無人爆撃機《フォボス》は、筒状戦車兵器《ダイモス》の主力空戦用機動兵器だ。三日月型の灰青色の機体で、翼を広げたツバメが逆向きになって空を飛んでいるようだった。腹部には誘導滑空弾を積載しており、空対地爆撃に特化したその機体は恐怖の雨を降らせる悪魔として恐れられていた。
日本海を渡って南下してきた《フォボス》は、舞鶴湾に潜入すると、元海軍工廠に対して絨毯(じゅうたん)爆撃を開始した。
《フォボス》を迎え撃つべく、《エスピランサ》とリンクした『かの国』の軍艦数隻が、砲身を回転させ、火を噴いた。砲身から伸びる火線が弾幕となって《フォボス》を次々に撃墜していく。
だが、仲間が撃墜されても意にも介せず、《フォボス》は迎撃され黒煙をあげながらきりもみになって落下していく他の攻撃機を躱しながらさらに軍艦をすり抜け、工廠へと接近していく。
アフターバーナーを点火した《フォボス》が海面すれすれを飛んで、急上昇を開始。軍艦の誘導ミサイルを回避すると、いよいよ工廠前に辿りついた。
《フォボス》はその腹部から誘導滑空弾を放出した。間もなく黒い雨が降り始める。着弾した爆弾が連鎖的に爆発し、工廠施設が火炎に飲まれていった。
弾幕をすり抜けた後続機がつぎつぎに工廠に爆弾を落としていく。高音程の爆弾落下音と、爆発の轟音とが空を割き、工廠を火炎地獄に一変させる。
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