レーザー光多重散乱(multiple laser light scattering)とは

レーザー光は,屈折率が空間的に不規則に分布する媒質,あるいは不規則な凹凸を持つ表面によって散乱される.このうち,一度散乱を受けた光がさらに散乱されてそれが繰り返される現象を光の多重散乱と呼ぶ.この光多重散乱は,コロイド溶液中の微粒子による散乱のように散乱が離散的に起こるもののみならず,大気中の光伝搬のように散乱が徐々に起こっていく場合にも生じる.近年,光の多重散乱現象が新たに注目を浴びているが,これは,高い強度を持ち単色で直線偏光したレーザー光の出現によって,多重散乱現象の実験が容易になったことによる.一方,理論的には光のエネルギーの流れを解析対象とした従来の多重散乱型論に加え,レーザー光の干渉性を考慮した波動解析がおこなわれるようになった.この結果,コヒーレント後方散乱,メモリ効果,長距離相関など,レーザー光多重散乱特有の現象が次つぎに発見され,現在盛んに研究がおこなわれている.