外部共振型レーザー( External Cavity Laser : ECL )は通常の空間出力タイプのゲインチップ(ARコーティング半導体レーザー)の外部に回折格子(もしくは回折格子とミラー)が設置されているレーザーである。なお、外部共振型レーザーにおけるゲインチップの射出側(=回折格子からの入射側)の劈開面にはARコーティングが施されいる。
ゲインチップから射出されたレーザーはコリメートされた後、回折格子に入射する。回折格子ではゲインチップから射出されてきた多くのモードが、それぞれのモードに応じた回折角に回折される。ことのとき、回折格子によってある単一のモードだけが選択されて半導体レーザーに戻る(フィードバックされる)。この戻ったモードが半導体レーザー内で共振するため、出力はシングルモードになる。
リットマン型とリトロー型
外部共振型レーザーにはリットマン型(Littman)とリトロー型(Littrow)がある。
リットマン型では回折格子の1次回折光をミラーで反射させることで半導体レーザー内にフィードバックする。レーザーは回折格子で2度回折するため、出力が制限される。
一方、リトロー型では回折格子の1次回折光を直接半導体レーザーにフィードバックし、0次回折光をレーザーとして取り出す。回折は1度だけなので出力はリットマン型より大きい。また、リトロー型の場合は回折格子側にARコーティングが施されていない通常のファブリ・ペロー半導体レーザーも使用できるため、より広帯域・高出力・低価格にできる(チューナビリティを優先させる場合はARコーティングが良い)。
下図はThorlabsが製造・販売しているリットマン型とリトロー型波長可変レーザーキットの概念図である。Thorlabsでは770、1050、1220、1310、1450、1550、1900 nmの外部共振型波長可変レーザーを製造・販売している。

図:リットマン型波長可変レーザー

図:リトロー型波長可変レーザー
外部共振型レーザーの特徴
外部共振型半導体レーザーは光学系の設計により100 nmを超える広帯域なチューニングが可能である。リトロー型では回折格子を回転させることで波長をチューニングし、リットマン型ではミラーを回転させることで波長をチューニングする。
外部共振型レーザーでは通常の半導体レーザーと同じ波長帯で発振する。つまり、DFBレーザーやDBRレーザーでは発振できない 630 nm以下の波長でも発振することができる。
外部共振器型レーザーの線幅を決める主な要因は電気ノイズ、音響ノイズ、振動である。構成から考えるとコンパクトで堅牢なリトロー型の方有利であるが、リットマン型は2度回折格子を通過するのでより狭線幅となりやすい。
DFBレーザーのメーカー
DBRレーザーのメーカー
参考文献
- 【外部共振レーザーの設計】田中優紀, “工学工房-外部共振レーザーの自作設計,” 41巻 (2012)
- 【リットマン型・リトロー型波長可変レーザーの比較】Thorlabs、波長可変レーザーキット:リトロウ型とリットマン型、アライメント済みキット
- Laser Diode Selection