MEMSチューナブルVCSELで可能になった760kHzのOCT走査

マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)チューナブル垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)は、高掃引速度のためのミクロンスケールの共振器長と軽いミラー質量、モードホップなしのシングルモード動作、長いイメージング範囲に適した長い動的コヒーレンス長などによって、波長走査型光干渉断層撮像計(OCT)用途に理想的であろう。しかし、MEMSチューナブルVCSELはウエハスケールでの製造と検査、相応したコスト低減も可能にするが、出力と波長可変性に限界があり、1550nmで65nmの波長可変範囲がこれまでの最良の性能である。
 幸いにも、米プレビウム・リサーチ社、米ソーラボ社、米アドバンスト・オプティカル・マイクロシステム社および米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、分数波長可変範囲(Δλ/λ)における2倍の改良に相当する110nmの波長可変範囲をもつ1310nmシングルモードMEMSチューナブルVCSELの開発によって、これまでのシナリオを好転させた。この新しい広範囲波長可変光源は記録的な760kHzの軸方向走査速度を達成し、光増幅を使って40mWの平均出力を実現した。これによって波長走査型OCTの新しいアプリケーションへの道が開かれるであろう。

MEMSチューニング

波長可変VCSELは、利得幅が広いリン化インジウム(InP)ベース量子井戸活性領域をヒ化ガリウム(GaAs)ベース酸化ミラーに接着することによって構成されている。この構造のトップに懸架され、エアギャップで分離された静電駆動誘電体ミラーは、デバイスが980nmのレーザ光源で励起された時に、1310nmの可変波長放射が発生するように動作する(図1)。

図1

図1  量子井戸構造に接着されたミラーは、この構造の上部に配置された静電駆動誘電体ミラーの支援で波長可変な1310nmを放射する垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)の心臓部を構成する(a)。光干渉断層撮像計(OCT)システムのチューナブル光源としての波長可VCSELは760kHzの軸方向走査速度による指腹の撮像を可能にする(b)。ここで、深度方向に125μm間隔で取得された一連の4枚の512×512画素の正面指腹画像は波長可変VCSELによって可能になった走査型OCTの性能を示している。 [資料提供:プレビウム・リサーチ(a)とソーラボ(b)]

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/1109wn01.pdf