1台のダイレクト半導体レーザ装置であらゆる用途に対応する新しい加工の可能性
今日のダイレクト半導体レーザ装置は、そのベースとなる半導体レーザ素子の高出力化にともないダイレクト加工装置として高輝度化を達成し、キーホール溶接を要するテーラードブランク溶接などの光源として従来のレーザ光源からの置き換えが可能となっている。リモート溶接においてはダイレクト半導体レーザ装置に“コンバーターモジュール” を付加(以下コンバーターレーザ)することにより高ビーム品質を達成、欧州の大手自動車メーカーの生産現場で採用されている。本稿ではこのような最新のダイレクト半導体レーザ装置をさらに有効に活用するハイブリッド高出力半導体レーザ(以下ハイブリッドレーザ)及び新しいビーム成形“スポット・イン・スポット”ビームについて述べる。 ハイブリッド高出力半導体レーザは、1台の筐体で従来の半導体レーザの卓越した表面効果と、コンバータレーザの高いビーム品質を併せ持つ。2 種類のレーザは、互いに独立して使用することも同時に使用することもできる。そのため、たった1台のシステムで多種多様な用途に対応することができる。これは多目的な用途に対応が必要なジョブショップに興味深い視点を与えるだけでなく、深溶け込み溶接や積層造形にも有効なシステムとなっている。 レーザシステムの出力やビーム品質を短時間で切り替えられる能力は、産業用レーザ材料加工の複数の分野で求められている。典型的な例が、さまざまな種類のレーザ加工を行うジョブショップ(受注生産工場)である。大型部品の溶接、硬化、コーティングには主に、照射面積の広いレーザが用いられるが、フィリグリー細工が施された加工物の切断やエッジ硬化には、ビーム品質の高いレーザが求められる場合が多い。また、一連の加工処理の中で異なるレーザ構造が用いられる産業用途もある。たとえば、小さな焦点径のレーザによる切断のあとには、切断時に生じた微細構造の変化を修正することを目的に、切断エッジに対する徹底的なレーザ熱処理が行われる。このような複合的な手法は、積層造形加工においても重要な役割を担う。大きなレーザビームだけを用いるほうが大量の部品をすばやく効率的に製造することができるが、フィリグリー部品の生産には、ビーム品質の高いレーザの使用が必要となる。 さまざまな加工を請け負ったり、仕様変更が絶えず発生する生産工程に対処したりしなければならないジョブショップには、高出力で照射面積の広いシステムと、ビーム品質が高い代わりに出力はおそらくそれよりも低いシステムという、2種類のレーザシステムを用意することがほぼ不可欠だった。中規模の製造会社にとっては特に、2種類の装置を用意しなければならないことがかなりの経済的負担となる。市場で提供されている産業用レーザのほとんどが、生産現場に固定配置されるものなので、レーザシステムの数が増えるということは、貴重な生産スペースが失われることをも意味する場合が多い。独レーザーライン社のコンパクトな半導体レーザは例外で、最大で出力60kW の移動可能なモバイル装置として提供されている。
レーザーライン社は、半導体レーザ技術の継続的な進歩にともなうこのジレンマを解決するための興味深い解決策を考案した。昨年独ミュンヘンで開催された「Laser World of Photonics 2017」において技術紹介した半導体レーザ「LDF 16 000-100|4 000-8hybrid 」(図1)は、VGPower型のプラットフォーム1台で高出力半導体レーザ技術の大面積に対する実証された効果と、コンバータレーザの高いビーム品質を併せ持つ初めてのシステムである。2種類のレーザは交互にも同時にも使用することができる。複数レーザの同時使用は、これまで不可能だった技術であり、この新システムの中心的なイノベーションの1つである。このシステムを使用することにより、これまでは2種類の異なるレーザシステムが必要だった多数の用途に1台で対応することができる。また、同時使用のオプションにより、これまでは1種類のレーザによって処理されていた分野に新たな可能性が開かれることになる。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/04/ilsj_trp22-1.pdf