固体照明の明るい未来を約束する白色LED
発光ダイオードは一般照明用の高効率/低コストランプとしての未来を約束されているが、性能向上とコスト低減の実現には難しい課題が残されている。
すでに白色光の発光ダイオード(LED)はポケットに入るフラッシュライトから郊外の芝生の太陽電池で充電する常夜灯までの標準製品になった。米国エネルギー省(DOE)のエネルギー効率・再生可能エネルギー局は、エネルギー効率が今日の蛍光灯以上に改善され電力消費も減少するため、白色LEDを一般照明用の「偉大な期待の星」として歓迎している。その進歩は明らかで、入力パワーのワット当たりルーメン出力を尺度にした効率は着実に改善され、小売店では家庭用固体照明の最初の製品として陳列されている。しかし、固体照明が家庭や事業所で広く使われるには大変な障害が待ち受けている。白色LEDのコストは経済的にもうなずけるまで低下する必要がある。カラーバランスは多くの用途に対して改善されなければならない。難しい技術上の課題も残されているが、とくに駆動電流を高くした際の効率の劣化を解決する必要がある。
白色LEDはなぜ白いのか?
「白色LED」は間違った用語のようにも思われるが、それはLEDの発光が半導体中の電子と正孔との再結合から起こり、そこでは価電子バンドと伝導バンドとのギャップに等しいエネルギーの光子が放出されることによる。実際のところ、このギャップは数十ナノメートル(nm)の広がりをもつため、人間の目には、その発光は白色ではなく着色したように見える。
LEDの発光を白色として見るには二つの方法がある。簡単な方法は短波長のLEDを使用して一つ以上の蛍光体を励起し、より長い波長を発光させ、それらの出力を混合する(図1a)。もう一つの方法は異なる可視波長をもつ複数のLEDを使用し、それらの発光を混合する(図1b)。いずれの方法にも利点と欠点がある。
蛍光体による方式は単一エミッタを用いるため、コストが低く構造も簡単になる。青色の窒化インジウムガリウム(InGaN)エミッタと黄色の単一蛍光体を組合せると、約6000Kの高い色温度をもつ白っぽい光が生成される。赤い蛍光体を加えると、カラーバランスは色温度の低い状態(約3000K)に移行し、屋内照明用として好まれる。しかしながら、このような蛍光体による光の下方変換はエネルギー効率が低下し、青色から赤色への変換は、黄色の蛍光体だけの場合に比べると、より多くのエネルギーが必要になる。
可視発光スペクトルの異なる3~4種類のLEDを用いる方式は、蛍光体励起でのエネルギー損失がないため、高いエネルギー効率が約束される。それぞれのLEDの波長を注意深く選択し、それらの相対的なエネルギーパワーレベルを調整すると、良好なカラーバランスが得られ、ユーザの好みに合せたバランスの調整も可能になる。しかし複数のLEDを使用するため、部品点数とコストが増加する。また、緑色LEDは緑色半導体レーザの場合と同様に、一緒に使用する青色および赤色エミッタの性能との整合性が得られない。今までのところ、青色LEDと黄色蛍光体との組合せがフラッシュライトおよび屋外常夜灯として成功を収めたが、それはその用途にとっての十分な白色性、エネルギー効率および低コストが実現されているからだ。これらの用件は街路灯にも通用するため、街路灯用途でも白色LED の利用が拡大している。最近、米国ミシガン州アナーバーでは6500Kの色温度をもつLEDランプが商業地区に設骰された。屋内照明の場合の色温度は多くのエンドユーザにとって大きな問題であり、白熱灯の照明から蛍光灯の照明への移行を遅らせている。米レンセラー工科大学のフレッド・シューベルト氏(Fred Schubert)は「これは固体照明に固有の、主張や感情に支配されやすい問題だ」と語っている。白熱電球の3000Kの色温度による照明が良いと主張する人もいるが、より高い色温度を好む人もいる。シューベルト氏は多くの人が白熱電球の赤みの多い光を単純に好んでいるのではないかと考えている。彼によると、色のリトマス試験紙としてしばしば使われる太陽光の色温度は、正午では約6000Kだが、夕暮れになると低下して赤みの多い色になる。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/01/ca8d7ddf15f42d4a95d7c7d71fad51ba.pdf