光ファイバーの分散パラメータを示すために、モードの伝搬定数βを中心周波数ω0のまわりでテイラー展開すると次式で表される。

…(1)

ここで、

である。パラメータβ1、β2は屈折率nとその導関数

に関連づけられる。ここで、ngは群屈折率、vgは群速度である。β1=1/vgは単位長さあたりの伝搬遅延時間で群遅延時間と呼ばれる。また、β2はパルスの広がりを示す群速度分散(GVD)である。図1(a)にバルク型のシリカガラスの屈折率n、群屈折率ng、図1(b)に群速度分散β2の波長依存性を示す。図中のλDは分散がゼロとなるゼロ分散波長であり、シリカガラスの場合1.27μm付近にある。シリカガラスの屈折率から導かれるこの分散は材料分散と呼ばれる。実際の光ファイバーでは、コアに少量のGeO2やP2O5などのドーパントが入っており、濃度によって分散特性が変わる[1]。屈折率nが大きな物質は群速度分散β2の絶対値も大きい傾向にある。

図1:シリカガラスの分散特性。

一般に光ファイバーの分散には、群速度分散β2[ps2/km]の代わりに分散パラメータD[ps/nm/km]が用いられる。分散パラメータDとβ2の間には次式の関係がある。

光ファイバーの全分散は材料分散だけでなく、導波路分散(構造分散)を加えなければならない。導波路分散はコアの半径やコアとクラッドの屈折率差∆などのパラメータに依存する。参考文献[2]、[3]より材料分散、導波路分散を計算し、全分散を求めると図2のようになる。典型的な光ファイバーにおけるゼロ分散波長λDは1.31μmであり、導波路分散は材料分散のゼロ分散波長を長波長側へシフトさせている。

図2:シリカ系光ファイバーの全分散特性

波長λがλ<λDをみたすときはD<0(β2>0)であり、ファイバーは正常分散を示す。正常分散の領域では光パルスの高周波(短波長)成分は低周波(長波長)成分よりも遅く伝わる。一方、λ>λDを満たす領域は異常分散領域と呼ばれ、正常分散領域と逆のことが起こる。
通常、分散と呼ばれるのはβをωで2階微分したβ2であり、高次分散と呼ばれるのはβ2をさらにωで微分したβ3以降のものである。高次分散はλ=λD近傍のパルス、または100fs以下のパルス幅を持つような超短パルス光など比較的広いスペクトルを持つパルスの伝搬を考えるときに考慮する必要が生じる。スペクトル帯域の広いパルスを扱うときには式(1)において2次の項まででは不十分になるため、3次あるいは必要に応じて高次の分散を考慮しなければならない。
一般的に高次の分散は波形歪みをもたらす。2次の分散により広げられたパルスは、後ほどその分散を打ち消すような分散媒質を通すことで比較的容易にパルス幅を復元することができるが、高次分散を補償するためにはより緻密な補償が必要となる。

Reference and Links