時、1次の回折光の位相は、透過光よりもλ/4程度の遅延が生じる。対物レンズに取り込まれた光のうち、透過光は位相板を通り、 λ/4だけ位相が進められる。このため、回折光と透過光の間にはλ/2の位相差が生じる。この結果、回折が起きた箇所では光が弱め合う干渉が起こり、像が暗くなる。このようにしてコントラストの高い像を生成する。

共焦点図2

図2 位相差観察法

微分干渉観察法

照明光を直交する2つの偏光に分けて、わずかに光路をずらして標本を透過させる。標本に厚みがあると厚みの分だけ位相遅延が生じる。この時、2つの偏光の光路において試料の厚みの差があると、位相差が生じる。透過光を同じ偏光で重ね合わせると干渉し、位相差によって光強度が変化する。すなわち、厚さが変わっているところが明るく見えたり、影がついたりするように見える。これを利用して像を取得する。
図3に光学系を示す。光源からの光は偏光子によって直線偏光にされる。その後、特殊なプリズム(ノマルスキープリズム)によって、直交する2つの直線偏光に分けられる。これらの光線は、コンデンサーレンズによって僅かに光路のずれた2つの平行光線となり、標本を照明する。透過光は、対物レンズを介してプリズムを通り、一つの直線偏光に変換されるとともに、同軸上で重ね合わされる。位相差が生じた所では像に影が現れる。
一見、立体的な像のように見えるが、あくまで見え方によるもので、平面の観察結果であることに注意する。影の向きは平行光の向きに対応する。また、プラスチック製の容器は、複屈折性を有するため使えないことに注意する。

共焦点図3

図3 微分干渉観察法

偏光観察法

物質によっては、光を当てると、反射光もしくは透過光の偏光状態が変化するものがある。このような偏光性を見る方法が偏光観察法である。図4に光学系を示す。入射光は偏光子によって既知の直線偏光にされ、標本を照明する。透過光(もしくは反射光)は、検光子と呼ばれる透過偏光が90°傾けられた偏光子に導入される。標本によって偏光が変化していると、検光子を透過する光が現れる。これを測定することで、標本の偏光性を測定する。

共焦点図4

図4 偏光観察法

蛍光観察法

物質に光を当てると、異なる色の光を放出する「蛍光性」を示す場合がある。これを利用した観察法である。蛍光の励起光源には紫外光が用いられることが多い。光学系を図5に示す。光源には水銀ランプなどが用いられる。光源からの光は光フィルターを透過することで、紫外光のみが取り出される。紫外光によって標本を照明すると、蛍光を放出する。対物レンズで集められた光のうち、蛍光だけを取り出し、光検出する。このようにして像を観察する。

共焦点図5

図5 蛍光観察法

参考文献

福田京平 著「光学機器が一番わかる」技術評論社(2010)