サブピコ分解能シングルショット光記録がナノ秒長に広げる

ライアン・ミューア、ジョン・ヒーブナー

相互相関エンコーダ記録用の傾斜光利用(SLICER)は、ポンププローブ型アーキテクチュアを使って、記録的な長さで、超高速シングルショット事象を記録する。

高速事象計測問題は、歴史の中で絶え間なく続くイノベーションとなった。利用可能な計測機器が実験者のニーズに合わないときは、時間の制限を克服するために頻繁に新しい実験法が開発された。
 有名な例はウィーン氏(Wien)で、同氏は1919年に高速粒子ビームからの放射を写真撮影することで蛍光減衰時間を計測した。ビームの軌跡に沿って蛍光粒子の位置を時間・空間マッピングにより、蛍光が20nsの寿命で急激に減衰することが観察できる、驚くべき微細時間分解能を達成した。これにより同氏は、自身の結果をアインシュタインの励起状態寿命と比較することができた。アインシュタインの予測は、ちょうど2年前に提案されていた。
 エレクトロニクスが登場したことで、今ではオシロスコープやフォトダイオードは、通常、優にナノ秒以下の分解能で計測することができる。しかし、これらの電子計測器は、現状、10psを下回る分解能の事象を計測することはない。アナログデジタル変換器で電子ビット深度と時間分解能の間の技術的トレードオフがあるというウォールデン氏(Walden)の観察から、この技術を拡張してピコ秒分解能で単一の事象を記録しようとすると、この技術は忠実度が極めて低いことが予測される(1)。この制約は、大がかりな信号アベレージング、あるいはほかの多重測定アプローチによって回避できるかもしれないが、まれな事象、非反復的事象は、このような技術では観察できない。シングルショットで情報を計測できる技術が必要とされることは頻繁にある。
 ピコ秒領域の計測で、アナログエレクトロニクスと光デバイスが、アナログ・デジタル技術を凌駕することを実証した(図1)。ストリークカメラが市販されており、科学的カメラにピコ秒領域の分解能で時間情報を記録する。またシングルショットオートコリレータは、超高速レーザショット自体を計測するために、非線形光学結晶を使い、パルス形状を推測する。
 それぞれの時間領域では強力であるが、ストリークカメラは、時間分解能とダイナミックレンジを結びつける空間電荷効果に悩まされ、オートコリレータは一般に記録時間が限られる。ピコ秒分解能で長期記録に簡単に拡張でき、また同時に動作波長の多様性を持つ技術が一般に欠如している(2)。
 エレクトロニクス法を拡張して分解能を微細化することは難しいので、その代わりに、長期間記録できるように光学的方法を拡張することを目標にしている。1ps分解能と長時間記録を達成した実証ずみの光記録法は、時間情報を減速するタイムスケーリング法か、あるいはウィーン氏のように、時間・空間マッピングのいずれかを使う。目的は、高速事象を従来のカメラで捉えるためである。
 これらの光記録法は, 非線形光学結晶で情報と参照ビームの混合を利用する。情報を時間(引き延ばし、拡張)または空間(イメージングのため)に書き込むためである。これらの技術を、すでに実証されていることを超える記録に直接拡張することは難しい。これらの材料の弱い非線形利得、小さなアパチャ、それに厳しいアラインメントと位相整合要件のためである。

図1

図1 オシロスコープとストリークカメラは長期記録を達成しているが、分解能は相対的に粗い。一方、光計測技術は、極微細分解能を達成しているが、一般に、長期記録に合わせて調整することが簡単にはできない。

オプティクスとしての半導体

半導体ベースで、励起キャリアによる屈折率変化に起因する非線形性は、非線形メカニズムの中でも最も強力である。また、光波混合結晶の非線形力を大きく凌駕することがあり得る。たとえば、100mJ/cm2のポンプフルエンスを吸収すると、ガリウム砒素(GaAs)などの多くのIII-V半導体では、0.02の屈折率変化が生じ、わずか30μmプローブを通過させるだけで半波長位相シフトを誘発することが可能である。この効果は、ポンプ制御としてプローブを光学的にスイッチする光変調器の実現に使える。
 対照的に、光波混合プロセスに基づいて同等のフルエンスで同じデバイスを造るには、1psパルスなら、厚さが少なくとも2ケタ大きな材料が必要になる。この強力な非線形利得で、半導体非線形性をベースにしたシングルショット光レコーダなら、潜在的に現在の光レコーダよりも数ケタ長い記録が可能になる。
 半導体材料は、サブピコ秒のタイムスケールで伝導帯まで励起できるが、大半の半導体材料は、0.1ns ~約10nsのタイムスケールで低エネルギー状態に減衰する。これは、積算的な動き、あるいはフルエンス依存の屈折率を引き起こし、それが持続するので、これらの材料は利用するのが一段と難しくなる。従って、安価な市販の半導体ウエハや薄膜は比較的豊富であるが、光ディテクタを別にすれば、それらが光学素子として利用されることはほとんどない。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/03/ft3_test_measurement.pdf