煙霧を透過するSWIRカメラ

ジョン・ウォレス

秘密工作は一般にサーマルイメージングや暗視技術を使うが 、短波長赤外(SWIR)域は、大気煙霧の透過など、独自の優位性を持っている。

セキュリティ 、防衛、および監視にイメージングシステムを利用することは、赤外(IR)スペクトルの活用に大きく依存している。IRスペクトルは、近、短波、中、および長波赤外(それぞれ、NIR、SWIR、MWIR、LWIR)に分けられる。セキュリティと監視用NIRカメラは一般に微光(暗視)デバイスであるが、MWIR、とLWIRカメラは、サーマルイメージングによって機能する。しかし、SWIRカメラは、単独でセキュリティや監視に役立つ。時にはそれ自体で、また他のイメージャとの組合せで使用されることがよくある。
 NIRとSWIRとのスペクトル境界は一般に、約1.4μmと言われているが、この記事では、正確な数字は重要ではない。SWIRとMWIRの境界は一般に3μmと言われている。

煙霧透過イメージング

米センサーズ・アンリミテッド社(Sensors Unlimited)は、米コリンズアエロスペース社(Collins Aerospace)の一部門であり、ハンドヘルドSWIRスコープシステム、エアリアカメラ、ラインスキャンカメラ、リニアフォトダイオードアレイといった多種多様なSWIRイメージャを生産している。センサ技術は、InGaAsベースであり、1991年にセンサーズ・アンリミテッド社が市場に投入した。
 これらSWIRデバイスのアプリケーションには、ファシリティ、港、国境警備や監視と他の秘密工作が含まれ。また、軍IRレーザ偵察や追跡も含まれている。例として、GA1280JSX SWIRカメラは高精細(1280×1024ピクセル)センサを搭載しており、最大解像度で1秒に60フレーム(fps)を撮像する。0.9 ~ 1.7μmスペクトルで高感度であり、0.7 ~ 1.7μm、またはオプションで、0.5 ~ 1.7μmの可視・SWIRをカバーする。
 「GA1280JSX高精細SWIRカメラの最も有力なセキュリティおよび監視利用の1つは、大気煙霧を通したイメージングである」とセンサーズ・アンリミテッド社のアプリケーションエンジニア、カート・ドヴォンチ氏(Curt Dvonch)は言う。「これら2つの画像(図1)は、同時に撮られており、汚染され、霞んだ環境ではSWIRカメラが可視光カメラをいかに凌ぐものであるかを示している。SWIRカメラが可視光カメラより優れているのは、SWIRフォトンが大気煙霧やスモッグを透過できるからである。一方、可視波長のフォトンは、粒子状物質で重い空気では散乱される」。

図1 ユタ州ソルトレイクバレーでは、大気汚染を一度に数日あるいは数週間トラップする大気現象が時折起こることがある。こうした大気逆転が起きている間、地表の可視性は非常に低下する。ビデオで撮ったこれらの画像は、可視画像(a)と短波赤外(SWIR)画像(b)を示している。2017年12月7日3:30pm山間部時間ごろ(https://youtu.be/3cBkfQb8vxQ参照)、地表の可視性が極めて低い間の画像である。SWIR画像は、センサーズ・アンリミテッド社のGA1280JSX miniSWIRエアリアカメラと200mmSWIR最適化f/1.6レンズを用いて60fpsで撮った。可視画像は、Nikon D5100 DSLRカメラのビデオモード、55 ~ 200mm f/4.5-5.6レンズで撮った。両画像ともトリミングしているが、他の方法での変更はされていない。(提供:センサーズ・アンリミテッド社)

多重目標追跡

米フリアーシステムズ社(FLIR Systems)は、同社の焦点面アレイ(FPA)に基づいてInGaAs SWIRカメラを製品化しており、FPAを別売もしている。これらFPAは、容量性トランスインピーダンスアンプリファイア(TIA)デザインとなっている。これは、セキュリティイメージングから高速科学レーザテスト(多重出力と動的ウインドウ生成を要する)までの範囲のアプリケーションに最適化されている。
 フリアー社のSWIRカメラの1つ、Bosonは、サイズ、重量、パワー+コスト(SwaP+C)に最適化されている。21×21×28mmサイズ、15.5gレンズレス重量、消費電力<1.6Wで、そのカメラは軍用品質認定されており、サーモエレクトリック冷却器(TEC)なしであるので、SwaP+C最適化達成に役立つ。Bosonよりわずかに大きなTauは、TECを搭載しているので、フィールドでの精密利用に必要な温度安定性が得られる。Tauカメラは、サイズ38×38×36mm、消費電力は3.2W以下。両方のカメラともSWIR(0.9 ~ 1.7μm)と可視・SWIR(0.6 ~ 1.7μm)バージョンがある。
 カメラだけでなく、同社は全地形型偵察・観察車輌、LTV-X(図 2)を製造している。これは、交換可能搭載センサとさまざまなタイプのイメージャを搭載しており、これにはNIR、SWIR、サーマル、レーザ式測距およびレーダーが含まれる。車輌は、V-22 Osprey ティルトローター航空機で移送可能であり、そのカメラ制御システムで最大500の脅威を同時追跡できる。

図 2

図 2 このフリアー社製軽量戦術偵察および観察車輌、LTV-Xは、相補型センサアレイを搭載している。これにはNIR、SWIR、サーマル、レーザ式測距およびレーダーが含まれる。(提供:フリアー社)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/030-032_pp_imaging.pdf