可飽和吸収体 (SA : Saturable Absorber) は、強度が低い入射光に対しては吸収体として働き、強度が高い入射光に対しては吸収体としての能力が飽和し透明体として働く物質である。CW光が可飽和吸収体中を伝搬するとき光損失が大きくなるが、光強度の強いパルスレーザーの状態では、光損失は小さくなりパルス発振状態が促進される。図1に可飽和吸収体の動作の概念図を示す。 可飽和吸収体の動作

図1:可飽和吸収体の動作

光強度の強いパルスの中心部分は可飽和吸収体を飽和して通過するが、光強度の弱いパルスの両翼は強い吸収を受けるため短パルス化が起こる。共振器内に可飽和吸収体を配置した場合を考えると、可飽和吸収体の回復時間が、共振器内を光が往復する時間に比べ長い場合は受動Qスイッチ、短い場合は受動モード同期レーザーができる。 可飽和吸収体は吸収断面積 (吸収量) が大きく、かつ上準位の緩和時間が短いことが必要とされる。可飽和吸収体を選択する際には、可飽和吸収を起こすのに必要な光強度、吸収波長、吸収特性回復時間などを考慮しなければならない。可視から近赤外領域で望ましい物質の一つとして半導体が挙げられる。

可飽和吸収体の種類

可飽和吸収体にはレーザー共振器のミラーと一体化して使用される可飽和吸収ミラー(SAM : Saturable Absorber Mirror) や、ガラスの非線形性を利用する非線形偏波回転 (NPR : Nonlinear Polarization Rotation) がある。また近年では単層カーボンナノチューブ (SWNT : Single-Wall Carbon Nanotube) が受動モード同期フェムト秒ファイバーレーザーにおける可飽和吸収体として期待されている。   可飽和吸収機構

無料ユーザー登録

続きを読むにはユーザー登録が必要です。
登録することで3000以上ある記事全てを無料でご覧頂けます。
ログインパスワードをメールにてお送りします。 間違ったメールアドレスで登録された場合は、改めてご登録していただくかお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目