一般に、短い光学パルスの時間形状とスペクトル形状は透明媒質中の伝搬のあいだ(Kerr効果から生じる)自己位相変調と波長分散のために変化する。特定の状況下では、しかしながら、単位伝搬距離あたりの一定位相遅れは別としてKerr効果の非線形性と分散はちょうどお互いにキャンセルし合うので、パルスの時間形状とスペクトル形状は長い伝搬距離にわたってですら保たれる[1,3]。この種の現象は水の波において最初に観測されたが[1]、後になって光学ファイバーにおける光の伝搬に対しても観測された[4]。

損失のない媒質における(基本的な)ソリトンパルス伝搬に対する条件は

  • 非線形係数n2(ほとんどの媒質で起こるとして)の正の値に対して、波長分散は変則的であることを必要とする。
  • パルスの時間形状はチャープされない sech2 パルスの時間形状にならなければならない(グループ遅延分散が一定、すなわち高次の分散は無いと仮定)

sol-eq1

  • パルスエネルギー Epとソリトンパルス持続時間 τ は次の条件を満たさなければならない。

sol-eq2

ここで、パルス持続時間での半値全幅(FWHM)は約1.7627 × τγ はrad/(Wm)でのSPM係数、β2 は角周波数に関して派生として定義されたグループ速度分散、すなわち単位長さ(s2/m)あたりのグループ遅延分散である。

言及された状況下では、パルスは(基本的な)ソリトン(またはソリトン的パルス)を一定の時間形状と空間形状で伝わる。もし非線形性だけが作用するなら、パルスのピークが経験するであろう非線形位相シフトのちょうど半分の位相シフトを得る。このソリトン位相シフトは時間あるいは周波数にわたって一定である、すなわち、それはチャープあるいはスペクトル拡散へはつながらない。ゆえにほとんどの状況において、それは関係ない。

sol1

 1: 青色カーブ:時間依存非線形位相シフトのみ(分散なし)、光学強度に比例する。赤色カーブ:全体の位相シフト、ソリトン上の非線形性と分散の振舞いの結合の結果として生じる。一定の位相シフトは時間的空間的パルス形状を修正しない。

例:標準テレコムファイバーにおけるソリトン

定量的な例として、標準テレコムファイバー(1.5-μmスペクトル領域に対する単一モードファイバー)におけるソリトンを考えることができる。一般的なCorningのSMF-28eファイバーを想定すると、実行モードエリアは波長1550nmで85μm2であり、非線形係数は1.43 mrad/(W m)となる。(非線形指数は3 × 1016 cm2/Wと仮定した。)波長1550nmでの波長分散は+16.2 ps/(nm km) で、−20 660 fs2/m に一致する。上の式を用いると、1-ps ソリトンは51 pJのパルスエネルギーを持たなければならず、ピーク出力は45 Wに一致することがわかる。

100-fsの持続時間をもつ10倍短いソリトンに関しては、パルスエネルギーが510 pJまで10-fold上昇する一方で、ピーク出力は100倍大きくなる(4.5kW)。

ソリトン安定性

最も注目すべき事実は実際に言及された分散と非線形性のバランスの可能性ではなく、むしろ非線形波導方程式のソリトン解が非常に安定的であるということである。実際のソリトン解からの初期パルスの大きいずれに対してでさえ、パルスは自動的に正しいソリトン形状を“発見する”。幾ばくかのソリトンエネルギーをいわゆる分散波、弱いバックグラウンドへ流しこんでいる間、強度が小さすぎるため重要な非線形効果を経験できず分散の結果として時間的に拡散する。もしこれらの変化がいわゆるソリトン周期(一定位相遅延が π/4である伝搬距離として定義される)と比べて長い距離に渡って起こるのであれば、ソリトンもまた媒質の時間的特長の変化に対して非常に安定している。これはソリトンは断熱的にそれらの形状を徐々に変化する媒質パラメーターに対して適合させられることを意味する。またソリトンはいくらかの高次の分散に適応できる。そのとき、ソリトンは与えられた条件下において自身の形状を言及されたバランスへ自動的に適合させる。

高次ソリトン

もしパルスエネルギーが基本的なソリトンエネルギーに整数倍の2乗であるならば、パルスはいわゆる高次ソリトンとなる。そのようなパルスは保存された形状を持たないが、それらの形状は上述したソリトン周期で周期的に変化する。

sol2

 2: このアニメ化されたスペクトル画像はいかにして三次のソリトンがファイバー内で進化するかを示している。高次ソリトンはより複雑な振舞いを示す。画像はRP Propulse ソフトウェアを用いて生成されている。

sol3

 3:  単一モードファイバーにおけるソリトンパルスエネルギーとパルス持続時間の間の関係。実線は基本的なソリトンに、点線は高次ソリトン(次数2,3,4)に対応し、そこでの持続時間は振動サイクルの最短持続時間としてとられている。

高次ソリトンは高次分散と他の擾乱効果の影響下で基本的なソリトンへ分解できる。それらは基本的なソリトンほど安定していない。

ソリトンの重要性

基本的なソリトンパルスは、特に長距離光学ファイバー通信とモードロックレーザー(→ ソリトンモードロック)において、技術的に非常に重要である。後者の状況において、ソリトンに似たパルスは典型的にはレーザー空洞における分散と非線形性の一塊にされた部分が十分に弱いときに形成され得る。ソリトンもまた様々な技術においてパルス圧縮のために光学ファイバーを使って応用される。例えば断熱的なソリトン圧縮と高次ソリトン圧縮である。

ソリトン自己周波数シフト

光学ファイバー中の伝搬時、ソリトンパルスはKerr非線形性だけではなく、誘導ラマン散乱にも影響される。非常に短いソリトン(例えば<100fsの持続時間を持つ)に対して、光学スペクトルはとても広いためより長い波長のテールはより短い波長のテールにおけるパワーを消費しラマン増幅を受けることができる。これはソリトンの長波長方向への全体的なスペクトルシフトを引き起こす。すなわちソリトン自己周期変位[5,6,12,16,17]。この効果の強さはパルス持続時間に強く依存する、なぜならより短いソリトンほど高いピーク出力と広い光学スペクトルを示すからである。後者は重要である、なぜならラマンゲインは小さい周波数オフセットに対して弱いからである。伝搬の間、周波数シフトの速度はしばしば減速する、なぜならパルスエネルギーは減少し、パルス持続時間は伸びるからである[17]。

ソリトン自己周波数シフトは別な方法ではアクセスしづらいスペクトル領域へ到達するために利用される。ファイバー内のパルスエネルギーを調節することによって、広範囲の出力波長を調節することが可能となる[10, 11, 13–15]。

ソリトン伝搬のシミュレーション

ソリトン伝搬、あるいは付加的な擾乱効果を伴うものは、数値シミュレーション(→ パルス伝搬モデリング)を用いて調査できる。いくつかの解析ツールも存在する。例.理想的なソリトンのパラメーターからの小さい揺らぎについての力学方程式を含むソリトン摂動理論。

散逸ソリトン

上で議論されたソリトンはパルスがエネルギーをファイバーと交換しない状況下で生じる。これらの(普通の)ソリトンはそれゆえに古典的ソリトンと呼ばれる。散逸性の効果も働き始めるときはるかに広い範囲の現象となりうる。例えば、もし加えてスペクトルバンドパスフィルタリング効果とフィルターにおけるエネルギー損失に対する補償の為の光学利得(増幅)も存在するなら、いわゆる散逸ソリトンは正の非線形指数を持つ結合における通常の波長分散に対してでさえ生じるだろう。他の考えられる散逸効果は飽和性の吸収に関連している。

それら全ての効果が散逸ソリトンを形成するために生じる光学ファイバーを得ることは考えにくいが、ファイバーだけではなくスペクトルバンドパスフィルターや可飽和吸収体のような他の光学部品も含んでいる受動モードロックレーザーの共振器において同様の現象は起こるかもしれない。もし関係する影響のそれぞれが一つの共振器の往復内で十分に弱いなら、結果としての力学は全ての効果がファイバー内で分散して生じているときと同じになる。その意味では、特定のモードロックファイバーレーザーにおける循環パルスを散逸ソリトンとして表現するかもしれない。

厳密に言うと私たちは受動モードロックレーザーにおいて古典的ソリトンを得ることは絶対に無い、なぜなら私たちはいつもいくつかの可飽和吸収体とレーザー利得を持つからである、ということに注意してほしい。その結果として、定常状態におけるパルスエネルギーとパルス持続時間が固定されているのに対して、それらの積が固定されているかぎり、ファイバー内のソリトンは広範囲のエネルギーと持続時間を持ち得る。これらの固定されたパラメーターは実際には散逸ソリトンについての特徴である。しかしながら、支配的なパルス形成効果がしばしば古典的なもの(すなわち分散と非線形性)であるので、それでもこれらのパルスを散逸ソリトンとは呼ばない。

空間ソリトン

上で議論された時間的ソリトンから離れて、空間ソリトンも存在する。その場合、媒質の非線形性は回折をキャンセルし、そのため一定のビーム半径を持つビームはビームの影響なしで均質な媒質においてでさえ形成される。時間的にビームの特徴は一定である。Kerr効果は実際に得られる条件化で一定の光学出力を持つ空間ソリトンを実現するためにははるかに弱すぎるが、フォトリフラクティブ効果は利用できる。

参考文献

 [1] J. S. Russell, “Report on waves”, in Report of the 14th meeting of the British Association for the Advancement of Science, p. 331 (1844)
[2] V. E. Zakharov and A. B. Shabat, “Exact theory of two-dimensional self-focusing and one-dimensional self-modulation of waves in nonlinear media”, Sov. Phys. JETP 34, 62 (1972)
[3] A. Hasegawa and F. Tappert, “Transmission of stationary nonlinear optical pulses in dispersive dielectric fibers. I. Anomalous dispersion”, Appl. Phys. Lett. 23, 142 (1973)
[4] L. F. Mollenauer, R. H. Stolen, and J. P. Gordon, “Experimental observation of picosecond pulse narrowing and solitons in optical fibers”, Phys. Rev. Lett. 45 (13), 1095 (1980)
[5] F. M. Mitschke and L. F. Mollenauer, “Discovery of the soliton self-frequency shift”, Opt. Lett. 11 (10), 659 (1986)
[6] J. P. Gordon, “Theory of the soliton self-frequency shift”, Opt. Lett. 11 (10), 662 (1986)
[7] L. F. Mollenauer et al., “Soliton propagation in long fibers with periodically compensated loss”, IEEE J. Quantum Electron. 22 (1), 157 (1986)
[8] N. N. Akhmediev et al., “Stable soliton pairs in optical transmission lines and fiber lasers”, JOSA B 15 (2), 515 (1998)
[9] V. N. Serkin and A. Hasegawa, “Novel soliton solutions of the nonlinear Schrödinger equation model”, Phys. Rev. Lett. 85 (21), 4502 (2000)
[10] X. Liu et al., “Soliton self-frequency shift in a short tapered air–silica microstructure fiber”, Opt. Lett. 26 (6), 358 (2001)
[11] N. Nishizawa and T. Goto, “Widely wavelength-tunable ultrashort pulse generation using polarization maintaining optical fibers”, IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 7 (4), 518 (2001)
[12] J. Santhanam and G. P. Agrawal, “Raman-induced spectral shifts in optical fibers: general theory based on the moment method”, Opt. Commun. 222, 413 (2003)
[13] K. S. Abedin and F. Kubota, “Widely tunable femtosecond soliton pulse generation at a 10-GHz repetition rate by use of the soliton self-frequency shift in photonic crystal fiber”, Opt. Lett. 28 (19), 1760 (2003)
[14] E. R. Andresen et al., “Tunable light source for coherent anti-Stokes Raman scattering microspectroscopy based on the soliton self-frequency shift”, Opt. Lett. 31 (9), 1328 (2006)
[15] M.-C. Chan et al., “1.2- to 2.2-μm tunable Raman soliton source based on a Cr:forsterite laser and a photonic-crystal fiber”, IEEE Photon. Technol. Lett. 20 (11), 900 (2008)
[16] J. H. Lee et al., “Soliton self-frequency shift: experimental demonstrations and applications”, IEEE J. Quantum Electron. 14 (3), 713 (2008)
[17] A. A. Voronin and A. M. Zheltikov, “Soliton self-frequency shift decelerated by self-steepening”, Opt. Lett. 33 (15), 1723 (2008)
[18] P. Grelu and N. Akhmediev, “Dissipative solitons for mode-locked lasers”, Nature Photon. 6, 84 (2012)
[19] R. Paschotta, case study on higher-order solitons

 

参考

https://www.rp-photonics.com/solitons.html