除振テーブルは安定した光学セットアップをサポートする
多くの光学実験で重要となる除振テーブルにはアクティブ除振やパッシブ除振など数多くの形態があり、さらに圧縮空気や非圧縮空気などのバリエーションもある。
数々の実験光学セットアップの中心に除振テーブルがある。お馴染みのトップが金属のテーブルで、ねじ穴(多くは1in.中心)が正方配列されている。圧縮空気を使用して除振している場合、それに寄りかかると除振テーブルが安定を取り戻そうとしてシューと音を立てる。そのようなテーブルには、様々なサイズ、タイプ、厚さがあり、除振へのアプローチはパッシブもしくはアクティブがある。中には空気除振を行わないものもあり、それは空気供給は全く必要ない。
小型の除振テーブルの中には、比較的薄い鋼板あるいは御影石の上面を持つものもあるが、優れた実験安定性を必要とする光学エンジニアにとって最も使いやすいタイプのテーブルは上面が厚く、その内部は、鋼板の上面と底板との間に金属ハニカムが挟まれている。ハニカムは軽量であるが、同様に重要な点として、振動ダンプに役立つ。もう1つのアプローチ、これは圧縮空気と厚く硬い御影石のテーブルとの組合せとなっており、テーブルの大質量が安定性に寄与している。これにより、システムの固有振動数(共振周波数)を抑制している。
小型除振ワークステーションは、例えば、ハイパワー顕微鏡を操作し非常に安定した画像を必要とする人が使用する。もっと大きな除振テーブルは、産業および学術的な光学ラボの両方で広範に使用されているが、これらは超高速レーザ研究セットアップから、半導体チップ製造装置まで、至る所で不可欠となっている。また、多くの除振テーブルトップに正方配列されたねじ穴は使いやすいものであり、これによってエンジニアは実験室でのアイデアを直ちに活用して、そのアイデアが実際に価値あるものであるかどうかを検証することができる。
パッシブ除振は、スプリングやダンピング材料あるいは圧縮空気除振、またはその両方を利用して達成する。アクティブ除振(振動キャンセル)は、振動センサやボイスコイル(ある意味ではノイズキャンセルヘッドフォンの高精度版のように動作する)のような振動補償アクチュエータを装備している。
半導体向けの迅速なステージ設定
大きな御影石の上面にアクティブ除振機能を装備した例は、先頃TMC Ametek(ピーボディ、MA: TMCは、通常光学実験室で見られる様々なタイプの除振テーブルも製造している)が発表したStage-Base 450除振システム(図1)がある。同システムは、半導体工場のビルフロアの振動をコントロールするように設計されており、特に高精度電動x-yステージを搭載した半導体装置(例えば、コンピュータチップ製造用のリソグラフィ・ウエハステッパ、ディスプレイ製造用の同様の装置)向けの主要除振システムとすることが目的になっている。
今日のコンピュータチップの最小形状は14nmに達しており、このことの意味は、シリコンウエハにこれらのチップのパタンを作成するフォトリソグラフィ露光は、この量のごく一部に位置を合わせて変動がないようにしなければならないと言うことである。これは極端な例であるが、厳しいアライメントと他の移動ステージ要件は半導体産業を通じて豊富にある。したがって、除振はウエハ加工の高いスループットを維持するために不可欠である。
そうした装置は極めて効率のよい除振を必要とするが、移動ステージによって生ずる荷重の動きが極めて迅速に安定して装置のスループットが最大となることが、同様に強く求められている。静止した状態になるまでの時間を短縮するためにTMCは、同社のSTACISシステムにフィードフォワード制御を搭載したボイスコイルモータ技術を追加した。これは、アクティブな圧電振動キャンセルシステムをベースにしている。特許申請中のこのシステムは、TMCの前世代STACIS iX Stage-Baseの静置時間を4倍改善することができる。
同システムのアクティブ床振動キャンセルは、TMCのアクティブシステム製品マネージャー、ウェス・ウィグルスワース氏によると、0.6Hzから始まって、2Hzまで10対1の削減となる(そのような低周波振動は、除振システムの固有振動数に近くなりがちであるため、コントロールが難しい。同時に、ステージを素早く静止状態にするためには、そのような振動を十分に制御しなければならない)。
典型的な光学テーブル
光学エンジニアに典型的な除振テーブルについて聞くと、「4本の太い空気脚、下のあちこちにプラスチックの空気ホースがあり、多数の穴を持つステンレス鋼のテーブルトップがあり、加えて、側面が黒く塗られている」というような答が返ってくる。周知のイメージカラーを持つ製品ラインの1つは、米ソーラボ社のNexus製品ラインである(ニュートン、NJ)。
同社のマーケティングマネージャー、ブキ・ダーダ氏によると、これらのテーブルは「耐久性が高く、固い作業面を持ち、その上に光学部品をマウントして調整し、長期安定性が得られる」。除振テーブルは、厚さ8.3インチ(210㎜)または12.2インチ(310㎜)バージョンがあり、ダンピングは各テーブルサイズに最適化されている。
テーブルはオールスチール構造、高温安定性、広帯域ダンピング、精密加工マット仕上げであるとダーダ氏は説明している。スチールハニカムコアは、上面から底部表面まで広がり、全体の剛性を減ずるような中間構造は存在しない。テーブルは、シーリングカップ付またはなしで利用できる(リクエストにより、シーリングカップを個々のねじ穴の下に設置して、光学エンジニアのコーヒーなどの液体がテーブル内部に落ちるのを防ぐ)。
各テーブルはテストされて出荷される。テーブルには、それ自身のテストデータ証明書とコンプライアンス曲線(これは振動に対するテーブルの動応答を詳述している)がついている。これは、正確な、サイズ特定のデータを提供することを目的としている。
ダーダ氏によると、テーブルは、同社のアクティブ除振ワークステーションと組み合わせて、サブミクロンの分解能を必要とするイメージングアプリケーション用にモジュラ型、可動式のラボを形成することがある。様々なシェルフオプションおよびその他のアクセサリをイメージングシステム周辺に設置することができるので、サポートする装置は、分離された作業面に近接しているが、接触することはない(図2)。
多様なバージョン、多様な利用
ファシリティの中にはハイパフォーマンス除振テーブルを必要としているところもあれば、そうでないところもある。こうした点を考慮して米ニューポート社は、多様なニーズに応えるために3系列のテーブルを製造している。同社のトップモデルテーブル、SmartTableは、固定式のアイソレータ、あるい空気アイソレータを持つアクティブダンプ光学テーブルシステムで、ダンピングは様々な荷重・ロード分布状況に最適化されている、とニューポートの振動制御製品マーケティングマネージャー、シルビア・タン氏は説明している。このアプローチは、ブロードバンドダンピングよりも遙かに効果的であり、典型的な周波数範囲(例えば100Hz〜500Hz)の全ての共振をターゲットにしている。その空気圧アイソレータは、大型チャンバと層流ディスクを持っており、滑らかで高品質の除振性能を確実にしている。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/05/LFWS201505_photonics_products.pdf