パワーメータとエネルギーメータの選択法
光のパワーおよびエネルギーは、センサの方式と利用可能な機器の詳細と、波長応答、ダイナミックレンジ、損傷閾値、最大繰返し率などの要求を理解して測定しなければならない。
パワーメータとエネルギーメータは光源の出力を測定する。これらの測定は蛍光のような低い光源からの発光と高エネルギーパルスレーザからの強い放射のいずれであっても、研究所、生産工場、現場などのさまざまな用途において必要になる。
パワーメータとエネルギーメータは個別に利用できるが、同一の機器、つまりパワー・エネルギーメータ(PEM)としてまとめて分類され、汎用性の制御盤や表示盤が取付けられ、さまざまな方式の光ンサが内蔵されている。光パワーと光エネルギーのどちらの測定デバイスになるかはセンサの方式から決まり、それぞれワットとジュールで表示される。パワーメータはそれ自体で連続波( CW)光源または反復パルス光源を測定し、標準的なセンサは熱電対アレイまたはフォトダイオードから構成される。標準的なエネルギーメータは単一または繰返しパルスレーザを測定し、センサは熱電素子、熱電対アレイまたはフォトダイオードとパルスを測定する特別に設計された回路から構成されている。
システム構成
いくつかのメーカーは制御部と読取部からなるデバイス(または制御盤)のメータ部とセンサ部(検出器またはヘッドと呼ばれる)を個別に扱い、それらを組合せて「測定システム」を構成している。それらを合せてメータと呼ぶメーカーもある。いずれにしても、センサはキャリブレーションの情報を蓄積し、制御盤はセンサからの出力電流を測定し、それを出力データの較正チャートと参照して測定値を算出する。
いくつかの制御盤は検出器とユーザ用インタフェースになり、表示が不要な場合はRS‐232またはUSB接続を通して、測定データをコンピュータに伝送する。測定データにはパワーの差、和、長さ、ログ値と1チャネル以上の減衰が一つになったグラフも含まれる。PEM制御盤の多くはデジタル方式だが、パワーのわずかな変動だけを測定する場合はアナログメータでも対応できる。
センサは注意を要する部品だ。市場にはフォトダイオード、熱電、圧電の3 種類のセンサがある。米ソーラボ社(Thorlabs)のプロジェクトマネージャを務めるクリスチャン・ジョンズ氏(Christian Johns)によると、フォトダイオードセンサは異なるピーク波長範囲の応答性をもつシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはヒ化インジウムガリウム(InGaAs)を用いるフォトダイオードで構成されており、減光(ND )フィルタを使用して、光検出器に入射したパワーの線形動作を保証している。フォトダイオードは材料が同じでも、それぞれの感度は異なる波長曲線を持つ。感度はA/Wで測定され、センサがいかに効率よく入射光を電流に変換するかの尺度になる。高速応答時間をもつセンサは波長に対して敏感であり、小型で低パワーのレーザに対して最高の動作を示す。
ジョンズ氏によると、熱電センサは入射光を熱エネルギーに変換してパワーまたはエネルギーを測定する。このセンサは186nm 近傍から10.6μmまでのスペクトル感度が平坦なため、多波長や多色の光の測定に適している。フォトダイオードも紫外(UV)から赤外(IR)までの波長を測定できるが、波長が異なると応答も異なるため、正しい測定値を得るためには、メータにレーザビームの波長を入力しなければならない。1800nm 以上の波長になると、熱電検出器が唯一の選択肢になる。熱電センサは高パワーレーザにも耐えられるが、レーザパワーの変動が非常に大きいと、平衡状態に達するには数秒
の時間が必要になる。熱電センサはフォトダイオードほど敏感ではなく、低いパワーレベルに対しては満足な動作が得られない。
圧電エネルギーセンサは光パルスのエネルギーを電圧スパイクに変換して光パルスのエネルギーを測定する。圧電センサは広い波長範囲で応答するが、熱電センサほどのスペクトル平坦性は得られない。また、パルス光源だけに動作させ、センサを用いてパルスを「見る」には、最小限の帯域幅が必要になる。
ジョンズ氏によると「今日の市場から入手できる多数のパワーメータとエネルギーメータは、これらの三つのセンサ方式が並立している(図1)。こうしたパワーセンサ付きの汎用制御盤の一つを使う場合には、適切な名称はパワーメータになるだろう。また、エネルギーセンサ付きのものを使うとしたら、それはエネルギーセンサになる」と語っている。
どのセンサを選ぶか?
どの方式のセンサがパワー測定あるいはエネルギー測定に使われ、その測定はどの範囲になるかを理解することは重要だ。米スペクトラム・デイテクタ社(Spectrum Detector) の社長を経験し、先ごろカナダのジェンテックエレクトロオプティクス社(Gentec-EO)により買収されたジェンテックエレクトロオプティクスUSA社の社長を務めるドン・ドーリー氏(Don Dooley)は、「熱電対アレイ検出器を用いるパワー測定は大面積の測定に適している。損傷閾値が高いため、ミリワット~キロワットのレベルを測定できる。半導体のフォトダイオード検出器は小面積の測定に適している。感度が高いため、ピコワットからミリワットのパワーを測定できる」と語っている。
これらの3種類の検出器はいずれもエネルギーを測定できる。熱電対アレイ検出器はミリ秒領域の単ーパルス測定とパルス当たり数Jの高エネルギービームの測定に適している。焦電検出器は短いパルス(fs~ms) と広いエネルギ一範囲(50nJ~数J)に対して最良の動作を示す。フォトダイオード検出器は、低エネルギー(fJ~μJ)の短パルス(fs~μs) を測定することができる。ドーリー氏は「重要な仕様の性能範囲は各モデルのプローブと機器に依存して大幅に異なる。事前に製品の専門家に相談することは良いことだ」と語っている。英レーザメット社(Lasermet)のマネージング・デイレクタを務めるポール・トーザー氏(Paul Tozer) によると、フォトダイオード検出器は光を均ーかつ正確に測定するために積分球を備えている場合がある。レーザメット社の積分球付きフォトダイオードヘッドは最低lμWまでの小さな光パワーを容易に測定でき、ビームを照射する小型ヘッドをフォトダイオード上に直接置くと、約1nWまでの測定が可能になる(図2) 。標準的な熱電ヘッドは1mWまでを測定できる。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/01/66dc73d4c899ca7392f7f78f146efb3f.pdf