製造工程の進歩によって決まる光学コーティング設計の進歩
光学コーティング設計用のソフトウエアツールは、コーティング設計者のツールー式の中でも不可欠なアイテムになった。最近は、光学性能の直接計算や最適化の域をはるかに越え、生産計画や製造工程シミュレーションにおいてさえもソフトウエアツールが使用されている。
光学コーティングの設計技術の開発は常にコーティング製造のニーズと能力に大いに応えてきた。コーティング設計は本質的に現場の技術であり、製造できないコーティングを設計することはあり得ない。進歩を阻んできた主な要因は、材料パラメータの測定精度ならびに蒸着プロセスと蒸着直後の材料そのものの安定性であった。
もちろん、いかなる設計ツールにおいても、第1に童要なことは良好で信頼できる性能モデルだ。1940 年代後半、フローリン・アベレス氏(Florin Abeles)は、彼の博士論文で、光学薄膜コーティングの設計と計算のための行列法を発表した。これは現在でもわれわれが利用しているものであり、60年以上にわたって繰返しその有用性が実証されてきた。今日では、市販のワープロ機能が作家にとって必需品であるように、市販のコーティング設計ソフトウエアはコーティング設計者にとって必需品だ。新しい設計ツールは、かなり使いやすくなったが、元になっている基礎理論は同じである。使いやすさ、正確な結果の迅速な送出、産業界のニーズの絶え間ない発展が、新たに改善されたツールに対してさらなる需要を生む。光学コーティング設計ソフトウエアは、静的製品とは言い難いものだ。
2000 年のドットコム・バブルの崩壊は多くの分野にとって悲劇的な大惨事であった。しかし、光学コーティングの分野では、これは経済的には惨事であったが、技術的なものではなかった。必要な薄膜部品に課せられた厳しい要求が、産業のほぽすべての局面に迅速かつ著しい進歩を促した。イオンアシスト蒸着やスパッタリングなどの強力な工程がコーティング製造を一変させた。水分によって起きる不安定性はもはや問題ではなくなった。かつてない精度と安定性を持つ数百層のコーティングが大量に施されるようになった。通信市場の縮小は手痛いものだったが、関係者からの信頼は段階関数的に増加し、設計ソフトウエアヘの新たな需要も生まれて、結果的には新しい技術をより広範囲な光学コーティング業界へと拡散させることになった。
実行シート
光学コーティングは、常に、耐環境性を強化し、正確な光学特性を保証すると期待されている。したがって、その本質を排除することは難しい。蒸着は、一般に光学部品に対して実施される最終工程であり、その段階で発生した不具合はいくつもの董大な結果をもたらす。製造プロセスの保証に関しては、常に強い関心が寄せられている。プロセス精度と要求される設計公差が鍵となる要因だ。材料の光学定数の再現性は強力なプロセスによって大幅に改善されたが、正確な層厚の確保は、いまだに制御系の全ての局面に直接関係している。複数のテストランは高価になる。こうした場合、最新の設計ソフトウエアによる支援が生きる。
(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/06/201006-5software.pdf