爆発物遠隔検出用広帯域可変中赤外レーザ光源
ピコ秒ファイバをベースにしたプログラマブルレーザと可変MOPAを非線形周波数混合すると、広帯域可変レーザ光源が実現する。用途には、遠隔分子分光アプリケーション用フィンガープリント領域などがある。
爆発物や爆発物関連の成分の検出は、近年の国土安全保障やテロ対策で優先度が高くなっている。この分野では、新しい画期的な検出アプローチの開発と、既存技術の改善の両面で、研究が大きく拡大している。研究活動では、耐久性が高く、現場導入できる、スタンドオフ距離が一段と大きなシステムが、目標とされている。このようなシステムは、選択性能と感度を向上させることで実現される。
遠隔検出の目的は、直接的な接触の必要性を完全排除することだ。これによって、解析対象のモノ─例えば人や命のあるもの─を遠く離れた場所から検出できるようになる。これによって、潜在的な被害、障害を軽減することが可能になる。多くの技術が化学物質検出向けに検討されてきた、質量分光分析やクロマトグラフィがこれに含まれる。しかし、遠隔検出は試料への直接接触を避けながら効率を発揮する技術をベースにしている。
現在開発されている遠隔検出アプリケーションは、ハイパースペクトルイメージング、蛍光、ラマン散乱、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)、差分吸収ライダ(DIAL)などの光学技術に基づいている。こうした技術が有効であることは示されているが、限られた選択性、感度、アイセーフの欠如という制限要因がある。
これらの光学技術の中で、フィンガープリント領域(5〜15μm)の赤外(IR)分光は最も有望である。と言うのは、IR分光は多くの化学物質に対して強い、固有のシグネチャ(痕跡)を提供するからである。爆発物の最近の進歩により、フーリエ変換IR(FTIR)装置を中赤外ファイバプローブと組み合わせて用いることができるようになっている。しかし、信号対雑音比(SNR)がよくない。これはランプ光源を用いていることとファイバ損失が制限要因となり、ファイバプローブからサンプルまでの距離が最大で数センチメートルとなるからだ。サンプルの遠隔検出用には、ランプベースの光源から高い空間コヒレンスのレーザ光源への転換が必要になる。
中赤外レーザ光源:可能性のある解
中赤外レーザは、遠隔センシング、公害モニタリング、レーザベース防衛機器、麻薬/爆発物検出など、多様な分野のアプリケーションで開発されてきた。生体医療や薬品業界の他のアプリケーション、細胞や脂質検出、薬剤原料の判定などもこの技術を利用するようになっている。
光パラメトリック発振器(OPO)が、中赤外レーザ光源として使われているが、その可変性はまだ限定的であり、温度や角度などのチューニングが必要である。これによりそのデザインは、機械的振動を本質的に検知できるようになる。
量子カスケードレーザ(QCL)も可能性のある中赤外光源として登場してきている。QCLは、多重量子井戸半導体レーザをベースにしている。これは、サブバンド間遷移を利用して発光する。QCLの拡張開発により、室温で比較的光出力が出るようになっている。しかし、単一ユニットの可変性はまだ限界がある。その結果、広帯域可変QCLベースの光源の設計は、多数のシングルデバイスの組合せを必要としており、非常に複雑な光学的統合が必要になっている。
差周波発生から可変中赤外
広帯域可変中赤外ファイバベースの光源は、爆発物遠隔検出にとって理想的なソリューションとなる。その理由は、その波長範囲がほとんどのフィンガープリント領域をカバーするからである。これはファイバベースの技術の優位性と柔軟性によるものである。品質分光計測、特に遠隔検出計測では、中赤外光源は特異的性質を持たなければならない。高いレーザSNR、高い選択性と感度を得るための狭線幅、光源の低雑音、低い振幅変調、波長ジッタを最小化するために低い温度および電流可変レート、高速応答と高いデータアクイジションレートのために素早い波長可変性などである。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/07/LFWJ1507_ft3.pdf