液晶ディスプレイの仕組み

液晶とは

液体と結晶の中間状態を取る分子状態を指し,英語のLiquid crystalから名付けられた.液晶の分子構造は,「結晶」状態から温度を上げると,「スメティック結晶」,「ネマティック結晶」と呼ばれる状態を経て「液体」となる(図1).結晶状態では,分子は一方向を向いて整列しており,マクロには固体状態にある.スメティック液晶は,分子は一方向を向いているものの,平面内,すなわち層ごとには移動が可能な状態を指す.ネマティック結晶では,分子の配向はおおよそ揃っているが,ばらばらに位置し,流動性を持つ.そして,液体となると,分子の向き,位置がばらばらとなる.

液晶ディスプレイの仕組み_グラフィックス1

 

1.液晶の結晶状態.

画像表示の仕組み

液晶に電圧を印加すると分子の配向を変化させることができる.液晶ディスプレイでは,この分子配向の変化を利用して,光の透過をON/OFFすることで画像を表示させる.

2に示すように,液晶ディスプレイは,カラーフィルター,液晶パネル,バックライトから構成される.液晶パネルは多くの画素と呼ばれる区画から構成されており,各画素は独立に動作する.このため,画素ごとに液晶パネルを透過するバックライトの明るさが調整される.透過光はカラーフィルターを通過することで色付けされる.このようにしてフルカラーの画像を表示している.

液晶ディスプレイの仕組み_グラフィックス2

 

2.液晶ディスプレイの構成.

駆動方式

液晶ディスプレイでは,画素ごとに独立して透過光量の調節が行える.透過光量の調節は電圧印加によって行われ,その駆動方式によって,「単純マトリックス型」と「アクティブマトリックス型」に大きく分けられる(図3).

単純マトリックス型:導線を格子状にはりめぐらせ,縦横それぞれのタイミングをあわせて電気信号を送る.縦横の電流が交差すると,その場所の画素が点灯する仕組みとなっている.導線の組み合わせで目的の複数の画素を同時に点灯させる.横方向の電極は液晶セルの下側に,縦方向の電極は上側に設置されている.画素の量が多いものには適さない.また,目的の画素を点灯させる際に,その周囲の画素にも漏れ電圧による影響が出てしまい(クロストーク),画像を滲ませる.このため,電子手帳やワープロなどに用いられる.

アクティブマトリックス型:単純マトリックス駆動回路に加えて,画素毎にアクティブ素子を付けたものをアクティブマトリックス型と言う.一般的にはこのアクティブ素子に薄膜トランジスタ (TFT: thin film transistor)が用いられる.縦横の電極は同一平面上に形成されており,トランジスタは縦横の電極と液晶セルに接続される.縦横の電圧が印加されると,トランジスタが動作し,液晶セルに電圧を印加する.この時,縦横のアドレスが同時に選択されなければTFTは動作しない.画素の多いものでも駆動させることができる.テレビやPCのディスプレイに用いられる.

液晶ディスプレイの仕組み_グラフィックス3

 

3.駆動方式.(a)単純マトリックス型.(b)アクティブマトリックス型.

液晶パネルの駆動方式

ここでは,TVPCのディスプレイに用いられる,アクティブマトリックス型の駆動方式の液晶パネルに焦点を当てて話を進める.液晶分子の配置方法と,電圧による液晶分子の動かし方によって,TN方式,VA方式,IPS方式がある.どの方式も,画素毎に電圧を印加して透過光の明るさを調製するが,視野角と応答速度に違いがある.

TN方式:現在主流の方式である.仕組みを図4に示す.液晶は互いに直交する偏光板に挟まれている.ネマティック液晶分子は,配向膜と呼ばれる膜を用いて,上下面で90度ねじれるように整列されている.偏光子を透過した光は,液晶に沿って偏光方向を徐々に変えられながらもう一方の偏光子にたどり着く.この時,透過光の偏光は射出側の偏光子と平行なので,光は偏光子を透過する.ここで,液晶に電圧を印加すると,電界方向に液晶分子が配向する.この場合は,透過光の偏光状態は変化せず,射出側の偏光子と直交するため,光は透過しない.光が透過する状態を「明状態」,透過しない状態を「暗状態」と呼ぶ.ネマティック液晶が90度にねじれている状態を取ることから,「ねじれネマティック液晶方式 (TN: twisted nematic liquid crystal)」と呼ぶ.

メリットとして,駆動電圧とコストが低いことが挙げられる.一方で,視野角による色変化や輝度変化が大きい.これは,液晶分子の角度でバックライト光量を調節するため,見る角度によって液晶の角度が異なってしまうことに由来する.応答速度は,立ち上がり(黒→白)が遅く,立ち下がり(白→黒)が速い.

液晶ディスプレイの仕組み_グラフィックス4

 

4TN方式液晶パネル.

VA方式:仕組みを図5に示す.電圧を印加していない状態では,液晶分子は垂直に立つ.電圧を印加すると液晶分子は平行に並び,光を透過するようになる.液晶の状態から,「VA (vertical alignment)方式」と呼ばれる.電圧を印加しない状態では,光は完全に偏光子によって遮られるため,コントラストの高い画が得られる.視野角に関しては,TN方式と同様で見る角度によって透過光量が変化してしまう.しかし,VA方式では,液晶分子の傾く方向を特定の範囲で反転させることで,平均して見ると視野角による輝度の変化を抑えたマルチドメイン技術が適用されている.応答速度についてもTN方式と同じ傾向にある.

液晶ディスプレイの仕組み_グラフィックス5

5VA方式液晶パネル.

IPS方式:仕組みを図6に示す.電圧を印加していない状態では,液晶分子は水平面内に寝ている.水平方向に電圧を加えることで,水平面内で液晶分子が回転し,光を透過させる.名称は,in plane switching”に由来する.液晶分子の垂直方向の傾きが発生しないため,視野角による輝度や色の変化を抑制できる.一方で,コントラスト比と輝度,応答速度を高くしにくいという点がある.高品質な発色特性と視野角特性から,グラフィックプロや医療向けにシェアがある.

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6IPS方式液晶パネル.

バックライト

バックライトには液晶面に均一に光を供給することが求められる.光源には冷陰極蛍光管やLEDが用いられる.蛍光管を用いた方式では,複数の蛍光管を並べた「直下型方式」,端に蛍光管を配置して導光板で光を全体に与える「エッジライト方式」がある.最近はLED型のものが多くなってきた.LEDは小型かつ省エネルギー性に優れ,また,蛍光灯に比べて高速で明るさを変えることができる.このため,より高いコントラストを実現できる.面内に多数のLEDを配置する方式と,端部に配置して反射を用いる方式がある.

参考

  1. 福田京平 著「光学機器が一番わかる」技術評論社(2010).
  2. EIZO (https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/other/itmedia01_04/)
  3. SHARP (http://www.sharp.co.jp/products/lcd/tech/)