初めの一歩を踏み出す脳の光生体調節

光生体調節(photobiomodulation:PBM)は、ミトコンドリア活性を光で刺激する手段として十分に確立された手法である。今、研究者らは、神経障害に対処するための臨床的に価値ある
ツールの開発が期待できるとして、PBMを脳活性の修正に使うための研究を行っている。
 PBM(低レベル光療法としても知られる)の生理学的な効果についての論拠はかなり明らかである。細胞のミトコンドリア内に存在するシトクロムcオキシダーゼによる直接光吸収は、代謝活動を活性化させ、起こる機能が何であれ細胞の吸収機能を高める。他のメカニズムは、細胞外の潜在成長因子の活性化と同様、細胞膜上の光感受性受容体とチャネル輸送体を必要とする。
 いくつかのチームは、人と動物のモデル両方の脳活動において、PBMの効果を明らかにする研究を進めている。最新の成果の一部は、PBMはいずれ、認知機能障害に対処するための、臨床的に適切な療法になりうるかもしれないことを示している。

認知効果を研究

心理的柔軟性は認知カテゴリーの1つであり、それはさまざまな退行性の状況で低下する。スペインのオビエド大(University of Oviedo)のマリア・バンケリ氏(María Banqueri)とその同僚は、ストレスを受けたマウスの認知に関する柔軟性の回復に、PBMがどれほど効果があるのか調査した(1)。チームは幼いマウスを最初の10日間、1日につき4時間母親から引き離し、認知ダメージを誘発した。マウスが成熟した後、彼らはモリスの水迷路で訓練された。水迷路には四分円の「エスケープ・プラットフォーム」が用意されている。訓練されたマウスは、エスケープ・プラットフォームのある四分円の中で、より長く過ごした。
 認知に関する柔軟性を計測するため、研究者たちはエスケープ・プラットフォームの位置を変更した。通常のマウスは素早く順応し、移動したエスケープ・プラットフォームのある四分円で有意により多くの時間を過ごした。ダメージを受けたマウスは、ダメージを受けてないマウスのようにふるまいを切り替えることはしない。バンケリ氏は、認知の柔軟性をPBMで回復させられないか究明しようとした。
 同氏はダメージを受けたマウスのグループに、1064nmの光を20秒オン、40秒オフのサイクルで1時間さらした。5日間、ダメージを受けたマウスはその治療を受け、4日間の迷路訓練を行い、続いて位置を移動したエスケープ・プラットフォーム上での評価が行われた。ダメージを受けたマウスは、心理的柔軟性を取り戻した。
 さらに、チームは脳のさまざまなコントロール及び治療のグループにおいて、組織学的な分析を行った。光の暴露によって減少すると予測されたシトクロムオキシダーゼのレベルは、ダメージを受けPBMを受けたマウスで実際により低かった。しかしそのレベルは脳の領域によってさまざまだった。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/07/8-9_biown_phototherapy.pdf