高出力青色半導体レーザを目指すプロジェクト
未知なる領域に踏み出す、先進的な銅レーザ加工
ドイツ政府が助成するプロジェクト「EffiLas」の一環として、独レーザーライン社(Laserline)は、レーザダイオードバーに基づく、世界初となる高出力青色半導体レーザ光源を開発している。レーザダイオードバーを製造する独オスラム社(Osram)と共同で、近赤外(near IR)波長向けに確立されたパワースケーリング技術を、初めて青色波長に適用した。本稿では、最大1000Wを達成する高出力青色半導体レーザの開発に至った動機、その技術、最初の応用分野について説明する。
この数十年間で、連続波(CW:Continuous Wave)出力レーザは、溶接、クラッディング、表面処理、硬化、ろう付け、切断などを網羅する、現代製造工程における多用途ツールとして確立された状態を築き上げてきた。科学的技術から一般的な生産ツールへの移行が促進されたのは、新しいレーザ光源に関する研究がたゆみなく続けられ、それによって新たな用途が絶えず開拓されてきたからである。
高出力CWレーザ技術の開発が始まったのは、2000年以前のことで、波長10.6μmのCO2レーザと1064nmの半導体励起Nd:YAGレーザが実現された。しかし、CO2レーザはファイバ伝送が不可能で、Nd:YAGレーザは輝度とパワースケーリング能力が限定されていた。2000年以降になると、ファイバレーザが、ファイバ伝送可能な高輝度レーザとして登場し始め、今では多くの用途において、CO2レーザに代わる手段となっている。
高反射率材料の課題
これらのCWレーザは主に、およそ1μmの波長で動作する。この波長は、例えば吸収率が50%を超える鋼鉄の加工に適しているが、1μmでの吸収率が5%未満の銅などの材料に適用するのは非常に難しい。このような高反射率の材料を加工するには、高いレーザ強度によって材料に蒸気チャネルを作成することにより、吸収率を高めることが行われる。しかし、この方法での銅加工は、深く浸透するものに限られ、本質的にスパッタ発生のリスクを伴うほか、エネルギー堆積の制御が難しい。
500nm以下の波長のほうが、吸収率が50%以上にまで大きく高まるため、銅の加工にはるかに適している。この波長範囲の固体レーザ光源としては、周波数二倍化によって515nmと532nm(緑色域)の波長を達成するものが、市場にいくつか提供されている。しかし、これらのレーザ光源には、励起レーザ波長の一部しか結晶によってターゲット波長に変換されないプロセスが用いられる。この変換プロセス(高調波発生)では、出力損失が高くなり、冷却要件が複雑になり、高度な光学設定が必要になってしまう。
この技術的課題は、早急に解決する必要がある。温室効果ガスの削減という社会問題と密接なつながりがあるためである。内燃機関を電気エンジンに置き換える動きにより、銅を加工するための信頼性の高い手段に対する莫大な需要が生まれる。銅は、eモビリティや、風力タービンなどのその他の再生可能エネルギーシステムに用いられている。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/04/tr_14-15.pdf