小型、高性能、省エネを実現した『It’s in the Box』 コンセプト

高橋 伴明

Spectra-PhysicsのLD励起固体レーザの歴史は、1986年に他社に先駆け、シングルエミッターLDをファイバでカップリングすることで、レーザ媒体に対し端面励起を可能にしたことに始まる。これにより、安定した高品質ビームが得られ、これまでに無い新たなアプリケーションを構築していくこととなった。その後、LDバーにファイバをカップリングすることで高出力においても端面励起を行う事が可能になったため、ランプ励起Q-swレーザの置き換えとして急速に市場に広がっていった。これらは、高出力で高品質なビームが得られるため、波長変換により355nm、そして深紫外の266nmを得ることができるようになった。現在当社では355nm 20Wクラスでビーム品質がTEM00 M2<1.3のUVレーザから、コンパクトで組み込みに最適なものまで 幅広いラインアップを有している。また昨年創立50年を経て、今日までOEM先への組み込みやシステムインテグレーション市場に多くの発振器を出荷しており、産業界の様々なパラダイム変化において、重要な役割を果たしてきた。しかし市場からのレーザ発振器への要求は、優れた基本性能、信頼性や各種のアプリケーションに対応していることはもちろんであるが、さらに使いやすさ、環境へのやさしさなどが重要視されており、発振器メーカーとしてのあり方を再び考える時期に来ている。

『It’s in the Box』コンセプト

どの業界においても企業の社会的貢献度が重要視されるようになっている。レーザ発振器メーカーにとってのそれは、相手先企業がその役割を果たしやすくすることであろう。まずは使用者がレーザの特性を利用して、これまで以上に高品質な製品を作り、生産性を向上させることが第一である。加えて、レーザ発振器のサイズが小型化し、設置面積を大きく削減でき、結果消費電力が低減されることも重要であると考えている。
Spectra-Physicsが提唱する『It’s inthe Box』は従来のレーザヘッドと電源・コントローラといった2つのモジュール構成を根本から考え直している。かつてLD励起レーザの最大の消耗部品は励起に使用されるLDであり、その交換時のダウンタイム、装置とのアライメント調整時間の低減は大きな課題であった。それゆえLDをコントローラ部に格納しレーザヘッド交換の機会を極力少なくする努力がされてきた。現在では、励起LDの高出力化、長寿命化が進み製品ライフタイムの中でLD の寿命は制限要素の上位ではなくなってきたことから、励起LDをレーザヘッド内へ格納することが可能となった。パフォーマンス面においてもファイバーカップルLDを使用することで、これまでどおりレーザ媒体に対し端面励起が行われ、短パルスや高いビーム品質といった性能はそのまま継承することができている。電源・コントローラ部分も独自の回路設計により更なる小型化に成功し、レーザヘッドに格納できるようになった。駆動電源はDCとなり、組み込み先の装置内に用意されているDC電源をそのまま使用することが可能となった。こうしてシステム構成としてはレーザヘッド部のみとなり、占有面積が大幅に削減されたため、顧客システムの設計にこれまで以上の自由度を与えることになっている。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/09/TechReport3-ILSJ1209.pdf