危険な病原体の検出を高速化するマイクロ干渉計
光学干渉法は、広大なレーザ干渉計重力波観測所(LIGO)の検出器のようにインパクトのあるシステムの中核をなす高感度測定技術だが、同じ原理は顕微鏡スケールでも機能する。例えば、スペインの研究チームは、干渉バイオセンサを用いて病原性細菌を迅速かつ正確に検知しようとしている。バイモーダル導波路(BiMW)センサは、窒化ケイ素の導波管の一部を、特定のターゲットに結合できるよう生化学的に機能化したものである。生体分子が結合すると、2つのモードの間で有効な行路差が生じ、分析対象物の濃度に比例して強度変化が起きる。これらはすべて小さなパッケージ内の出来事であり、30×10mmチップ1つに20種類のデバイスが搭載されている。
迅速かつ高感度に検出するニーズ
スペインのカタルーニャ・ナノサイエンス・ナノテクノロジー研究所(Catalan Institute of Nanoscience and Nanotechnology)に所属するローラ・M・レチューガ教授(Laura M. Lechuga)らは、生化学的化合物を正確かつ迅速に検査するという一般的なニーズに応えるためにBiMWバイオセンサを開発した(1)。90億ドル規模の課題となっている院内感染(病院内または他の医療機関などで起きる感染)の原因となる病原体を検知するという特殊なニーズに近年対応させた(2)。毎年、数十万人の米国の入院患者が、少なくとも一度は院内感染に苦しんでいる。さらに悪いことに、原因病原体の20〜70%以上は、何らかの薬剤耐性を持っている。
病原性細菌を同定する現在の戦略は、時間がかかる、不正確、高額、またはその3つの組み合わせである。レチューガ教授は、これらの病原体やその遺伝子を迅速かつ正確に、そして安価に同定するBiMWバイオセンサを構成できることに気づいた。
BiMWの概念そのものは単純である。シリコン基板上に厚さ350nmの窒化ケイ素の層を低圧化学蒸着法で作り、二酸化ケイ素の金属被覆でかぶせる。その一部を厚さ150nmにエッチングして長さ5mm・幅3μmの導波路を作り、長さ25mm・厚さ350nmの導波路に結合させる。
短い導波路に可視光の単色偏光ビームが入射すると、単一モードで長い導波路の接合部まで伝搬する。長い導波路は、対称な基本モードと、非対称な1次モードの両方をサポートする。基本ビームと1次ビームとの位相差により、1次モードのトップローブまたはボトムローブに建設的干渉が発生し、反対側のローブでは相殺的干渉が生じる。
デバイス製造の最終ステップは、バイモーダル断面の15mmの部分からクラッドを剥離することだ。剥離したところでは導波路の閉じ込め係数が大きく減少し、エバネッセント波と周囲の媒質との相互作用が高くなる。2つのモードは、エバネッセント場を通じて環境との相互作用が異なるため、周囲の媒質の屈折率に応じてモード間の干渉が変化する。この技術では、周囲の媒質の屈折率変化と、ターゲット分析物のレベルがリンクしていることが保証される。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/09/008-009_wnbio_biosensing.pdf