フェムト秒レーザーを用いたレーザー加工では、無クラックで、熱的影響を抑制した加工が可能なため、航空機産業や自動車部品産業で用いられている。フェムト秒レーザーを用いた加工は、従来の熱加工とは異なる物理過程が起こっている。

高出力の超短パルスレーザー(パワー密度が高く、照射時間が短いレーザー)を用いた加工では、①材料はレーザー光を瞬間的に吸収し、②表層に高温・高圧状態を起こし、③激しい電離やプラズマ化が起こり、爆発的に蒸発する。このとき、パルス幅が50ps以上のレーザーでは、光を当てた箇所(光吸収層)の原子の振動によって、まわりに熱が伝わってしまい、熱反応を起こしてしまう。フェムト秒レーザーを用いた場合は、熱反応が起こる前に、光吸収層が飛散する。この現象をアブレーションといい、この現象を利用した加工をアブレーション加工という。

Lonnie Lucas and Jim Zhang,”Femtosecond laser micromachining: A back-to-basics primer”, Industrial Laser Solutions (2012).では、「フェムト秒レーザーのパルスとはどのようなモノか?」ということから、加工用フェムト秒レーザーの基本的な構造、実際の加工例を紹介している。

フェムト秒レーザーとナノ秒レーザーを用いた加工

100umのスチール箔の穴あけSEM画像。 (左の画像) パルス幅3.3ns、フルーエンス 4.2 J/cm2のレーザーで加工時。 (右の画像) パルス幅 200 fs、フルーエンス 0.5 J/cm2 のTi:sapphire(780nm)で加工時。

Reference and Links