爆発性蒸気を検出するランチボックスサイズの蛍光センサ

芳香族ニトロ化合物である爆発性トリニトロトルエン(TNT)などの軍事的脅威となる物質を検出するには、ppb の蒸気検出感度が必要であり、そして脅威にさらされた位置まで容易に運ぶことができる小形機器を使って選択的に検出する必要がある。英国のセントアンドリュース大学、エジンバラ大学、ストラスクライド大学の研究チームは、化学的な感度を持つ共役(半導体)高分子ベースのマイクロシステムを使って、10ppb濃度のジニトロベンゼン(DNB)蒸気(TNT 模擬芳香族ニトロ化合物)を検出することができるランチボックスサイズの爆発性蒸気センサを開発した(1)。

蛍光クエンチング

典型的な蛍光ベース検知技術は、発光性材料の蛍光がテスト下の蒸気によってクエンチング(消光)されることによる発光強度の低下を測定する。すなわち、電子過剰の共役高分子を光励起すると、続いて高分子よりも低いエネルギー分子軌道を占有する爆発性蒸気への電子移動が起こり、結果として高分子からの蛍光が消光され、発光強度が低下する。この消光作用により低下した光ルミネセンス、増幅された自然放出光(ASE)、レーザ発振などの測定は、いずれも励起強度、収集効率、迷光などの内部と外部の環境因子の影響を受けるため、研究チームは、高分子レーザ発振材料の光ルミネセンス寿命の変化を定量化することで蒸気分析物を測定する方法を選択した。
 光ルミネセンス寿命または時間分解蛍光は、標準的な時間相関単一光子計数(TCSPC)法を使って容易に測定できる。しかし、システムコストと物理的サイズを低減するために、商用のTCSPC機器を使わずに、CMOSベースシステムと窒化物発光ダイオード(LED)アレイの組み合わせによって蛍光を励起し、次いで、シリコン単一光子アバランシェダイオード(Si‐CMOS SPAD)でそれを検出した。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/02/201202_0012wn01.pdf