すべてが等しく造られているわけではないソーラシミュレータ

ゲイル・オーヴァートン

光起電力太陽電池の屋内環境での試験に必要な太陽放射照度とスペクトル出力を模擬する機器、いわゆるソーラシミュレータはすべてが等しく造られているわけではない。費用と性能のトレードオフを最適化するには、クラスA、B、Cのいずれか、定常状態かパルス状態かなどの仕様を注意深く再検討する必要がある。

ソーラシミュレータは太陽光起電力電池(PV)セルの光‐電気変換効率の正確な測定を可能にする。この太陽の放射照度とスペクトル出力を定量的に模擬する機器を使えば、PVメーカーは、照射のためにパネルを予測不可能な屋外環境に放置することなく、変換効率データを求めることができる(図1)。ソーラシミュレータは、その多くがキセノン光源を使用するタイプであり、多数のメーカーから入手可能である。それらはクラスA、B、Cのいずれか、定常状態かパルス状態か、いかによく太陽スペクトルと合致しているか、長時間にわたって照明均一性を維持するか、などの因子によって区別される。太陽電池セルとモジュールを定期的に試験するメーカーは、費用と性能のトレードオフを最適化するために、市販されている様々なソーラシミュレータの各仕様を注意深く調べる必要がある。

図1

図1 ソーラシミュレータは多種多様な形状とサイズがあり、その能力も様々である。1台の大面積シミュレータ(a)が商用シリコンPVモジュールをテストしている。モジュールの裏側には技術者に向かう電圧および電流ワイヤが取り付けられていて、各端の 2つの金属片がフラッシュ中の強度変動を補正する(資料提供:スパイア・ソーラ社)。多くの商用ソーラシミュレータ( b)はサイズがかなり小さい(資料提供:ニューポート・オリーエル・インスツルメンツ社)。

標準規格

太陽電池セルとモジュールの性能基準(変換効率、量子効率、電流電圧特性など)が数百のメーカー間で定量的に一致するように、ソーラシミュレータの標準規格が開発された。米国材料試験協会(ASTM; www.astm.org)、日本規格協会(JSA; www.jsa.or.jp)など、いくつかの国内標準化団体が存在するが、ソーラシミュレータの性能要件、仕様、試験プロトコルなどを詳しく列挙している主要な標準組織は国際電気標準会議(IEC; www.iec.ch)である。特定の標準─IEC60904-9 ed2.0、ASTME927-10、JIS C8912─は、ソーラシミュレータを 3桁の「クラスXYZ」で分類する。Xはスペクトル合致度(各波長範囲に対して指定された、必要とされる全放射照度のパーセンテージに対する実際のパーセンテージの比)を定義し、Yは放射照度の空間不均一性を定義し、Zは放射照度の時間不安定性を定義する(表1)。すなわち、クラスABBソーラシミュレータはクラスAのスペクトル合致度、クラスBの空間不均一性、クラスBの時間不安定性の仕様になる。
 スペクトルマッチングに対して、各標準は、太陽光のスペクトル出力を最良に模擬するために、300~1100nmの波長範囲を100nmの波長間隔に区切って、そこに入らなければならないソーラシミュレータの全放射照度のパーセンテージを指定している(図2)。この波長範囲は、初期のPVセルの大半が単結晶シリコンでできていたことを考慮して、シリコンで典型的な吸収域をカバーするように歴史的に選択された。しかし、この範囲では、最高で1800nmを吸収するIII-V半導体材料を使用した集中型太陽光発電(CPV)システムやいくつかの新たな薄膜PV製品の性能を扱うことはできない。
 国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のセル・モジュール性能チームのマネージャー、キース・エメリー氏(Keith Emery)は、「たとえASTMとIECが太陽電池とモジュールメーカーに対してそれぞれ最小限のクラスBBBとクラスABCソーラシミュレータを使って試験するように要請したとしても、メーカーは賢明にもクラスAAAソーラシミュレータを選択するであろう。また、ある場合に比較的よい選択であったとしても、太陽電池製造工程の最大限の最適化を選択するであろう」と語っている。世界中の太陽電池メーカーに対する「NREL認定」試験の実施を31年間続けてきた、このチームのベテランであるエメリー氏は、シミュレータ結果と実際のPVモジュール出力との誤差がたとえ1%であったとしてもPVメーカーにとっては非常に大きな問題だと説明する。「セルとモジュールは一般にシミュレータのデータに従って値引きされ、そして価格設定されるので、エネルギー変換効率の誤差はメーカーの最終収益を直接左右する」とエメリー氏は言う。「そして、航空宇宙産業はAAAシミュレータよりもさらによい条件が得られる一層遠方へと飛び出すであろう。あなたがたも想像されるように、大気や環境効果を超えた宇宙へと飛び出す太陽電池は可能な限り小型・軽量に設計されなければならない。宇宙でのモジュールは大きすぎても小さすぎてもよくない」と付け加えた。

図2

図2 コンピュータ制御のソーラシミュレータプログラムは、そのシミュレータのスペクトル出力が太陽からの実際の出力に基づく「基準」にいかによく整合するかを示すスペクトル整合データを収集する。このシミュレータの場合、波長バンドの各スペクトルマッチングはASTM E927クラス A基 準を超える+7.4%から-12.7%の範囲であった。(資料提供:フォト・エミッション・テック社)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/11/1111applied.pdf