曲線経路を運動する自由荷電粒子は加速度を有するために、電磁界を放射する。1970年代に開発されたシンクロトロン放射光源はこの原理に基づく。荷電粒子群(通常は電子または陽電子)を、高精度に制御された速度で円形軌道に沿って周回させる。多くの高調波を含む放出光の基本周波数は周回周波数となり、自由に連続的に変えることができる。荷電粒子群は塊でなければならない。一様なループ電流では放射は発生しない。

低速で円形軌道を周回運動する荷電粒子は、前項で述べたように加速度に垂直な方向にドーナッツ状に電磁界エネルギーを放射する。ただし、加速度方向は(運動方向ではなく)荷電粒子から周回中心に向かう方向である。周回速度が大きくなるにしたがって、前方方向への放射が優勢になってくる。速度が光速に近づくと、円形軌道接線方向の細いコーン状ビームとなる(図)。さらに、軌道面方向に強く偏光する。

装置に設けられた窓からは、周回毎にパルス状放射が放出される。赤外からX線の範囲で周波数調整可能な強力光源が実現できる。磁石によって周回電子に揺動を与えると、極めて強力なバースト状X線が発生する。その強さは、3 mm厚鉛板に指先ほどの穴をあけるほどである。

 

3.30

図 周回電荷による放射パターン

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