日本の産業用レーザとシステム

鷲尾邦彦

生産年齢人口が減少傾向にある国における産業用レーザシステムの状況。

日本の人口は、2004年12月に1億2784万人のピークに達し、2019年12月時点で1億2615万人である。15~64歳の生産年齢人口は、2019年7月時点で7518万人で、前年比で0.52%減少した。日本の生産年齢人口は、2050年までに約34.4%減少して4930万人になると予測されている。 
図1は、2007年からの日本の四半期別国内総生産(Gross Domestic Pro duct:GDP、実質、季節調整済)のグラフと、年次GDP成長率の表である。上述のとおり、生産年齢人口は減少しているにもかかわらず、日本のGDPは2012年以降、着実に増加している。ただし、平均年次成長率は約1.2%で、中国の約6~6.8%というここ数年のGDP成長率と比べるとはるかに低い。 
図2は、レーザ加工装置の年間出荷高の推移をレーザ種類別に示したグラフである。日本のメーカーが製造したもの(輸出と現地製造を含む)と、国外メーカーのレーザ加工装置を輸入して日本で販売したものが含まれている。図2~6のデータは、2019年に創業35年を迎えた新報が1995年から年に一度発行している「ジャパンレーザワールド&トレンド」の第14~25刊から引用した。図2からわかるように、エキシマレーザ以外のさまざまなレーザ(CO2レーザ、ファイバレーザ、固体レーザなど)を利用するレーザ加工装置の年平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)は4.5%で、エキシマレーザ装置(リソグラフィとアニーリング用)の3.2%よりもやや高い。 
一般財団法人光産業技術振興協会(OITDA)のレポートと比較すると、売上高にいくらかの相違があるが、その理由の1つは、新報のデータには、日本のメーカーが海外で現地製造した装置と、海外から輸入されて日本で販売された国外メーカーの装置が含まれているためである。また、OITDAのレポートは会計年度ベースであるのに対し、新報のデータは暦年ベースとなっている。 
図3は、2018年のレーザ加工装置の出荷高を用途別に示したものである。日本のメーカーが製造したもの(輸出と現地製造を含む)と、国外メーカーのレーザ加工装置を輸入して日本で販売したものが含まれている。板金切断装置(ほとんどがファイバレーザまたはCO2レーザを利用すると考えられる)が50.5%で、最大のシェアを占めている。板金切断装置の2018年出荷高は10億8000万円だった。その理由としては、民生電子機器用のディスプレイや太陽電池といった多くのデバイスが現在、日本国外で製造されていることと、日本の現在の微細加工装置がおそらく十分な競争力を持っていないことが挙げられる。微細加工装置のシェアは、Industrial Laser Solutions誌で報告されたレーザ用途別世界売上高のデータと比べて、それほど大きくない。 
図4は、板金切断装置の年間出荷台数の推移を示したグラフである。新報のレポートでは、さまざまな種類の装置の詳細データのほとんどが、台数のみで示されていて、詳細な売上高データは記載されていないことに注意してほしい。2018年の3085台は、2007年のピーク値をやや上回った。板金切断装置の2018年の平均販売価格は、約3500万円である。数kWレベルの高出力レーザや革新的なビーム制御技術の採用が増加している最近の傾向から、平均販売価格は少なくとも数年は増加していくと予想される。出荷台数は2019年と2020年に増加すると予想されているが、最近の米中貿易摩擦などの要因から、そうはならない可能性もある。 
日本政策投資銀行(DBJ)の調査によると、日本製造業の海外設備投資比率は、2007年終盤に起きたグレートリセッション後に、2009年の29.6%から2013年の54.8%まで急速に増加したが、2013年以降は減少して52.7%未満で推移しているという。これは、2013年以降は、現地製造のための設備投資が減速し、国内設備投資が再び増加し始めたことを意味する。国際ロボット連盟(International Federation of Robotics:IFR)のレポートにも、それに合致する内容が報告されており、日本におけるロボット導入台数の年間増加率は、2013年以降17%にも達しているとされている。

図1 2007年以降の日本の四半期別GDP(実質、季節調整済)の推移と、年次GDP成長率。

図1 2007年以降の日本の四半期別GDP(実質、季節調整済)の推移と、年次GDP成長率。

図2 レーザ加工装置の レーザ種類別年間出荷高 の推移。日本のメーカー が製造したもの(輸出を含 む)と、国外メーカーのレ ーザ加工装置を輸入して 日本で販売したものを含 む。(出典: 新報)

図2 レーザ加工装置のレーザ種類別年間出荷高の推移。日本のメーカーが製造したもの(輸出を含 む)と、国外メーカーのレーザ加工装置を輸入して日本で販売したものを含む。(出典:新報)

図3 2018年のレーザ 加工装置の用途別出荷高。 日本のメーカーが製造した もの(輸出を含む)と、国外 メーカーのレーザ加工装置 を輸入して日本で販売した ものを含む。(出典: 新報)

図3 2018年のレーザ加工装置の用途別出荷高。日本のメーカーが製造したもの(輸出を含む)と、国外メーカーのレーザ加工装置を輸入して日本で販売したものを含む。(出典:新報)

図4 板金切断装置の年 間出荷台数の推移。日本の メーカーが製造したもの(輸 出を含む)と、国外メーカー のレーザ加工装置を輸入し て日本で販売したものを含 む。(出典: 新報)

図4 板金切断装置の年間出荷台数の推移。日本のメーカーが製造したもの(輸出を含む)と、国外メーカーのレーザ加工装置を輸入して日本で販売したものを含む。(出典:新報)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/08/028-031_ar_lasers_in_Japan.pdf