太陽電池の検査を高速化するフォトルミネセンス撮像法
高速度と高分解能を組合せたシリコンフォトルミネセンス撮像法は、シリコン試料を迅速に評価できるため、太陽電池生産のインライン監視への採用が始まろうとしている。
レーザを用いるフォトルミネセンス(PL)撮像法は、ホストとデバイスの基本的性質が明らかになるため、シリコン(Si)試料の特性を迅速に評価することができる。この方法はSiブリック、加工前のウエハ、部分加工されたウエハおよび加工済みセルのメガピクセルのルミネセンス画像を標準では数秒、場合によっては1秒以下の時間で取得できる。このようなルミネセンス画像の定量的測定法は最近の数年間に開発され、Si太陽電池の生産工程のインライン監視への興味深い応用が始まろうとしている。
太陽光発電(PV)技術は大規模産業へと成長し、2009年の年間売上高は400億ドル以上に達したと推定され、今後数年は指数関数的な成長を続けると期待されている。PV生産能力の大部分はウエハを用いる結晶Si太陽電池が占有し、2008年のPV産業はSi原料の68%を消費し、Siの最大の顧客になっている。いわゆるグリッドパリティ(代替の発電手段のコストがグリッド電力と同等、もしくは低くなる点)は多くの国で射程内に入っているが、必要とされるコスト削減を実現するには、生産の効率と歩留りの一層の改善が求められている。
高い生産歩留りをさらに低いコストで実現するには、すべての試料のライン速度での高度なプロセス監視が必要になり、そこではPVバリューチェーンのさまざまな部分の特定された電子および素子パラメータを高い横方向分解能で検査できなければならない。PV生産の場合、検査するウエハのスループットは最高で毎時3600枚に達する。既存の測定技術の多くは、それよりもはるかに少ない検査スループットのマイクロエレクトロニクス分野に向けて開発されており、こうした要求を満たすことはできない。つまり、既存技術では速度が低過ぎる、もしくは十分な空間情報を提供することができない。
ここ数年の間に、Siのブリック、ウエハおよび太陽電池用のPL撮像法が開発された。マイクロ波光伝導減衰(μ‐PCD)マッピングなどの測定法に比べると、PL撮像法は非常に優れた速度と空間分解能が得られ、生産のプロセス監視に最適の手段になる。オーストラリアのニューサウスウエールズ大学(UNSW)の研究グループが開発して特許を取得したPL撮像法は、PL画像を1秒以下の取得時間で測定できる(1)。そのわずか数年後に、世界中の研究機関とSiウエハおよび太陽電池のメーカーは、UNSWのスピンオフ企業であるBTイメージング社(BT Imaging)が市販したPL撮像装置の使用を開始した。
動作法
Si試料のPL撮像の場合は、試料の全表面、つまり標準の試料では156×156mmの面積を均一に照明する。この外部からの光励起によって誘起されるルミネセンス放出は赤外線(IR)カメラを使用して捕捉される。言い換えれば、試料のルミネセンス写真が取得される(図1)。PL撮像法では励起と検出も光信号に基づくため非接触法となり、Siのブリックやウエハを含めたさまざまな試料に適用できる。測定されるルミネセンスは試料内部からの自然放出のため、そのPL強度は試料内部バルクの電子的性質を評価することになる。したがって、PL撮像法はウエハと太陽電池のX線撮像法に類似している。
PL撮像法による測定は、a)少なくとも156×156mmの面積に対して100mW/cm2の連続した光パワーが必要になる、b)広い面積の均一照明が必要になる、c)SiはPL量子効率が低いことなどが挑戦課題になる。例えば、切断後のウエハの測定については後述するが、試料に入射した一つの光子から放出されるルミネセンス光子数は、10−8になる。PL撮像法の光源は高パワー近赤外ファイバ結合半導体レーザが使われる。この光源は単色性に優れた50W以上の連続波全体パワーが得られ、コリメーションも容易なため、光学的フィルタリングを行うと、弱いルミネセンス信号と数桁も強い反射励起光とを分離できる。また、特注のビーム成形光学系を使用すると、大面積の均一照明光源へのビーム変換も可能になる。さらに、コスト効果に優れているため、PV生産のインラインPL撮像用として最適の光源になる。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/02/fd98cd182cd69818aa347beaa81bd79d.pdf