SWIR 3Dイメージングを可能にするガイガーモード焦点面アレイ
ガイガーモードアバランシェフォトダイオード(APD)アレイとCMOS読取り集積回路(ROIC)を適切に組合せて、3D撮像ライダシステム用の理想的なセンサ部品としての焦点面アレイ(FPA)が開発された。このFPAは短波長赤外(SWIR)波長において単一光子感度が得られる。
イメージングの分野で起きた最近の最も劇的な変化の一つは3次元(3D)画像の利用が増大したことであろう。3D画像ディスプレイは医療装置や産業用途にとって必須の手段になっているが、映画産業においても当たり前のものになり、家庭用ゲーム機では爆発的な成長を記録している。このような3D画像ディスプレイの急増は3D画像の取得法が著しく進歩して実現された。今までの3D画像の記録はさまざまな方法(異なる角度から取得したシーンの2D画像を用いる立体写真など)を用いて行われてきたが、最も効果的な3D画像の取得法は光検出と測距(ライダ)による方法であろう。ライダ技術は、まず、短い光パルスをシーンに照射し、シーン中の物体から反射するパルスの飛行時間を精密に測定して、距離の正確な情報を取得する。この情報には自然の反射光を用いて記録する通常の画像では得られない第3空間次元のデータが含まれる。次に、3Dカメラを構成し、撮像焦点面アレイの全画素のそれぞれにライダ技術を適用する(図1)。
多数の撮像用途(とくに防衛に関係する応用)に対して、光スペクトルのSWIR領域でのライダ撮像は非常に適した手法になる。つまり、この波長は高性能の短パルスレーザ光源(1.06μmのNd:YAGレーザと1.55μmのエルビウムドープファイバレーザ)が利用できる、これらの光源は広く使われている暗視ゴーグルでは見えないため秘匿性を確保できる、これらの波長は大気を低損失で伝搬する、1.4μm以上の波長は短い波長よりも相対的にアイセーフになる、などの特徴が得られる。
単一光子ライダ
光学イメージャの究極の感度はそれぞれの撮像画素が単一光子だけを効率よく取得するときに得られる。3Dライダ撮像の距離精度は飛行時間の測定精度から決まるため、その単一光子検出は高速かつ時間的に正確なことが必須になる。
SWIR波長での単一光子検出を優れた時間精度で可能にする検出器技術の一つは、ヒ化リン化インジウムガリウム(InGaAsP)材料系に基づくAPDだ。このデバイスをアバランシェ破壊電圧以上でバイアスすると、単一光子だけの吸収が巨視的アバランシェ電流パルスを生成し、後段の電子回路によるパルス検出が容易になる。APDを適切に設計すると、このモードはガイガーモードと呼ばれる動作を示し、高効率で正確な単一光子検出が可能になる。また、これらの検出器は高い画素密度をもつ大型フォーマットアレイへ容易に集積できる。われわれはガイガーモードAPD(GmAPD)検出器アレイとCMOS ROICを適切に組合せて、SWIR波長において単一光子感度が得られる3D撮像ライダシステム用の理想的なセンサ部品であるGmAPD焦点アレイ(GmAPD FPA)を開発した。
これらのGmAPD FPAは、従来のシステム、つまり信頼性のある検出には画素当たり少なくとも数十光子、場合によっては数百光子の戻りパルスが必要になる検出器を用いるシステムに比べると、はるかに低いパルスエネルギーを検出できる。このようなGmAPDの性能からはシステムの寸法、重量および電力消費を大幅に低減する利点が生まれる。また、米MITリンカーン研究所(MIT Lincoln Laboratory)の先駆的研究のような新しい機会も生まれる。
これらのGmAPD FPAを用いるカメラには、単一検出器を機械的に走査して3D画像のデータ群を取得する空中マッピングなどの既存の高性能3D撮像の応用を不要にする可能性がある。現在の単一検出器走査はデータの取得速度や地上の点密度などの重要な計量尺度に制約がある。単一走査検出器からイメージャ当たり数百万の画素をもつ大面積(2D)フォーマットへ移行したIRイメージング技術と同様に、3Dイメージング技術は間違いなく発展していくであろう。
GmAPD FPAの設計と性能
われわれのFPAの心臓部は、CMOSROICに接合したGmAPD検出器アレイフリップチップと、検出器アレイの背面に取付けて高い光学充填率を確保したリン化ガリウム(GaP)マイクロレンズアレイからなる(図2)。ROICのすべての画素に埋め込まれた擬似ランダム計数器からは、反射したライダパルスを検出したときの飛行時間の痕跡データが画素レベルで得られる。単一光子パルスの弱い戻りは各画素の能動素子をGmAPDにすることで効率よく検出される。約3μsの非常に速い読取り時間をもつROICは、大量の画像フレームの高速取得を可能にする。FPAを装備してライダパルスの戻りを検出する2μsオーダの標準的な「測距ゲート」を使うと、これらのセンサは200kHzに近いフレーム速度を達成できる。集積された熱電冷却器(TEC)はチップの動作温度を周囲よりも低い約50℃に維持し、ハーメチック封止の実装が過酷環境における安定な動作を可能にする。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/05/LFWJ1105-3f3.pdf