光周波数コムの周波数軸上でのふるまいは、ドイツのTelleらが考案したelastic-tapeモデルとfixed points理論を用いて描写される[1][2][3][4]。光周波数コムは摂動を受け、揺らぎを持っている。図1(a)に示すように、これには揺らぎの中心、すなわちfixed pointとなるコム・モードが存在する。任意のコムモード周波数の式をキャリア周波数中心に書き直す。

 … (1)

ここでνcarはレーザーのキャリア周波数であり、Erモード同期ファイバーレーザーの場合νcar=192 THzである。frepの次数nはキャリア周波数を中心に変化している。(1)式はモード同期レーザーの出力パルスのキャリア周波数が光周波数であることを考慮している。コムのふるまいを描写するには、frepとfCEOの揺らぎ方をそれぞれ考える必要がある。

fCEOの揺らぎ

fCEOの揺らぎδfCEOのfixed point νfixCEOは0 Hz付近にある。したがって、図1(b)に示すように、νfixCEOを起点にコム全体に同じ揺らぎ量を与える。

frepの揺らぎ

frepの揺らぎδfrepのfixed point νfixrepはキャリア周波数付近にある。これはモード同期レーザーの繰り返し周波数が包絡線の進む速度、すなわち群速度で決まっており、包絡線を形成している搬送波はキャリア周波数を有することに基づく。したがって、図1(c)に示すように、νfixrepから離れるにつれ、n∙δfrepでコムモードの揺らぎ量は大きくなっていく。
frepとfCEOの揺らぎを足し合わすことで、コム全体の揺らぎδνnのfixed pointは決定される。

 … (2)

ここでδfC=δ(fCEOcar)とした。δνn=0となるコムモードがfixed pointであり、(2)より次数は

 … (3)

で表わされる。さらに、コム全体の揺らぎとしては(2)と(3)を用いることで、

 … (4)

となり、fixed pointを中心に揺らぎが大きくなっていることがわかる(図1(a))。

図1: 光周波数コムのふるまい、(a)コム全体の揺らぎ、(b)CEO周波数の揺らぎによるコムのふるまい、(c)繰り返し周波数の揺らぎによるコムのふるまい

「中嶋善晶, 光周波数標準のためのファイバー型光周波数コム低雑音化に関する研究, 2010.」より。

References and Links

  • [1] H. R. Telle, B. Lipphardt, and J. Stenger, “Kerr-lens, mode-locked lasers as transfer oscillators for optical frequency measurements,” Appl. Phys. B 74, 1-6 (2002).
  • [2] N. Haverkamp, H, Hundertmark, C. Fallnich, and H. R. Telle, “Frequency stabilization of mode-locked Erbium fiber lasers using pump power control,” Appl. Phys. B 78, 321-324 (2004).
  • [3] E. Benkler, H. R. Telle, A. Zach, and F. Tauser, “Circumvention of noise contributions in fiber laser based frequency combs,” Opt. Express 13, 5662-5668 (2005).
  • [4] D. R. Walker, Th. Udem, Gh. Gohle, B. Stein, T. W. Hänsch, “Frequency dependence of the fixed point in a fluctuating frequency comb,” Appl. Phys. B 89, 535-538 (2007).