装置ことに必要な振動制御レベルを決める方法

ウオリン・ブース

実験装置は振動状態を調べることで振動絶縁の方法が明確になる。

誰かが「感じたことが現実だ」と言ったことを思いだす。しかし、実験装置がわずかな振動にも敏感なため真夜中に実験データを取得している科学者や技術者にこのことを言うと、彼らは別のことを言うかも知れない。実際には、認識できないほどの振動が発生し得るし、それが装置に影響を与えるのだ。そして、その原因を同定し、適切な装置を選択して、悪影響を最小にすることが重要になる。
 実験室にはレーザによる研究、高解像イメージング、半導体製造、バイオテクノロジなどの研究と製造に使用するためのさまざまな振動に敏感な装置が収容されている。生細胞の細胞核への電気プローブの挿入、ナノ構造のサブミクロン細線のエッチング、走在型電子顕微鏡(SEM)画像の取得などは、実験室環境の振動レベルを人間の認識閾値よりも十分低い状態に抑える必要がある。床振動は撮像部品、試料、レーザ、基板などに相互の変位を引き起こし、画像ぼけを発生し、歩留りを低下させ、間違った結果をもたらす。このような相対運動による影響の度合いは環境振動の周波数と実験の感度に依存する。
 周辺振動はどこにも存在し、その発生源は内部と外部の二つに分類される。一般に内部の発生源には、歩行、空調システムによる気流の発生、バランスの悪い換気扇、真空ポンプ、チラーなどが含まれる。これらの発生源は、通常、外部の発生源よりも高いレベルの振動を引き起こす。外部からの振動雑音は建物の構造自体と結合し、その発生源としてはエレベータ、換気装置のモータ、道路と鉄道の往来、建設工事、近隣の璽工業地帯などが挙げられる。空港も大きなレベルの低周波数振動雑音を発生する(図1)。
 一般に、建物内の実験室の位置も振動の発生源および建物構造と関係があり、雑音レベルに大きな影響を与える。多層階構造の上層にある実験室と装置は、建物の揺れと構造共振に曝される。エレベータの昇降は発進と停止およびドアの開閉時に低周波数振動を引き起こす。前述したように、これらの振動は人間の認識閾値よりも低いが、それでも実験や加工プロセスの結果に影響を与える。振動の発生源を理解し、その影響を定量化することは、すべての高精密システムを構築するときの第一歩になる。その定量化は実験室の振動の基本的実地調査が最も一般的な方法になる。

図1

図1 ここでは雑音と振動の一般的な発生源を示している。それらの周波数範囲は0.1 Hzの低いレベルから20kHz以上の高いレベルにまでわたる。

実地調査

一般に実施調査は床の垂直面と水平面の両方の多点測定から構成され、実験室の振動の周波数マグニチュードを測定する。その測定には防音の必要性を定量化する音響測定も含まれる。調査したデータからは、振動を許容レベルにまで減らすために必要となる振動制御装置の形式が決まる。当然のことだが、必要となる防振装置を適切に選択するには、正しい測定器と測定法を用いたデータの解析が重要になる。一般の実験室の実地調査は、サブマイクロgレベルまでの加速度を測定でき、1Hz以下から500Hz以上までの範囲のサブミクロンの振幅および共振の物理的振動を測定できる十分なダイナミックレンジをもつ超低雑音の変換器と解析器からなる計測器を用いて行われる。このような測定に広く用いられる計測器は動的信号解析装置、つまりサブマイクロgレベルの振幅を測定でき、その測定範囲が0.05~500Hzの2チャネル実時間FFT(高速フーリエ変換)超低雑音地霙加速度計と増幅器およびラップトップコンピュータから構成される。この装置は二つの童要な性能図、つまり1/3オクターブバンドとPSD(パワースペクトル密度)を作図できる。

1/3 オクターブバンドとPSD

環境(床)振動の判定基準は個々のシステムのデータと振動問題の解決前および解決後の設備の測定データに基づいて開発された。さらに、この判定基準は半導体産業を20 年近くにわたり指導した著名な振動コンサルタントが積極的に使用し、半導体産業のより狭い線幅への移行にともなって、その拡張と見直しが行われた。この判定基準はさまざまな作業と装置に許容できる振動レベルの指針となる一組の「1/3オクターブバンド速度スペクトル」を特定する。これらの判定曲線の主要な利点の一つは、振動を変位や加速度の単位ではなく、二乗平均平方根(rms)速度との関係で表示できることにある。さまざまな研究の結果、装置はいずれも異なる周波数に対して独自の変位応答を示すが、それらの測定点の多くは一定速度の曲線上にあることが分かった。さらに、同一形式の装置の性能に影響を及ぽす一定速度の閾値はかなり等しい傾向を示すことも分かった。生産環境と研究環境の床振動はいずれも、離散周波数の純音エネルギーとは違って、ランダム「広帯域」エネルギーに支配される場合が多いことも分かった。システムの共振は広帯域と純音の両方の振動から励起されるが、励起の度合いは異なる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/08/69c97abb363d50bdce9d144bf41b64c1.pdf