9者間の量子もつれ制御による量子誤り訂正実験に成功
東京大学大学院工学系研究科教授の古澤明氏の研究グループは、「9者間量子もつれ(9つの量子同士の相関)」を生成し、それを用いて量子コンピューティングの必須基本技術である量子誤り訂正実験に成功した。
量子誤り訂正は、エラーフリーな量子コンピュータ実現のために最も重要な基礎技術。多者間量子もつれ制御技術の確立によって、複数の量子同士の相関を制御でき、多量子間もつれを利用できるようになる。従来の量子誤り訂正実験では5者間量子もつれまでしか利用できず、それ以上の量子もつれを作って利用する技術の開発が望まれていた。
古澤氏は1998年、米カリフォルニア工科大学において、最も基本的な量子もつれ制御プロトコルである決定論的量子テレポーテーション実験に世界で初めて成功(1) 。その後、同氏らの東京大学の研究グループはこの結果を拡張し、2004年に3者間の量子もつれ制御である3者間量子テレポーテーションネットワーク実験にも成功。研究グループは今回、さらに量子もつれの規模を3倍に拡張して9者間量子もつれとし、それを利用した量子誤り訂正実験に成功した。これは世界初の9者間量子もつれ生成/利用の成功であり、量子コンピュータ実現への巨歩といえる。
量子コンピュータ
古澤氏によると、量子コンピュータは、「重ね合わせ状態」と「量子もつれ」を重要な特徴としている。重ね合わせ状態を使うことで、それに応じた並列計算ができる。n量子ビット使うと、2n通りを同時に重ね合わせることができ、23では8つの状態を重ね合わせることができる。単純な並列計算では、今のコンピュータと同じだが、量子コンピュータではもう一つの特徴、「量子もつれ」を使うことで論理ゲート数を劇的に減らすことができる。
「量子コンピュータは、量子もつれを生成してそれを使うことが本質となる。何量子ビットを同時に使って、量子もつれにできるかによっで性能が決まる」(古澤氏)。
今回は、9者間の量子もつれを生成し、実際にそれを使用して量子回路を動かした。
もつれは、8個のもつれた光(スクイーズド光)と入カビームとで作った。OPOで2個ずつのもつれた光を出し、ムスプリッタで入カビームと混ぜるが、ここに光チップを使いコンパクトで安定なシステムに集積しよxとする動きも見えていると言う。
量子誤り訂正実験
量子誤り訂正が発明される以前、1994年までは量子コンピュータは実現不可能と考えられていた。情報処理は、必ず誤り訂正をその中に含んでいる。誤りを訂正するには測定が必要になる。測定すると量子ビットは壊れる。「情報を壊すことなしに測定はできない、したがって量子コンピュータは実現不可能」というのが1994年までの考えた方だった。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2009/08/200908_wn04.pdf