望遠鏡を大型にすることで、より明るい像が得られる。この結果、僅かな光しか届かない遠くの物体を観測できるようになる。遠くを見るということは過去を見ることになり、宇宙の起源を探ることにつながる。また、他の地球型惑星の探索も行われている。望遠鏡観測において最大の敵は大気となる。大気の汚れや揺らぎによって、望遠鏡に届く前に光が拡散されてしまうため、分解能の劣化やコントラストの低下が起こるためである。このため、大型望遠鏡では、設置場所が高性能な望遠鏡運用の一つの鍵となる。また、主鏡の大きさ(開口数)も重要な光学特性の一つとなる。ここでは最先端の研究において用いられている大型の望遠鏡について、「すばる望遠鏡」のような地表上に設置されているもの、「ハッブル望遠鏡」のような宇宙空間に設置されているものを紹介する。また、光の代わりに電波を捉える電波望遠鏡についても簡単に紹介する。

1. 設置場所と光学系

地表上:地表上で最も好適な環境が得られる場所の1つにハワイのマウナケア山山頂(標高: 4,205 m)がある。世界11カ国の研究機関がここに合計13基の望遠鏡を設置しており、マウナケア天文台群と呼ばれる。日本の国立天文台が運用する「すばる望遠鏡」もここに設置されている(図1)。しかし、このような好適地であっても大気の影響を完全に免れることはできない。「すばる望遠鏡」の理論分解能は、波長2 μmにおいて0.06秒(角度の単位、1秒=1/3600度)であるが、大気の影響を受けて0.5秒程度になってしまう。すばる望遠鏡では、補償光学系によって理論分解能に近い分解能が得られるような仕組みを搭載している。すばる望遠鏡の主鏡は直径8.2 mもの1枚板の鏡から構成されており、非常に明るい像が得られる。他にも、幾つもの鏡を組み合わせて1枚の主鏡とした望遠鏡もある。

大型図1

図1(左)すばる望遠鏡外観(右)すばる望遠鏡の構造[2]

宇宙空間:大気の影響を完全に無くすため、宇宙空間に設置したものは「宇宙望遠鏡」と呼ばれる。回折限界の分解能が得られる他、大気に吸収されてしまう紫外線、遠赤外線、X線などの電磁波を観測することができる。最も有名なものにNASAの運用する「ハッブル宇宙望遠鏡(HST: Hubble space telescope)」がある(図2)。大型化が難しく、HSTの主鏡は直径2.4 mである。最近では、次世代型の宇宙望遠鏡の開発が進められており、2018年に打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST: James Webb space telescope)」では、口径6.5 mの主鏡を備える(図2)。日本も宇宙望遠鏡を有した衛星「すざく」「あかり」「ひので」などを打ち上げている。

大型図2

図2 宇宙望遠鏡 (左)HST[3](右)JWST[5]

光学系:こういった大型望遠鏡の光学系にはリッチー・クレアチン式が用いられることが多い。概略図を図3に示す。主鏡と副鏡には、双曲面をベースにした高次の非球面凹面鏡と凸面鏡が用いられている。すばる望遠鏡やHSTなどもこの方式を採用している。

大型図3

図3 リッチー・クレアチン式望遠鏡

2. 電波望遠鏡

上述した望遠鏡とは異なり、宇宙から飛来する電波を観測する望遠鏡を「電波望遠鏡」という。可視光では観測できない星間ガスや、宇宙背景放射、暗黒物質、太陽などが観測される。周波数が1 ~ 300 GHzの範囲の電波を観測している望遠鏡が多い。
光と比べて圧倒的に波長が長く、回折効果の影響が大きい。このため、電波望遠鏡の口径は非常に大きくなる。最大のものでは、アレシボ天文台の口径305 mの電波望遠鏡がある(図4)。また、複数のパラボラアンテナを配置し、1枚の大型の主鏡に見立てた干渉型の電波望遠鏡もある(図4)。他にも、電波観測衛星と地球の電波望遠鏡を連携させて、非常に広い範囲で電波を干渉させる試みもなされている。

大型図4

図4 電波望遠鏡(左)アレシボ天文台[5](右)アルマ望遠鏡[6]

参考文献

[1] 福田京平 著「光学機器が一番わかる」技術評論社(2010)
[2] すばる望遠鏡
[3] NASA
[4] ジェイムス・ウェッブ宇宙望遠鏡
[5] アレシボ天文台
[6] アルマ望遠鏡