蛍光とは試料に当てた光(励起光)エネルギーが試料中の蛍光物質に吸収された後、試料から放射される光である。

図1のエネルギーダイアグラムに示されているように、基底状態(S0)の蛍光物質が励起光のエネルギーを吸収(励起)した後、励起状態(S1)から基底状態S0に再び戻るときに蛍光としてエネルギーが放出される。

蛍光発生のエネルギーダイアグラム

図1:蛍光発生のエネルギーダイアグラム

蛍光の特徴

蛍光には以下の特徴がある。

  1. 蛍光波長は励起光波長よりも長い
  2. 蛍光強度は励起光強度よりも弱い
  3. 蛍光寿命がある

蛍光波長は励起光波長よりも長い

これはストークスシフトと呼ばれる。励起光のエネルギーが、蛍光の他に熱エネルギーとして消費されてしまうために起こる(図1参照)。エネルギーと波長には、E=hv (E:エネルギー、h:プランク定数、v:周波数) という関係式があり、エネルギーが小さくなると周波数が低く、つまり波長が長くなる。励起光エネルギーが熱として放出されたために、蛍光として放射されるエネルギーが減少し、結果、上記の関係式により励起光よりも長波長の蛍光が放射される。励起光と蛍光の波長(スペクトル)の一例を図2に示す。

励起光スペクトルと蛍光スペクトル

図2:励起光スペクトルと蛍光スペクトル

黒の実線は励起光のスペクトル、蛍光のスペクトルは黒の破線で示されている。赤の破線はダイクロイックミラーの適用波長域を示す。ダイクロイックミラーは特定の波長の光を透過または反射させる光学素子であり、蛍光顕微鏡で多く用いられている。緑の破線でしめされている波長域は、バンドパスフィルターのものである。バンドパスフィルターは特定の波長域の光のみを透過させる光学素子である。

蛍光強度は励起光強度よりも弱い

蛍光強度は励起光の約10-3~10-6倍と言われている。また、蛍光強度は量子収率(発光した光子数/吸収した光子数)や蛍光寿命と関係がある。蛍光物質の励起を続けると、蛍光強度はだんだん低下する(退色)。退色の原因は蛍光物質の分子の構造変化や酸素による酸化とされている。

蛍光寿命がある

蛍光寿命は励起光を遮断した後に、蛍光強度が1/eにまで低下するのに要する時間である。約10-4 s以下である。蛍光寿命は分子構造や分子の置かれている状態 (溶媒・pHなど) に依存する。蛍光共鳴エネルギー移動 (Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET) の効率とも密接な関係がある。寿命が10-4sよりも長い光はリン光と呼ばれ、蛍光と区別されている。