フォトニック結晶ファイバー(Photonic Crystal Fiber : PCF)[1]は、石英中に空孔の配列構造を持つ光ファイバーである。光ファイバー中に空孔を配置するという試みは1973 年に為された[2]。当時は、光ファイバーの透過損失を下げる目的で行われたが[3]、その後シリカガラスファイバーの透過損失を大幅に低下させることができたため、空孔の配列構造が広く用いられることはなかった。現在のPCF の構造は1996 年に提案されたものがベースになっている[4]。PCF は導波原理により、フォトニックバンドギャップ型PCFと屈折率導波型PCFの2つに分類できる。

PCFの大まかな分類

 

フォトニックバンドギャップ型PCF

2 次元ブラッグ反射構造を有し、空気(エア) コアでも光を導波できる「フォトニックバンドギャップ型PCF」であり、フォトニックバンドギャップファイバー(Photonic Band Gap Fiber:PBF) と言われる。光の波長と同程度の周期でエアホールが配置された屈折率変化の大きい媒質中へは、特定の波長の光は侵入できないが、異なる波長の光はこの媒質中を通過できるという特性をもつ。作製するためには、構造に厳しい周期性とホールサイズの均一性が要求される。

 

屈折率導波型PCF

2 つ目は、クラッドにエアホールが存在することで実効的な屈折率がコアより低くなり、全反射して光を閉じ込める「屈折率導波型PCF」である。マイクロストラクチャーファイバーとも言われる。両タイプとも、光ファイバー内に波長オーダーの微細周期構造を形成することで、全く新しい光の伝搬特性の制御を実現している。

各種PCFの断面構造図を図1に示す[5]。

 

各種フォトニック結晶ファイバーの断面図

図1:各種フォトニック結晶ファイバーの断面図

図1(a)(b)(c)は屈折率導波型PCFであり、(a) は一般的なタイプ、(b) は(a) を簡略化したもので極限られた特性が必要な場合に用いられる。(c) は通常のファイバーと同様にGe などの不純物を添加しており、特に曲げ損失を下げるために用いられる。図1(d) はPBFであり、光を伝搬するコアの部分がエアであるため、従来の石英ファイバーでは伝搬できなかった紫外域などの短波長光伝送やハイパワー伝送に用いられている[5]。以下、現在市販されているPCFについて簡単にまとめる。

市販されているPCF

 

HC-PCF あるいはPBF

従来の光ファイバーは光が伝搬するコアの部分も石英ガラスで構成されているが、中空コアフォトニック結晶ファイバー (HC-PCF) はコアの部分がエアであるため、ファイバー中で損傷を受けにくく、更に非線形特性を抑制することができる。非線形特性が低いため長距離伝送にも期待されている[6,7]

LMA-PCF

本来のファイバーは、モードフィールド径(MFD)が大きくなるとマルチモード伝搬をしてしまうが、大モード面積フォトニック結晶ファイバー (Large Mode Area PCF : LMA-PCF) は大きなMFD(もしくはモードエリア)にも関わらず、シングルモード伝搬が可能になる。MFDが大きいため、ファイバー中での非線形特性や材料損傷の影響を受けずに、ハイパワー光を伝送させることができる。

HNL-PCF

従来の光ファイバーは、非線形係数が低いため広帯域光を生成させることが難しいが、高非線形PCF (Highly Non-Linear PCF :HNL-PCF) [8]は非線形係数が高いため、可視から近赤外域まで広がるスーパーコンティニューム(Supercontinuum : SC) 光を生成させることができる。

ESM-PCF

従来のシングルモードファイバーは、カットオフ波長より短い波長の光はマルチモード伝搬をするが、エンドレスシングルモードフォトニック結晶ファイバー (Endless Single Mode PCF : ESM-PCF) [9] は波長やコア径に関係なくシングルモード伝搬をさせることができる。

PM-PCF

従来の偏波保持(PM)ファイバーは、応力付与部から発生した応力によって大きな複屈折を生じさせることで偏波を保持しているが、偏波保持型フォトニック結晶ファイバー (PM-PCF) [10]は空気-ガラス間の大きな屈折率差と楕円形によって強い複屈折を発生させている。これによりビート長が短くなり、曲げにより発生する偏光の乱れが軽減され、また温度変化に対して強くなる。

上記の他にも、RODタイプのPCF(ROD fiber)、Yb添加ダブルクラッドPCFなど様々な種類(上記を組み合わせた)PCFが存在するが、これらは別途解説する。

 

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Reference and Links