ビームシェーピングにより新たな超高速レーザ製造が可能

イボンヌ・ガートラー、マックス・カーマン

ビーム強度プロファイルは、x-、y-、z-方向で調整可能であり、溶融加工亜鉛メッキ加工、合成サファイアとガラスの分離などのアプリケーションで有用である。

何年も前から、レーザビーム成形によってユーザーは最適な加工結果が得られるようになり、難しいアプリケーションを処理することができるようになった。産業用レーザと加工用オプティクスにおける最新の進歩はこれをさらに一歩進め、ユーザーが特殊アプリケーション要件に極めて柔軟に対処できるようにビーム成形を適用できるようになっている。過去数年で、独トルンプ社(TRUMPF)は加工対象で任意のビームプロファイル作成法の理解を深め、これによって最適材料加工のために最高の前提条件が提供できるようになっている。
 ビーム成形技術は、最適波動光学設計と石英ガラス製の透過性部品の改善製造法に基づいている。同技術は、超高速(=超短)パルスレーザ、マルチkW連続波(CW)レーザでも用いることができる。また、それは、高効率とパワーハンドリング能力も提供する。同時に、広いスペクトル領域の多様なレーザアプリケーション、基本波からマルチモード、超高速、連続波まで、柔軟なビーム成形アプローチを容易に
する。
 ビーム成形は、3次元全体(x-y-z方向)に適用可能であり、これによって最大限の柔軟性が得られる。適合強度プロファイルに加えて、マルチスポット配置が可能になる。そのアプローチは、標準レーザ装置で利用できるので、コスト効率がよい。つまり、標準レーザ光源と、CWレーザの場合は、標準ファイバを用いることができ、特殊な適応性は不要である。
 このビーム成形技術を用いることで、われわれは新しい最適化されたプロセスを開発した。ごく最近のアプリケーション開発の2つに、超高速パルスレーザを用いたガラスと合成サファイア切断、それに自動車用の溶融メッキ、亜鉛メッキ鋼材の強化版ロウ付け機能がある。両方の開発とも、より効率的な、また柔軟な生産方法に通じるものであり、新たな市場機会に扉を開くことになる。これらは、シングルレーザ光源にもマルチモード光源にも適用可能であり、ビーム成形技術の潜在力も示している。

合成サファイアとガラスの分離

ガラスは可視光と近赤外スペクトル領域に対して透明であるので、この範囲の透過波長のレーザを用いて加工することは不合理に思えるかも知れない。しかし、ピコ秒あるいはフェムト秒領域の超高速パルスレーザを用いると、光は単に材料を透過するのではない。そうではなく、パルス内の大量の空間的、時間的フォトン密度が、自由電子を生み出す非線形、マルチフォトン吸収を容易にする。結果的に、これらの自由電子がさらなるフォトンを吸収する。こうした透明材料における改良された吸収メカニズムによって、レーザビームを使って合成サファイアとガラスの加工が可能になる。
 そうした加工の成功は材料改質に基づいている。アブレーションでパルスごとに材料に直接作用するのではなく、超高速パルスレーザビームはガラス内部に焦点を結び、そこで所望の割線に沿って狭い領域を改質する。その変化した領域内のレーザによって生まれた狭い脆弱部に沿って材料は裂ける。表面は非常に滑らかなままで、精度は1mmの1/100である。直線であるか曲がっているかは問わない。
 この技術は、薄く硬いガラスを劈開するために最近開発された。例えば、スマートフォンディスプレイのフロントカバーガラスなどである。また、ビーム成形したTRUMPF TOP Cleaveオプティクスで1m/sの速度が達成できる。レーザ光の強度は、ビーム伝搬軸(z方向)に沿って均一に分布されている。この方法では、焦点は長さ方向に伸びており、ビームスポットは極端なアスペクト比>1000:1を示す焦点線となる。レーザパルスは、もはやガラスをレベルごとにスキャンするのではなく、シングルパスで、完全な内部分割面を改質していく (図1)。

図1

図1 薄くて硬いガラスを劈開するために、ビーム成形したTOP Cleaveオプティクスが適用される(a)。レーザ光の強度はビーム伝搬軸(z方向)に沿って均一に分布しており、アスペクト比>1000:1のビーム焦点線を形成する(b)。レーザパルスは、シングルパスで完璧な内部分割面を改質する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/11/LFWJ1611ft2.pdf