パルス幅90psを実現した短パルスドライバボード
島津製作所は、BEAM IMPACTシリーズ、外部共振器型短パルス半導体レーザ HK-5630を製品化している。同社は、ドライバボード開発会社トリマティスと共同で、<100psを実現する製品を市場に投入する。両社は、ピコ秒レーザの外に、青色短パルスレーザなども共同開発していく。
パルス幅90psはノウハウのかたまり
超短パルスレーザと言えば、モード同期方式のフェムト秒レーザがあるが、島津製作所とトリマティスが共同開発したピコ秒レーザは、レーザダイオード(LD)直接駆動方式で短パルスを発生させる。フェムト秒とピコ秒では桁違いであるが、ピコ秒で足りるアプリケーションには、圧倒的に低コストで簡素な構成のピコ秒レーザに優位性がある。
開発が完了したLDドライバボードの仕様は、パルス幅:100ps、ピーク電流:~ 12A、繰り返し周波数:~1MHz、サイズ:45×45㎜(図1)。
開発製品を計測した結果が図2、33GHz帯域のリアルタイムオシロスコープで計測してFWHM: 90psとなっている。これが、この製品の真の値と考えとよい。
このレベルのパルス幅を生成できるドライバボードは世界トップクラスと考えられる。海外にも世界的なドライバボードメーカーがあるが、直接駆動方式でピコ秒パルスを生成できる製品は、現在のところ市販されていない。ドライバボードを開発したトリマティスの社長、島田雄史氏によると、このようなドライバボードに対する需要はあるが、それを設計・開発する企業が近年、激減しているのが現状だという。
トリマティスが、このようなハイエンドのドライバボードを製品化できた理由は、「ノウハウの蓄積」の一言に尽きる。このボードに使用されている主要部品はFETであるが、技術的なキーポイントは、配線設計、パターンの引き方と部品の配置にある。ボード設計の経験が少ない技術者が、トリマティスと全く同じ部品をボードに並べてもピコ秒パルスを生成することはかなり難しい。「これこれの部品を開発し、選択して設計した」と言えないところが、「ノウハウの蓄積」の本当の意味になる。
部品の配置に関連してトリマティス技術グループのリーダー、山田直氏は、「短パルスのLDドライバの場合、LDの配置が重要。特に空間出力の場合は、ユーザが場所を指定してくる。その場所が適切でなくても、そこに置くためにどのように配線して行くかをシミュレーションして考えなければならない。このあたりはノウハウになる」と語っている。ここで見ているピコ秒レーザは、空間出力ではなくファイバ出力だが、部品配置の重要性は変わらない。
高周波ボードの設計では、ボードそのものを多層化して伝送線を通すカスタマイズ設計もあるが、これはハイエンドの通信用途。トリマティスは、ボード自体を開発するのではなく、パターンレイアウトと部品の配置で島津製作所の要求に応えるドライバボードを実現した。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/10/LFWJ1509-44-45.pdf