光学顕微鏡の基本構成

顕微鏡の基本構造

光学顕微鏡は,小さなものを拡大して見るための装置である.試料を拡大観察するための拡大光学系と,試料を証明するための照明光学系から構成されている.これら2つの光学系の設置の仕方によって,正立型顕微鏡,倒立型顕微鏡,実体顕微鏡と3つに区別される.
正立型顕微鏡は,試料の上に拡大光学系が配置される最も一般的な構成である.倒立型顕微鏡では,試料の下側に拡大光学系が構成されており,シャーレに培養した細胞などの観察が可能である.実体顕微鏡は2対の拡大光学系から成り,倍率は低いものの立体的に試料の観察ができる.

拡大光学系

拡大光学系は,試料を拡大観察するための光学系である.単式顕微鏡と複式顕微鏡があり,前者では対物レンズによる実像をCCDカメラにより直接観察する.後者では,対物レンズで拡大された試料の実像を,接眼レンズで更に拡大して観察を行う.図1に複式顕微鏡の原理図を示す.拡大倍率は,対物レンズと接眼レンズの倍率の積となる.

光学顕微鏡の基本構成_グラフィックス1

 

1.複式顕微鏡の拡大光学系原理.

対物レンズ

顕微鏡において,対物レンズは最も重要な光学要素である.倍率は一般的に×4×100から,高倍率のものでは×250

まである.画角が小さいため,中心部で発生する収差と像面湾曲の補正が重要となる.また,顕微鏡の分解能は対物レンズの開口数(NA: numerical aperture)によって決まる.

軸上色収差,像面湾曲の補正

球面収差は非常に小さいレベルまで補正されており,残る軸上色収差の補正が重要となる.その補正程度によって等級に分けられており,赤(653.6 nm)と青(486.1 nm)2色について補正されているものを「アクロマート」,紫(435.8 nm)まで補正されているものを「アポクロマート」と言う.また,その中間に位置するものを「セミアポクロマート」と言う.

近年,写真撮影や動画撮影など像の中心部だけでなく,周辺部において鮮明な像の取得をしたいという要請がある.周辺部まで湾曲が補正され,鮮明な像が得られる対物レンズを「プランレンズ」と言う.

分解能

顕微鏡にとって最も重要な性能の1つが分解能である.分解能とは2つ物体を見分けることができる最小距離のことを言う.レンズの収差は十分に抑えられているため,回折現象によって制限される.この時の分解能は「回折限界」と呼ばれ,以下の式で表される.

は回折限界の時の分解能を,は光の波長,は対物レンズの開口数である.光の波長が決まっている場合は,NAが最小分解能を決める.NAは以下の式で求められる.

ここで,は対物レンズと試料の間の媒質の屈折率,は試料へ集光する光の最大角度を表す(図2).屈折率の大きな媒質をレンズと試料の間に満たすことでNAを大きく取ることができる.水(n=1.33)やオイル(n=1.52)などが用いられる.

光学顕微鏡の基本構成_グラフィックス2

 

接眼レンズ

接眼レンズの仕組みは基本的にルーペと同じで,×10から×20程度の倍率のレンズが提供されている.接眼レンズの視野は,視野絞りの直径で決まる.視野絞りの直径をmmで表したものは「視野数」と呼ばれる.実際の視野は視野数を対物レンズの倍率で割ったものとなる.

照明光学系

ハロゲンランプなどを用いて,十分な光量の光で均一に試料を照明するための光学系である.

照明方式

照明方式には透過照明と反射照明の2つがある.透過照明では,試料に光を当てたときの透過光を観察する.主に医療や生物学などで用いられる.反射照明では,試料に光を当てた際の反射光を観察する.特に試料の上面から照明する方式を落射照明という.生体の蛍光観察や,半導体や金属面などの観察に用いられる.

照明光学系

照明光学系の構成は,クリティカル照明とケーラー照明の2つがある(図3).前者では,光源の像を試料上に形成する.明るい光学系が実現できるが,光源の形状がそのまま試料上に投影されるため,明るさにムラを生じさせる原因となる.このため,顕微鏡用途では殆ど用いられない.後者は,光源の像を開口絞り上に形成し,コンデンサーレンズを介して試料にあてる.光軸に平行な光で試料が照明されるため,均一な照明を実現できる.開口絞りの口径を変えると,対物レンズに入射する光の直径が変化する.これはすなわちNAの変化に相当する.このため,絞りを調整することで,明るさと分解能を同時に調整できる.また,視野絞りの大きさを変えることで,試料への光の照射範囲を調節できる.光量が多いとフレアなどが顕著に現れるため,余分な光はカットして用いることが望ましい.

 

光学顕微鏡の基本構成_グラフィックス3

 

3.照明光学系.(a)クリティカル照明.(b)ケーラー照明.

参考文献

福田京平 著「光学機器が一番わかる」技術評論社(2010).