遷移金属イオン(transition metal ion)とは

遷移金属イオンでは最外殻の3d軌道電子が光活性である.そのため光による遷移は,結晶の格子振動と強く結合する遷移振動の緩和時間が電子準位の滞在寿命よりはるかに短いため,光遷移に際して励起緩和過程を経る.このため,たとえばTi3+では電子準位は2準位系であるが,レーザー発振動作は4単位系で説明される.イオンの価数が変化すると3d軌道電子数が変わり,電子状態(エネルギー単位)も変化する.遷移金属イオンは,酸化還元反応によりその価数を容易に変化させる.結晶製造過程での価数制御は,化学平衡(イオンの価数の相平衡)による限界があるため,イオン種の混在状態を回避できない場合がある.この点で,遷移金属イオンを用いたレーザー結晶ではホスト結晶の選択が重要である.→チタンサファイアレーザー