エキシマレーザーや色素レーザーのようにレーザー上準位寿命が短く飽和フルーエンスの小さなレーザーでは、ピーク出力エネルギーは低く、自己収束などの非線形光学効果は起きにくい。しかし、固体レーザーのように飽和フルーエンスの大きなレーザーでは、パルスエネルギーを増加していくと光学媒質の破壊(光学的破壊閾値強度:約10 GW/cm2) によりパルスのピーク出力が制限される。そこで開発されたのがチャープを制御しながら増幅させるチャープパルス増幅(CPA:Chirped Pulse Amplification)である。CPAはレーザーピーク出力を飛躍的に向上させた。ペタワット(PW:1015 W) 級の超高強度ピーク出力レーザーシステムは、CPAに基づいた構成となっている。CPAはパラメトリック増幅器にも適用でき,これを光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCA:Optical Parametric Chirped-pulse Amplification:OPCPA)と呼ぶ。

CPAシステムの構成

CPAシステムの構成を図1に示し、順に説明する。

CPA システムの構成

図1. CPA システムの構成

(1)CPAシステムには超短パルス光を安定に発生できるモード同期レーザー発振器が必要である。

(2)超短パルスレーザー発振器からの出力パルスにはパルス拡張器(パルスストレッチャー)によって直線的にチャープが与えられ、時間的に拡張(パルスストレッチ)される。これにより、ピーク強度は抑えられる。チャープを生じさせるものとしては、伝搬媒質により生じる媒質分散、バルク型の回折格子対などによる幾何学的な光路差により生じる角度分散や、光ファイバーによる自己位相変調などの非線形過程により生じる分散など様々である。分散量はGVDとして定義される。

(3)パルスのピーク強度が増幅媒質の光学的破壊閾値強度を越えない程度にパルスエネルギーを増幅させる。

(4)パルス圧縮器(パルスコンプレッサー)によりパルスストレッチャーとは逆の符号のGVDを与えパルス圧縮を行う。パルスコンプレッサーには主に回折格子対が用いられ、理論的にはストレッチする前の元のパルス幅まで圧縮される。

パルスストレッチャーには通常、バルク型の回折格子や光ファイバーが用いられ、発振器で発生した超短パルス幅は103~105倍に拡張される。しかし、100 fsから1 nsまで約104倍のパルスストレッチを考えた場合、回折格子対では広い空間が必要で、かつ構成が複雑となる。ファイバーによるパルスストレッチの場合は巻きつけが可能であるが、その場合に長さは1 km程必要であり損失も大きくなる。このため、近年ではパルスストレッチャーとして、チャープファイバーブラッググレーティング(CFBG:Chirped Fiber Bragg Grating)の研究開発が行われるようになってきた。CFBGはパルス中の低周波成分と高周波成分の反射位置が異なるような、構造的にチャープの付いたFBGである。チャープFBGを用いた場合、長さは10 cm程度で100 fsから500 psまでストレッチすることが可能であり、コンパクトで低損失かつ低非線形である。

最近では、ストレッチャーやコンプレッサーにチャープ体積ブラッググレーティング(CVBG:Charped Volume Bragg Grating)を用いたCPAが報告されている。CVBGはガラス内部でグレーティングが結晶化されているので、小型、高光耐性、優れた環境特性、温度安定性を持っている。