高出力UV レーザのパルスコントロールで新しい微細加工が可能に

ラジェシ・パテル、ジェイムス・ボバツェク、アシウィニ・タマンカ

民生用モバイル電子機器の製造で、レーザによる加工精度がますます厳しくなっている。これに応えるには、パルス幅制御、パルス分割、パルス整形をソフトウエアで調整できるハイブリッド超紫外(UV)ファイバレーザが必要になる。

スマートフォンやタブレットなどの民生用モバイル電子機器は、世界の製造業で最大規模にして最速の成長分野の1つとなっている(1)。半導体チップ、マイクロエレクトロニクス・パッケージ、タッチスクリーン・ディスプレイ、プリント基板などの重要コンポーネント向けに、最先端の高精度レーザ製造工程を構築するには、継続的な技術開発が必要になる。現行世代のダイオード励起固体( DPSS )レーザは多くの場合、量販市場向けのコストで高度な製品を生み出す新技術を可能にする役割を担ってきた。しかし、モバイル機器
の性能が一段と高度になり、複雑になっていくにつれて、製造工程も進化していかなければならない。
 この製造分野でレーザが対処できる多様な材料と工程を考えると、高品質、高速のマイクロマシニング(微細加工)でレーザ特性に大きな進歩を求めることが難しくなっている。そのような工程は、多くのレーザパラメータの影響を強く受ける。例えば、波長、パルス幅、平均パワー、ビーム品質(M2)、パルス繰り返し周波数(PRF)、パルス間のエネルギー安定性などだ。それに、パルス整形、パルス分割が登場するに及んで、最適化工程仕様の構成リストが長くなっている。
 短波長、短パルス、低M2 のレーザは、強く集束されたスポット、熱影響域(HAZ)の最小化によりマイクロマシニング工程で優位性が出せている。一般に、波長が短波長になるほど吸収が強くなる材料が多いので、有機物、半導体、セラミック、金属などでそのようなレーザは、機械加工に幅広く適用できることになる。短パルスによる高いエネルギー吸収、的確な照射レベルは、材料の気化を速め、HAZや炭化を減らす。小さく、集束されたビームスポットは、より微細な加工を可能にし、加工精度も向上する。ハイパワー、高PRF、パルス整形、パルス分割、これらは全て微細加工のスループット向上に寄与する。また、一貫したパルス間の高い安定性により工程の再現性が保証され、加工の歩留まり向上に役立つ。
 UV Qスイッチ(Q-SW) DPSS レーザは製造の要求に応えてきたが、さらなる高速化達成では限界がある。加工速度を上げる通常のアプローチは、他の加工パラメータを一定にして、レーザのPRF を上げることだが、一般的なQ-SW DPSSレーザでは、事実上、これが達成不可能になっている。このようなレーザでは、繰り返し周波数(PRF)が増すと平均パワーやパルスエネルギー落ち方はかなり急速になる。また、レーザのパルス幅やパルス間のエネルギー変動が著しく大きくなる傾向もある。
 レーザのパラメータのこのような変動は微細加工のスピード、形状、加工精度に影響を与えるので、単にPRFを高めるだけでは、スループットを上げながら加工結果を維持するには十分でないことがある。こうした限界を克服するために実際に求められているソリューションは、より高いPRFで高い平均パワーを維持するだけでは十分ではなく、短パルスを出し続けなければならない。低いパルス間のエネルギー変動、パルス整形、パルス分割機能があり、高いスループットときれいなアブレーション結果の両方とも達成しなければならない。
 そのようなレーザ技術要求に応えるために、UVハイブリッド・ファイバレーザ、高いPRFとハイパワーを兼ね備えるQuasar335-40が開発された。また、Quasar 335-40はパルスエネルギーとパルス幅を幅広く設定すためのTimeShiftと言う、ソフトウエアで調整できる技術を特徴としている。この技術によってプロセスエンジニアは、パルス整形、パルス分割、バーストモード動作などの技術によって時間領域でパルス強度波形を作り出すことができる。このレーザは、250kHz PRF、波長355nmで出力は40W以上。パルス幅のPRFへの依存性はなく、繰り返しレートが上がりスループットが向上してもレーザ出力の全ての特性を安定維持することができる。
 ハイパワーと高PRF を兼ね備え、独立に調整可能なパルス幅、パルス操作機能をもつことは、多様なマイクロエレクトロニクス材料の微細加工にはメリットがある。ここで、シリコン、ガラス、プリント基板(PCB)材料で得られた最初の成果を示しておこう。

半導体製造シリコンダイシング

マイクロエレクトロニクス製造では、何百、何千のIC、他のマイクロデバイスが1枚の半導体(シリコン)ウエハ上に作製され、最終的に分離、切断されて個々のチップになる。シリコンウエハのダイシングでは、精密ロータリーソーを使う従来のダイシングの代替として数年前からレーザダイシングが使われている。ウエハが薄くなり、レーザの信頼度が向上して効果が発揮できるようになるにつれて、ソーベースのダイシングに対するレーザの利点が飛躍的に強まってきた。
 さらに、現在の最先端機能が使えるようになったことで、マイクロマシニングの高スループットを維持しながら材料の熱負荷を制御することが容易になっている。これはシリコンダイシングでは特に重要である。シリコンウエハでは、熱の影響が切断したチップ端(これはダイの機械強度減少に影響)でのマイクロクラックにつながったり、電子デバイス自体の損傷につながる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/02/201307_0020feature01.pdf